スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナに米陸軍のストライカー戦闘車両を投入したらどうなる?イラン、アフガニスタンで鍛えられた今日のストライカーは威力を増しているが、本領を発揮できるだろうか

 


This Is What Stryker Armored Vehicles Could Bring To The Fight In Ukraine

(Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)

 

ストライカーは、限界があるものの、他部隊と組み合わせれば、ウクライナで切実に必要とされる多くの能力を提供できる

 

 

2011年夏、ブラッド・デュプレシス陸軍大尉(当時)は、ストライカー大隊および旅団幹部として、イラクで部隊を率いて戦闘に参加していた。大尉は、ストライカーが爆発性貫通弾、即席爆発装置、RKGロケット推進対戦車手榴弾などの攻撃を受けながらも、生き残るのを目の当たりにした。

 10年以上経った今、アメリカはストライカーをウクライナに送る検討をしていると、国防総省高官が月曜日にThe War Zoneに話し、Politicoが最初に報じた話を確認した。ストライカーは、イラクやアフガニスタンで発生した致命的な事件から学んだ教訓をもとに、大幅改良され、生存性を高めた車両になった。

 2021年に大佐で退役し、カリフォーニア州アーウィン基地の国家訓練センターでストライカーの実戦訓練を監督していたデュプレシスは、ストライカーを手に入れることはウクライナの「勝利」になるだろう、と語った。

 「ウクライナと一対一で比較するのはためらわれる」とデュプレシスは水曜日にThe War Zoneに語った。「しかし、ストライカーはウクライナで見られる高強度紛争で、軽戦力と重戦力間のギャップを埋めるため作られた。ストライカーは、イラクで我が部隊が直面したように、ウクライナ軍が直面する脅威から機動性と保護を提供できるだろう」。

 

ストライカーはウクライナをどのように助けられるか

米国がウクライナに提供するストライカーの型式はまだ不明だが、米国が提供ずみのの高機動多目的車(HMMWV)またはハンビー1300両、M113装甲兵員輸送車300両、対人対車両(MRAP)527両から大きなアップグレードになると、元デュプレシスは述べた。

 「戦車より静かだし、特に都市部では戦車やブラッドレーが入れない場所でもストライカーなら入れる」と、The War Zoneに語った。今月初め、ジョー・バイデン大統領は、M2A2-ODSブラッドレー戦闘車50両をウクライナに移送することを承認した。

 ストライカーはまた、これまで米国が供給してきた3種類の車両のいずれよりも、優れた通信と状況認識システムを備え安全な機動性を提供すると、デュプレシスは言う。

 「すべてのデジタル・システムを使用できます。車内にいながら、光学系を使い50口径やMK19を発射できます。M113やMRAP、HUMVEEではできないことです。ブラッドレー戦闘車やエイブラムス戦車でなければできないことです」。

 

 

Troops dismount from a Stryker. (US Army)

ストライカーから降り立つ隊員たち。(米陸軍)

 

 デュプレシスは、ストライカーの限界も指摘する。

「戦車とは戦えません。戦車の火力はない。ブラッドレーの防御力もない。しかし、ストライカーがどのような役割を担っているのかを見なければならないのです」。

 ストライカーは、「歩兵部隊を視野に生産され、中心となっている」と言う。歩兵部隊を目標地点から1キロ、あるいは地形的に離れた場所に送り届ける設計されている」。

 また、「都市のような制限された環境で機動性を可能にします。歩兵の保護を可能にし、最後には歩兵分隊を車両に乗せたり、リーダーや装備や武器を搭載できます」。

 M1126 Infantry Carrier Vehicle(ICV)は、20種類近くあるバージョンの1つで、「ストライカーの基本形」とデュプレシスは言う。

 このほか、指揮官車(CV)、迫撃砲運搬車(MCV)、工兵隊車(ESV)、医療搬送車(MEV)などは、「陣形の歩兵を可能にする」。

 指揮統制、MCVの120mm迫撃砲による火力支援、機動性支援、そして医療搬送を提供するという。

 「この最後の役割で、MEVは、米国が提供するM113よりも保護された医療避難車両となります」。このような役割は、ウクライナが直面するロシアとの戦いにおいて、間違いなく大砲が戦場での最大の脅威となるため、非常に重要だ。ストライカーの速力、機動性、火砲からの保護は、ウクライナ軍にとって大きな資産となり得る。

