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ボーイングのBWBコンセプトがステルス性を重視し進化。将来の対中戦を睨んだ輸送機、空中給油機になるのか。

 

Boeing


ボーイングの新型ステルス機コンセプトは、貨物輸送機やタンカーにも生存性向上を求める声の高まりの反映だ

ーイングは、ステルス性を備えた戦術的貨物機の新コンセプトを発表した。同社はこれまで社内プロジェクトとしてきたが、フランク・ケンドール空軍長官が、近い将来の中国とのハイエンド紛争では、生存性の高い輸送機と空中給油タンカーが重要だと述べた約2週間後に、今回の発表が出た。

ボーイングはワシントンD.C.郊外で開幕した2023年AIAAサイテック・フォーラムで新型BWBコンセプトの模型を展示した。

ボーイング社が今週、年次AIAAサイテック・フォーラム展示会で発表した新しいステルスBWB貨物機コンセプトの模型。 Joseph Trevithick

The War Zoneがボーイングから入手した声明によると、同社はBWBの主な特徴を共有する良い時期だとし、「当社は、軍用輸送機設計の最先端を進むため、BWBコンセプトの研究活動を政府と続けています」とある。

ボーイングには、BWB設計に関連する長い歴史がある。2000年代後半から2010年代前半にかけNASAとの契約で、乗員なしのサブスケールX-48の開発と実際の飛行テストをした。

BWBは、全翼機のような機体形状で、B-2やB-21ステルス爆撃機の高ステルス性を連想させるが、BWBの利点は、空力的効率の向上と、燃費と全体的な航続距離の増大だ。また、内部容積が増えることもプラスに働く。

しかし、The War ZoneがAIAAサイテックイベント会場で話したボーイング担当者は、新しく発表された輸送機コンセプトは、同社のこれまでのBWB開発からの「実質的な逸脱」だと述べている。今回のコンセプトは、胴体の縁を一部削り、機首をくちばし形状にするなどのステルスデザインや、完全内蔵型ジェットエンジンが特徴で、尾翼形状も特徴的だ。

ボーイングの新型ステルス「BWB」コンセプトの小型モデルを正面から見た。 Boeing

X-48を含む、ボーイングのこれまでのBWBデザインは、胴体と機首がより広く丸みを帯び、エンジンは後部胴体中央上部のポッドに搭載されているものが中心だった。しかし、同社は10年以上前にも、空軍主導の「スピード・アジャイル」プログラムの一環で、今回明らかになったコンセプトに近いものを製作していたが、完全なBLBデザインではなかった。

初期のボーイングBWB、非ステルス型の空中給油タンカーのイメージ図。Boeing

ボーイングがスピードアジャイルプログラムで開発し風洞実験モデル。 NASA

新型BWB機は、エンジンインレットに部分的にサーペンタインダクトを組み込んでいる。これはタービンブレードを隠すのに役立つ。ファン・フェイスバッフルと組み合わせれば、レーダー断面積を大幅に減少でき、真正面からのステルス効果も大きい。

排気口と尾翼の構成は、下方からの排気口への直接視線を遮り、機体の赤外線シグネチャを減らすようだ。これで、側面のレーダー信号も減らすことができ、ステルス黎明期までさかのぼる低視認性航空機の設計特性に一致する。

デザインコンセプト、エンジンの排気配置に注意。Boeing

モデルではコックピット窓の配置も特徴的だ。イベントでボーイング担当者は、少なくとも現時点では、窓の配置は他の設計上の考慮事項を反映していない、と述べていた。とはいえ、上部窓は空中給油で有益ぶばry可能性がある。

窓の構成をクローズアップしたもの。 Boeing

ボーイングが、BWBプランフォームのメリットを享受することを望まないはずがない。設計コンセプトは、従来型貨物機と同等の積載量で、約30%の燃費向上が期待できるとWar Zoneは伝えた。C-130ハーキュリーズとほぼ同等の積載量の設計だ。空軍によれば、標準的なC-130J型機の最大積載量は約42,000ポンド。

とはいえ、「カーゴ・ボックス」だけでなく、顧客の要求に応じ将来的に拡大・縮小したり、形状を変更したりできる設計だと同社は述べている。今回の設計や派生型は、将来的には空中給油など、他のミッションに適応できる可能性がある。また、将来的に無人運行、あるいは任意で有人操縦できるバリエーションが生まれる可能性を排除していない。

Joseph Trevithick

今回の設計は、初期のコンセプト段階だ。ボーイングは、デジタルエンジニアリングと、伝統的手法を駆使し開発に取り組んでいる。新しいBWBデザインは、大きな腹部インレットを通る空気の流れなど、各種要素が高度なモデリングでさらに分析される。

冒頭で述べたが、ボーイングはこの作業に社内の研究開発費をあててきたが、この設計、あるいはその派生型を各顧客に売り込もうとしているのは明らかだ。これには米軍、特に空軍が含まれ、高ステルスのBWB輸送機やタンカーを想定する。

The War Zoneで は、10 年以上前から空軍にステルスタンカーが必要な理由を詳細に説明してきたが、生存性の高いタンカーや輸送機への要求と、その根底にある問題は、大きくなるばかりだ。

「脅威の変化により機動性が必要となります」。今月初め、ワシントンD.C.のシンクタンク、外交問題評議会(CFR)主催のオンライン講演で、フランク・ケンドール空軍長官は、「脅威が長距離に手を伸ばし我々の航空機と交戦するようになってきたことが、その要因だ」と述べた。「従来は、民間航空機の派生型をタンカーや輸送機にすればよかった。しかし、こうした機材は、生存率や回復力に対する高い要件を満たす設計でない」。

