戦車供与の話題はここに来て急展開しており、いよいよエイブラムズ戦車もウクライナヘ向かうことになりそうです。ロジスティクスなどの問題はありますが、大きな政治的な意味があるのでしょう。
US Army
米エイブラムス戦車がウクライナへ向かうとドイツなどのレオパード2も含む、大きな取引の一部となる
米国政府がM1エイブラムス戦車数十台をウクライナ軍に送付する案が実現に近づいているとの報告が増えてきた。ポーランド当局がレオパルド2戦車をウクライナに再輸出する承認をドイツに正式要請したことを受けたものだ。ドイツの政府関係者は、アメリカがエイブラムスの譲渡を許可した場合のみ、このような取引にサインすると述べたという。
Politico記事によると、バイデン政権は、M1戦車30〜50両を含むウクライナへの新しい軍事支援パッケージを検討している。これは、ウォール・ストリート・ジャーナルなどが本日報じた、アメリカ政府関係者がM1エイブラムス譲渡の決定に向けて動き出しており、正式な発表が今週にも行われるかもしれない、という報道に続くものだ。
ウクライナ向けに検討中のM1エイブラムスの型式不明である。これまでの米国のウクライナ向け軍事援助からすると、旧型のM1A1またはM1A2の可能性が高い。いずれも120mm主砲を搭載しているが、装甲、センサー、通信システムなどの具体的な構成が異なる。米陸軍は旧世代のM1戦車数千台を保管している。米海兵隊は再編の一環で、エイブラムス戦車をすべて売却している。オーストラリア、エジプト、イラク、クウェート、モロッコ、サウジアラビアもM1型戦車を運用している。
アメリカ政府関係者は一貫して、エイブラムスは他の西側近代戦車と比べて複雑で燃料消費が激しく、ウクライナ軍に有用な能力を短期間で提供できないと懸念を表明してきた。後者は、M1のガスタービン推進システムを指している。また、エイブラムスには非常にデリケートな側面があり、同盟国協力国向けの輸出仕様には、省かれている機能がある。
ウォールストリート・ジャーナル記事によると、「(エイブラムスの)発表は、ベルリンが自国のレオパルド2戦車を少数送ることに同意し、ポーランドなどによるドイツ製戦車の納入を多く承認するというドイツとのより広い外交の一部となるであろう」という。
正確な状況はまだ不明だ。The War Zoneは、国防総省と国家安全保障会議の双方に問い合わせた。
しかし、ドイツのデア・シュピーゲル誌は、ベルリン当局がウクライナ軍にレオパード2戦車部隊を送ることを決定したと別途報じている。記事によると、これには少なくとも一個中隊分のレオパルド2A6型を含む可能性があるという。欧米の戦車部隊は中隊規模では戦車14両前後が一般的だ。
これが事実なら、これまでのドイツ政策が大きく覆されることになる。オラフ・ショルツ首相をはじめとするドイツ政府高官は、自国の戦車を譲渡すればモスクワとの緊張を高め、ウクライナ以外での報復を誘発するとの懸念から、数カ月にわたり要請に抵抗してきた。
米国、英国、フランス、ポーランドは、ドイツ政府に立場を変えるよう求めている。英政府はすでに今月初め、ウクライナにチャレンジャー2戦車など装甲車14台を納入する意向を表明した。フランス当局も、ルクレール戦車の一部を送る可能性があるという。
ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、先週ドイツのラムシュタイン空軍基地で開かれた米国主導のウクライナ防衛コンタクトグループの最新会合で、自国内のレオパルド2の公式目録を作成するよう指示したと述べたと伝えられている。特にドイツの防衛関連企業ラインメタルは、ウクライナ軍に引き渡せる戦車を何台保有しているか公言し続けていることを考えると、この情報がまだないのは不思議である。
シュピーゲル誌などによると、ドイツは現在、レオパルド2戦車の第三者譲渡に署名する予定だとも伝えられている。ポーランドは本日、そのような承認を正式要請したと発表した。ポーランドを含む少なくとも12カ国は、ドイツが許可すれば、レオパルド2合計約100両をウクライナ軍に送る用意があり、その意思もあると報じられている。