 105mm砲を搭載した機動砲システム(MGS)型と、チューブ発射型光学追跡ワイヤー誘導ミサイル(TOW)を装備した対戦車誘導ミサイル(ATGM)型は、「どちらもロシアの戦車を撃破する能力がある」とデュプレッシは言う。

 しかし、ストライカーにはできないことがある、と言う。

 「ストライカーは迅速な部隊行動を可能にするが、大規模な作戦の一部で使用するのがベストです。ストライカー旅団を単独で都市環境に投入することはお勧めしませんが、......装甲車との複合戦力の一部として投入することは可能です」。ジャベリンのような対装甲システム。スナイパー 迫撃砲も戦車殺傷型も同様だという。

 「これは単体で使うより、連合部隊の一部で使うのがベストです。どちらのシステムもエイブラムス主力戦車の性能には及びません」。

 

105mm弾を発射するストライカー機動砲システム。 (Mark Miranda/U.S. Army)

 

 

ウクライナに送られる各システム同様に、ストライカーの整備保守にも懸念がある。

 デュプレシスによれば、ウクライナにはすでにジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)のスーパーバイソンという同様の車両があり、昨年の夏にはカナダから三十数台が提供されていたという。

 スーパーバイソンはストライカーと「ほとんど同じシステム」だ。「そのため、シャーシと部品が共通で、運用中の装備を提供することは、非常に理にかなっていると思います」。

 米国のストライカーが配備される際には、GDLSの技術専門家が数名同行し、整備を支援する。ウクライナでは、そのようなことはありえない。アメリカは、制服組であれ何であれ、地上には軍隊を置きたくないと繰り返し言っている。

 スーパーバイソンとストライカーの互換性、スーパーバイソンの技術者がウクライナ国内と国外のどちらで任務を遂行するのか、GDLSに照会中なので回答を得次第記事を追加する。

 ウクライナは「保守整備の熟練度を高めている」と、ローラ・クーパーLaura Cooper国防副次官補(ロシア・ウクライナ・ユーラシア担当)は先週の記者会見で、The War Zoneを含む記者団に語った。

 これには、「ウクライナ国内での作業と、同盟国協力国と共に構築した新しいシステムを利用し、遠隔保守を行う」ことが含まれると、クーパーは述べた。「この時点で、ウクライナは、このシステムで訓練を受ければ、成功する設定です」。

 デュプレシスは、「重要なのは、一般的なスペアパーツの備蓄を維持し、車両の状態や必要な部品を状況に応じて認識できるシステムを開発すること」と述べた。

 最大の課題は、車両そのものではなく、車が搭載するデジタルシステムの整備かもしれない、とデュプレシスは言う。また、武器庫の部品も頻繁に壊れる。

 「デジタル・コンポーネントとリモート・ウェポン・ステーションは、このシステムを操作したことがない人には、敷居が高い課題でしょう」と彼は言う。

 ストライカーは機動性を高める設計だ温が氷点下前後で変動し続けるウクライナのラスプーチッツァと呼ばれる泥濘地では、苦戦を強いられるかもしれない。

 「ストライカーは機動性を高めていますが、それは車輪付き車両である点では事実です。オフロードのぬかるみでは、それほどうまくはいきませんし、スタックする可能性もあります。凍った砂利道や地面、ひどい道などでは。まったく問題ないと思います。ただ、トラックがないので、例えばブラッドレーや戦車と違い泥濘地でうまくいかないでしょう」。

 過去には極寒がストライカーで問題だった。北極圏の環境には不向きなため、アラスカの米軍兵士は同車両をほとんど信用しておらず、戦場での操作よりも修理にはるかに多くの時間を費やした。ストライカーは極寒地ではしばしば凍結する。兵士たちはアラスカでのストライカーの性能に不満を持つようになった。