「脅威が(設計の)自由を奪っている」とケンドールは続けた。「結果を出すには時期尚早だが、次世代の能力を検討中です。また、ブレンド・ウィング・ボディはきわめて有力な候補の1つだ」。

「民間航空の世界にまだ存在しません。いずれそうなるかもしれませんが、今はまだありません。我々は、初期の設計作業を行っており、DODプログラムとしてプロトタイプに移行する可能性があります」。

ケンドール長官が何を指していたのか、正確には不明だ。しかし、昨年、国防総省の防衛革新ユニット(DIU)は、「ボーイング767やエアバスA330系列の民間・軍用機より空気力学的効率が最低30%高い」先進型BWB航空機の「デジタル設計コンセプト」を民間企業に求め、情報提供を要請した。発表では、2026年までに飛行実証機を飛ばす可能性があるとある。DIUは、新しい商業技術を米軍が活用できるようにすることが主な任務だ。

空軍がステルスBWBやその他の関連設計を次世代空輸機や空中給油タンカーとして検討したのは今回が初めてではなく、ケンドール長官がCFRとのチャットで挙げたのと同じ一般的な理由がある。「次世代戦術機動機」のコンセプト開発に重点を置いたスピード・アジャイル・プログラムが典型的な例だ。

空軍はKC-Zと呼ぶ次世代ステルスタンカーの要件もここ数年検討してきた。昨年、空軍は、2024年に想定した選択肢の分析を開始したいと述べていた。ボーイングやロッキード・マーチンは、KC-Zについて空軍と協議に参加している、BWBに似たタンカー・コンセプトが多数発表されてきた。

ハイブリッド主翼胴体一体型とも呼ぶBWBデザインを採用したロッキード・マーチンの先進タンカー・コンセプトの模型。Joseph Trevithick Joseph Trevithick

米空軍は、「C-17グローブマスターIII」(2015年で生産終了)の後継機に求める要件を策定中だ。2022年10月の講演で、ケンドール長官は、「今年中に次世代エアリフターの開発プログラムの開始を検討中」と述べていた。

「将来型モビリティコンセプトは、伝統的な機体と大きく異なるかもしれません」。Aviation Weekによると、ケンドール長官このように述べていた。「長距離空対空ミサイルの脅威にも耐える能力が必要だ。モビリティ資産を争奪戦環境に投入できるようにしなければならない」。

太平洋地域の広大な各地で中国軍と大規模戦闘を行う際に米軍の懸念は、長航続距離の支援機の必要性だ。そもそも太平洋地域では米軍基地の選択肢が限られ、敵のスタンドオフ攻撃の前に非常に脆弱となる可能性がある。そのため、あらゆるタイプの空中給油タンカーへ極めて高い需要が生まれる。だが米軍が短距離の戦闘機を中心とした戦術戦闘機部隊に大規模な投資を行っていることもあり、給油機が格好の標的となる。

また、レーダーなどシグネチャを低減した先進輸送機は、敵地奥深くまで侵入できるステルス性を備えなくても価値があることは言うまでもない。ステルス機能を制限した設計でも、タンカーが活動する必要がある距離では、ステルス性と生存性の高い戦闘機に十分な生存性を提供できる。バランスの取れたアプローチは、航空機の調達と維持のあらゆる側面に影響を与え、深部侵入任務が可能なハイエンドのステルス設計に比べ、開発および飛行運用がより手頃なものになる。

ロッキード・マーティン社による、同様のステルスタンカー・コンセプトのレンダリング画像。Lockheed Martin

ステルスタンカーは、低高度飛行と組み合わせることで、遠距離の敵の防衛体制から身を隠すのに役立つ水平マスキングを利用し、既存型機では立入できない高脅威地域付近で活動できるようになる。こうした戦術はタンカーや輸送機ですでに使用されているが、ステルス設計で脆弱性が解消し、敵防空網に接近し作戦実行できる。高度な紛争において、前方のハブアンドスポーク・ロジスティクスと燃料補給、その他任務を支援する上で重要となる可能性がある。

ステルス戦術輸送機に関しては、特に米国の特殊作戦コミュニティが数十年にわたり斬新なコンセプトを各種模索してきた。

米空軍が2000年代後半から2010年代前半にかけて、プロジェクトIX(プロジェクト9)と呼ばれる取り組みの一環で検討した、想定される先進ステルス輸送機コンセプトを含む将来の作戦を描いた、いわゆる「作戦図」(OV)。 (Project 9). USAF via FOIA



BWB設計でステルス機能を備えていようとなかろうと、次世代輸送機や空中給油タンカーがいつ米空軍あるいは他の誰かに就役するかは未知数だ。「BWBタイプは、今後10年から15年内に、軍用亜音速輸送機として開発される可能性があります」と、ボーイングは声明で述べている。

 ステルス性を備えた高度な軍用貨物機やタンカーに新たなニーズが生まれつつあり、需要がますます高まることは明らかだ。米空軍はじめ各方面の要求が具体化する中で、ボーイングの新しいBWBコンセプトがどう進化していくのか、興味深いところだ。■


Stealthy Tanker-Transport Aircraft Concept Unveiled By Boeing

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JAN 26, 2023 1:13 PM

THE WAR ZONE


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