120mm砲搭載のレオパルド2に関しては、ウクライナに譲渡可能なプールはA4型と派生型が中心だ。
レオパルド2A4は、旧式の装甲パッケージが特徴だ。ドイツがウクライナ譲渡を検討中とされるA6は、A4と比較して砲塔と車体の装甲が追加されている。また、主砲の長砲身化、サスペンションやドライブトレインもアップグレードされている。
ウクライナ軍がエイブラムスやレオパルド2を受領するのはいつになるのか、疑問は残る。保管中の戦車は、移送前にある程度の改修が必要になる可能性が高い。
ラインメタルは以前、レオパルド2を在庫からウクライナに届けるには少なくとも6週間かかると述べていた。最近のスペインメディア報道では、ウクライナは1カ月以内にレオパルド2を入手できるとしている。昨年、マドリード政府は、派遣可能なレオパルド2が「全く嘆かわしい状態」だと公式発表していたのだが。
また、ウクライナ軍に戦車の操作と整備をさせる問題もある。ウクライナの国防大臣オレクシー・レズニコフは先週、正式合意がないにもかかわらず、ウクライナ軍はポーランドでレオパード2の訓練を開始する予定だと述べていた。
数週間とは言わないまでも、数カ月以内にロシアの大規模な攻勢に直面する恐れが高まっていることを考えると、ウクライナ軍にとって非常に重要な進展である。懸念を受けて、ウクライナの国際的パートナーから、ここ数週間、新たに発表されたウクライナ援助が急増している。最新の支援には、米国からウクライナに送られる予定のブラッドレーやストライカーなど、大型装甲車両も含まれる。
ウクライナ軍が新鋭戦車や西側設計の重装甲車両を長期的にわたり維持できるかという懸念も残る。
国防総省の最高報道官パトリック・ライダー米空軍准将は、今日の記者会見で「M1は複雑な兵器システムで、これまで話してきたように、維持が難しい」と述べた。「昨日もそうだった。今日もそうだし、将来もそうだろう」。
また、今後の戦闘でロシアがこれらの車両を破壊したり、拿捕する問題もある。特に鹵獲の可能性は、ウクライナが受け取る車両の仕様によっては、安全保障上の懸念を生じさせる可能性がある。
ライダー国防総省報道官は本日の記者会見で、The War Zoneのハワード・アルトマン記者の質問に答える形で、「我々がウクライナに提供した能力、そして将来的に提供する能力は、光学に関するものではない」と述べた。「戦闘能力に関するもので、戦場で成功するための最良の機会を与えるものだ」と述べた。
このように、ウクライナ軍が様々な理由でその能力をフルに発揮できないとしても、より近代的な西側戦車は、ソ連時代の設計や現在使用中の派生型に比べ、全面的に大きく改善されていると言える。自動的にゲームが変わるわけではないが、エイブラムス、レオパルド2、チャレンジャーなどを少数でも保有すれば、今後の攻防戦でウクライナ軍に恩恵が生まれる可能性がある。
各戦車を装備するウクライナ軍部隊と、戦車と行動を共にする部隊には、より高度な複合武器と機動戦の訓練が不可欠となるる。西側戦車は複雑な戦術によって戦場で生き残る可能性とウクライナ軍が戦車を最大限に活用する可能性を高めるだろう。
米国やドイツなどが西側戦車の派遣を全面的に認めることは、ロシア軍との戦いにおいてウクライナ軍を支援し続けるという、新しく、非常に強い意思表示のあらわれであると言える。
Updated 4:20 P.M. EST:
Politicoは記事を更新し、米国政府はウクライナに約30台のM1エイブラムス戦車を送ることを検討していると情報源からの追加情報に基づき伝えている。■
Up To 50 M1 Abrams Tanks Could Be Headed To Ukraine: Reports (Updated)
BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JAN 24, 2023 3:57 PM
https://www.thedrive.com/the-war-zone/up-to-50-m1-abrams-tanks-could-be-headed-to-ukraine-reports
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