 しかしデュプレシスは、ウクライナで寒さが問題になるとは考えていない。最も激しい戦闘が行われているドネツクとルハンスクの1月の平均最低気温は、それぞれ華氏20度、18度である。これに対し、ストライカーが駐屯していたウェインライト基地のあるアラスカ州フェアバンクスの1月の平均最低気温は、華氏13度だ。

 

2022年3月22日、太平洋合同多国籍軍即応センター22-02で、ドネリー訓練場の雪道を移動する第21歩兵連隊第3大隊のストライカー車輌。(John Pennell/U.S. Army)

 

 デュプレシスは、ナショナル・トレーニング・センター(NTC)での経験からストライカーについて学んだ最大の教訓の1つは、同車両が何のために設計されたかを理解し、それに沿ってミッションを調整することだと語った。

 「これはいくら強調してもしきれません」と言う。ストライカーは、歩兵部隊の機動性、保護、通信、状況認識、50口径やMk-19による火力支援プラットフォームとして設計されています」。

 NTCで「非常にうまくいった」部隊は、「限界を認識し、敵との接触がない有利な位置に部隊を移動させ、彼らの条件で接触させるのに使用できた」部隊であった。「ストライカーを装甲部隊の前に大規模交戦に参加させなかったのです」。

 

2011年8月24日、カリフォルニア州フォート・アーウィンのナショナルトレーニングセンターでパトロールする、ワシントン州フォートルイスの第3-2ストライカー旅団戦闘チーム、第1-14騎兵医療班の米軍兵士たち。兵士たちは配備前の準備として、この訓練に参加している。 (U.S. Army photo by Spc. Hanson Mendiola)

 

ストライカーが実際にウクライナに送られるかはまだ発表されていないが、送られた場合、ウクライナ軍は国防総省がドイツに新設した機動戦訓練プログラムで訓練を受ける可能性が最も高い。国防総省の最高報道官パット・ライダー空軍准将が木曜日に記者団に語ったところによると、ブラッドレーの運用部隊は来週から同地で訓練を行う予定であるとのことだ。

 また、ブラッドレーが到着した場合、ウクライナ側がどのように配備するかは未知数だ。デュプレシスは、複数集団に分散させるのではなく、同車両を中心にした部隊を作ることを勧めている。

 ウクライナは各種武器で戦っており、「提供される車両や装備にかかわらず、ウクライナの指導者が繰り返し見せてきた軍事的有効性の重要な要素は、見事な戦場適応力と意思決定です」と言う。「とはいえ、ウクライナ軍は全部のストライカーを必要としているわけではなく、CV、RV、ICV、MCV、FSV、ATGMに備わる指揮統制、偵察、射撃支援、歩兵、対装甲能力を最大限に活用できる車両を必要としていると言えます」。

 特筆すべきは、「RVの長距離先進スカウト監視システム(LRAS3)のFLIRにより、約6マイル先の目標位置座標を確認できることです」という。

 

ストライカー偵察車。 (US Army)

 

 

さらに、将来はさらなるメリットが生まれるかもしれない。IFATDSは、戦場の多様なソースから入る情報をつなぎ合わせる安全な通信システムを提供し、HIMARSの殺傷力を高め、より優れた共通運用画像と状況認識を可能にする。

 デュプレシスによれば、このシステムにより、FSVストライカーは「ウクライナ軍の火力支援システムにリンクでき、火力ミッションの探知から目標への弾丸の投下までを迅速に処理できる」。さらに、音声またはデータで火力ミッションを処理し、変化する火力支援制御手段や優先順位を把握できるため、ウクライナの指揮官が機動支援のために火力を同調させるのに役立ちます」と述べている。

 

 

 

 

2013年2月27日、アフガニスタン・ヘルマンド州のバスティオン前方作戦基地内の練習場でストライカーを運転するチームを見る米陸軍兵士たち。 (U.S. Army photo by Sgt. Richard W. Jones Jr.)

 

 

ストライカーには利点と欠点があるが、ウクライナ軍の部隊移動能力を向上させるはずだ。ストライカー ファミリーには、最前線でロシア軍を相手にするのに役立つ可能性を秘めた型式があり、これはクリミアなどさらなる領土を解放しようとする試みには欠かせない要件となるだろう。

 

ストライカーの紹介

ストライカーは、カナダのLAV III (Light Armored Vehicle III) をベースにジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズが製造した8輪の全輪駆動装甲戦闘車 (ACV) で、2000年代に実戦投入された。

 ストライカーは、冷戦後の陸軍の暫定装甲車計画から生まれた。これは、重戦力の戦闘力と防御力に欠ける軽戦力と、展開に時間がかかり戦場での動きが鈍い重戦力の間の能力差を埋めるため、迅速展開できる新しい戦力を作ることに焦点を当てた取り組みだった。より機敏で柔軟な機械化構想で、当時は賛否両論があった。その結果、ストライカーが最初に就役したのは2002年で、ちょうど米国が世界的な対テロ戦争に身を投じることになった時期であった。

 ストライカーは、ブラッドレー戦闘車両やM-1エイブラムス主力戦車より軽量で高速であり、C-130含む空軍の主要貨物機3機種に搭載できる。

 ベトナム戦争での行動により授与されたSPCロバート・F・ストライカーと、第二次世界大戦での行動により授与されたPFCスチュアート・S・ストライカーという、戦死した名誉勲章受賞者2名に敬意を表し命名された。

 ストライカーは単体の車両ではなく、ファミリー構成だ。

当初のストライカー・ファミリー. (DoD)

現在運用中のストライカーのバリエーション。DOT&E

 

ストライカーには、ICV(Infantry Combat Vehicle)とMGS(Mobile Gun System)という2種類のシャシーがあるが、いわゆる「ダブルV」ハルの追加を考慮すれば、全部で18種類のストライカーが存在する。ダブルVは、アフガニスタンやイラクで地雷や簡易爆弾の爆発による被害を軽減するため設計された。

米陸軍によると、「ICV、MGS、偵察車(RV)、迫撃砲運搬車(MCV)、司令官車(CV)、射撃支援車(FSV)、工兵部隊車(ESV)、医療避難車(MEV)、対戦車誘導弾(ATGM)、車両、核生物化学偵察車(NBCRV)を含む10通りの平底タイプがある」。ICV、CV、MEV、MC、ATGM、FSV、ESVの7種類のダブルVハル(DVH)型、および30mm砲を搭載したICVプラットフォームの改良型だ。

 ロジスティックスとサステナビリティを簡素化するため、23トン車両の各型は、6気筒、350馬力のキャタピラー社製ディーゼルエンジン含む主要コンポーネントを共有し、最高時速60マイル以上を実現する。この高速性がストライカーの重要な特徴だ。

 

 

ストライカーのキャタピラー社製6気筒ディーゼルエンジンは、最高速度60mph以上を実現 (U.S. Army photo)

 

 

ICV、CV、ESV、NBCRVといった遠隔兵器システムを搭載する各バリエーションには、車内の射撃統制システムに統合されたSTORM-LRFレーザー距離計が搭載されていると、元ストライカー士官のデュプレシスは説明してくれた。このレーザー距離計は、交戦時の弾道を計算し、ス移動中に安定した射撃を行うことを可能にしてくれる。

 各型の乗組員は、近くの部隊や後続部隊に報告するため、あるいは機動するため、あるいは砲撃を要請するため、範囲内の脅威を識別できる。

 「この能力は、M113や暗視装置の光学系を大幅に改善したものです」と述べています。

 陸軍によると、ストライカーはまた、インターネットベースのコマンド、制御、通信、コンピュータ、インテリジェンス、監視および偵察(C4ISR)機能を備えたデジタルコマンドおよび制御システムを備えている。

 C-5ギャラクシーで7両、C-17グローブマスターIIなら4両I、C-130ハーキュリーズ貨物機で1両を輸送できる。

 

 

C-17グローブマスターIIIは最大4台のストライカーを搭載できる (Photo by Sgt. David Nunn)

 

 

 最も一般的なICVは、M2 .50 cal機関銃またはMK 19 40mm グレネードランチャーを装備する。後部のルーフハッチと前部のコマンダーズハッチで、搭乗したまま武器を発射できる。

 乗員は指揮官と運転手の2名で、9名の兵員を収容できる。

 MGS型は105mmライフル銃、12.7mmと7.62mm機関銃、ATGM型はTOW戦車破壊ミサイル用二筒式ランチャーと7.62mm機関銃を装備している。

 陸軍は昨年、MGSの105mm砲のオートローダーに長年の問題があったことと、ダブルV車体への近代化が行われていなかったことから、MGSのフリートを切り離した。

 しかし、一部戦車を破壊する設計のMGSは、戦車のような能力を求めているウクライナにとって非常に魅力的である可能性がある。MGSは現在は退役しており、最近ではウクライナに送られるだけでなく、残存車両はスペアパーツ供給源として利用される可能性もある。

 国防総省のDOT&Eは、MGSの任務を次のように記している。

 「ストライカー旅団戦闘チームはMGSで、壁に穴を開け、バンカーや機関銃の巣を破壊し、狙撃位置や軽装甲の脅威を撃退する。主要な武器システムは、T-62戦車までの脅威に有効な設計となっている」。

 ストライカーシステムは、長年にわたりアップグレードされてきた。

 先に述べたように、デュプレシスがイラクで旧型運用していた頃、陸軍はダブルV車体設計を取り入れた再設計を開始していた。2012年までに673台が生産され、うち450台以上がアフガニスタンに配備された。

 

TOWミサイルを発射するストライカー。(Raytheon)

 

 

2017年には、ICVの50口径機関銃より重い武器を装備したロシア装甲車に対抗するため必要な、はるかに高い火力と交戦範囲を持たせる2年間の取り組みを経て、ストライカーの新型2種が実戦投入された。

 第2騎兵連隊と同じ「ドラグーン」と呼ばれる新型は、30mmブッシュマスターキャノンを装備している。また、このデザインには、待ち伏せや地雷に強いストライカーの「ダブルV」のサスペンションや成熟した戦闘システム部品など、他のストライカーモデルの最新技術が使用されている。

 

ストライカーの更新型ドラグーンは、30mmブッシュマスター・キャノンを搭載する。 (U.S. Army photo)

 

 

2021年4月、陸軍は移動式短距離防空(M-SHORAD)搭載型を実戦配備した。2021年10月、GDLSはエピルスEpirusと、高出力マイクロ波兵器(HPM)レオニダスLeonidasを車両に統合する、ドローンザッピング・ストライカーバリアントに関する正式パートナーシップ契約を発表した。

 エピルスによると、ストライカー・レオニダスと名付けられた車両は、2022年10月に重要テストに合格し、ドローンとドローンの群れを無効化した。

 

実戦記録

イラク戦の最盛期、ストライカーは「EFPやRPGの前に非常に脆弱だった」と、2008年のサドルシティでの戦闘で車両がどのように機能したかを調べた、ウエストポイントのThe Modern War Instituteによる2019年報告書は述べている。

 ダン・バーネット中佐が指揮する第2ストライカー騎兵連隊第1中隊(1-2SCR)は「6日間で6台のストライカーを失った」と報告書に記されている。「車両が生存できないだけでなく、その車幅(特にRPGケージを装着した場合)のため幹線道路の走行が制限され、潜在的な位置が予測でき待ち伏せされやすくなっていた」。

 その結果、装甲小隊にパトロールを先導させるなど、戦術を変更した。「ストライカー車両の前に、戦車を攻撃の矢面に立たせた」のである。これは、都市環境でストライカーを効果的に使用する方法に関して、デュプレシスの発言を反映している。

 

第2歩兵師団第3旅団第5大隊-20歩兵(ストライカー旅団戦闘チーム)の兵士は2003年12月15日、イラクのサマラの安定に貢献するルート偵察、存在パトロール、民生評価、戦闘作戦を実施する。第2歩兵師団第3旅団(ストライカー旅団戦闘チーム)は、第4歩兵師団の作戦統制下にある。(Stryker Brigade Combat Team) is under the operational control of the 4th Infantry Division. (U.S. Army photo by Spc. Clinton Tarzia, Released)

 

戦車や歩兵戦闘車両は「貴重な存在だと証明したが、ストライカー車両はこの環境では物足りないのがわかった」と報告されている。「ストライカーが有用でないわけではない。ストライカーはその他地上戦闘車両と異なり、速度、機動性、輸送オプションの組み合わせが可能である。しかし、この環境における車両の「鉄の三角形」考慮事項(積載量、性能、保護)において、EFPからの保護を提供せず、都市部の地形の大部分で車幅が広すぎた」。

 Combat Studies Institute Pressによる2014年レポートでは、2009年に第17歩兵連隊第1大隊とアフガニスタンに進出したストライカーの初期段階は比較的成功したと示されている。同報告書によると、「バッファロー」のニックネームを持つ同部隊の展開初期の作戦行動テンポは、旅団のアフガニスタン派遣を正当化する以上のものであった。「アルガンダブ川流域の時間と空間を、これまでの部隊では夢だった方法で縮小させ、1-17中隊は作戦地域を一掃し敵の効果を著しく低下させたが、当初の予想よりはるかに高いコストが生まれた」。

 代償は、兵員や車両の損失として時間をかけて積み重なり、ほとんどが路側爆弾の結果であった。

 

2011年6月17日、アフガニスタンのカンダハル州で、道路脇の爆弾で負傷し、避難する際に部隊のメンバーに親指を立てる、アラスカ州フォートウェインライトに拠点を置く第25歩兵師団第1ストライカー旅団戦闘チームのショーン・ウイリアムズ兵曹(米軍)。(Photo by U.S. Navy Lt.j.g. Haraz N. Ghanbari/U.S. Navy via Getty Images)

 

しかし、先に述べたように、2011年には、装甲を強化した新型ストライカーのダブルVハル型が、爆発の衝撃から車内の兵士を遠ざけることができ、必要な仕事をこなせることが証明され始めた。

 ストライカー部隊が駐屯するルイス・マックコード統合基地を含む選挙区のワシントン州選出の有力下院議員も、この意見に同意している。

 下院軍事委員会の上級委員であるタコマ選挙区選出のアダム・スミス議員は当時、「犠牲者は大幅に減少し、これは軍や地元の軍人、ジェネラル・ダイナミクスやその従業員が非常に誇りに思うことのできる重要な成果だ」と述べてた。

 同車両に関する陸軍報告書によると、「新型ストライカーは7月、ルイスマッコードが拠点だったストライカー旅団の第25歩兵師団第1旅団アラスカ兵グループへの攻撃で、最初の主要テストに合格した。兵士たちは、過去に深刻な死傷者を出した路傍爆弾から生き延びた」。

 ストライカーは、2つの戦場で学んだ厳しい教訓の代償で、改良多数が施され、戦闘実績がある。同戦闘車両が、ウクライナの広大な平原や村や町で、その戦記に新たな章を書き加えるのを見ることになるかもしれない。

 ストライカー戦闘車両は、ロシアに直面することになっても、エイブラムスやブラッドレーと異なり、ロシアと対戦に対応する設計ではない。

 米陸軍の戦闘訓練センターでは、ロシアなどの潜在的な敵対勢力の能力を再現しているが、訓練環境以外で大規模な非反乱戦へのストライカー投入は今回が初とデュプレシスは指摘している。■


This Is What Stryker Armored Vehicles Could Bring To The Fight In Ukraine

 

BYHOWARD ALTMAN|PUBLISHED JAN 13, 2023 2:36 PM

THE WAR ZONE


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...