Pearson Engineering
ウクライナへの米軍の追加支援は装甲車、防空装備、砲弾などが満載の25億ドル
米国防総省は、ウクライナへの新たな軍事支援として、25億ドル(約3000億円)規模の支援を発表した。中には、これまでの米国支援になかった8x8装輪装甲車ストライカーと、同車両向け地雷除去ローラーも含む。さらにブラッドレー戦闘車、アヴェンジャー防空システム、その他ミサイルや砲弾も含まれる。
新しい支援策は、"Presidential Drawdown "と呼ばれる。ジョー・バイデン大統領は、米軍の在庫からストレートに「ドローダウン」て友好国に援助を行う権限を持つ。
ペンタゴン発表のパッケージは次の通りである。
国家改良型地対空ミサイルシステム(NASAMS)用追加弾。
アベンジャー防空システム8基
ブラッドレー歩兵戦闘車(IFV)59台、TOW対戦車ミサイル590発、25mm弾薬29万5千発。
ストライカー装甲兵員輸送車(APC)90台、地雷ローラー20台。
地雷抵抗性待ち伏せ防護車(MRAP)53台。
高機動多目的車(HMMWV)350台。
155mm砲弾20,000発。
精密誘導式155mm砲弾約600発。
105mm砲弾 95,000発
120mm迫撃砲弾約11,800発。
高機動砲ロケットシステム(HIMARS)用追加弾薬。
弾薬支援車12台
コマンドポスト車両6台
兵器牽引用戦術車22台
高速対レーダーミサイル(HARM)。
対人ロケット弾 約2,000発
300万発以上の小火器弾。
障害物除去のための解体装置。
クレイモア対人弾
暗視装置
予備品およびその他の現地装備
ストライカーが初めて、しかも90台含まれていることが注目される。米国当局がストライカーを米国の次期支援策に加えることを検討しているとの報道が1週間以上前に出ていた。
ウクライナが受け取ることになるストライカーの型式はまだ正確にはわからない。国防総省が「装甲兵員輸送車」と表現していることから、少なくとも一部車両は基本的な歩兵輸送車(ICV)仕様と思われるが、ICVは2人の乗員と9人以上の兵士を収容できるスペースを持ち、通常、車体上部の遠隔操作マウントに50口径機関銃または40mm自動擲弾筒を装備する。
ストライカー歩兵輸送車(ICV)。Chung Sung-Jun/Getty Images
地雷ローラー20個が提供されるとの具体的な言及は、ストライカーの一部が工兵部隊車両(ESV)であることを指し示す可能性がある。地雷ローラーは、各種地雷を爆発させ、車両とその乗員を保護する設計だライカー・ファミリーの中でも、地雷除去装置(攻勢に出るウクライナ軍にとって非常に貴重なもの)と最もよく関連し、その他、様々な戦闘工学的作業をよりよくサポートする構成だ。
地震ローラーを装備した米陸軍M1132ストライカー・エンジニア・スクワッド・ビークル。U.S. Army
重装甲車では、今回59台のブラッドレーが追加され、ウクライナが受け取る重装甲車の数は2倍以上になる。同車両は、乗員を保護するだけでなく、25mm自動機関砲やTOW対戦車ミサイルを搭載し、暗視機能や赤外線センサーも備える。
ブラッドレー歩兵戦闘車。 U.S. Army
「パッケージ内の59台のブラッドレーIFVは、1月6日に提供のブラッドレー50台のストライカーAPCと90台と共に、ウクライナに2旅団相当の装甲能力を提供する」と、新しい援助パッケージに関する国防総省プレスリリースは付け加えている。
数十台のMRAPと数百台のハンビーは、ウクライナ軍の機動性を飛躍的に向上させる。
米軍がウクライナに4台のアベンジャー防空システムを送るという 2022年11月の初回決定は、始まりに過ぎなかった。今回の支援パッケージで追加された8基は、ウクライナ軍が受け取るティンガー熱探知短距離地対空ミサイルと50口径M3P機関銃を搭載した同システムの合計を12にする。
アベンジャーは、ドローン含む空からの各種脅威に対して、貴重なポイントディフェンス能力を提供する。ウクライナが米国などから調達する予定のペイトリオットのような上位防空システムも含め、各地の重要拠点や資産の保護に利用できる可能性がある。
防空面では、今回のパッケージにはさらに「国家改良型地対空ミサイルシステム(NASAMS)用軍需品」も含まれている。ウクライナ軍は米国からNASAMSを受け取っている。カナダは最近、同システムを追加購入し、ウクライナに譲渡すると発表した。
NASAMSのシステムの発射台は各種迎撃ミサイルを発射できるが、これまでのところ、ウクライナ軍がAIM-120高性能中距離空対空ミサイル(AMRAAM)の亜種を受け取っていることを示す証拠しかない。
NASAMSのランチャーから飛翔するAIM-120 AMRAAMミサイル。 Kongsberg
ロシアからミサイル攻撃を定期的に受けているウクライナでは、防空・ミサイル防衛能力への需要が高い状態が続いている。今回の新しい援助パッケージに関する国防総省のプレスリリースには、「ウクライナが短・中距離の各種脅威に対抗し、ウクライナの多重防空を強化するためNASAMS弾とアベンジャー防空システムの追加」と書かれています。
レーダーを破壊するAGM-88高速対レーダーミサイル(HARM)も、ウクライナ空軍がロシアの防空資産を抑圧し破壊し続けるのに役立つだろう、とある。米国政府は昨年、ウクライナのパートナーがソ連設計のMiG-29フルクラムとSu-27フランカー戦闘機にAGM-88を組み込むのをひそかに支援し、以来このミサイルは一種の有名人になっている。
残りの大部分は、各種弾薬だ。
ウクライナ軍はすでに、アメリカから供与されたM142高機動砲ロケットシステム(HIMARS)用の精密誘導ロケット弾を有効活用しており、他国から供与されたM270多連装ロケットシステム(MLRS)の派生型にも使用可能である。これらの弾薬が増えることは、恩恵としか言いようがない。
なお、最近、ウクライナはHIMARSやMLRSで発射できる精密誘導弾の一種である地上発射型小口径爆弾(GLSDB)を米国から受け取る可能性が高いとの報道があったが、ここでは特に触れていない。今回のパッケージでそれらのシステムの「追加弾薬」に含まれる可能性もあるが、「ドローダウン」であることを考えると、その可能性は低い。米軍はGLSDBの運用者ではないので、それらの兵器の在庫がない。もし、米国政府がウクライナにこれらの軍需品を提供するとしたら、ウクライナ安全保障支援構想(USAI)を通じて行う可能性がより高い。
現在、ウクライナでの戦闘の多くは砲撃戦であり、ウクライナ軍とロシア軍に影響を与える砲弾の不足が報告されている。そのため、ウクライナ砲兵部隊が重要な火力支援や相手への嫌がらせを続けるためには、155mmと105mmの砲弾を増やすことが特に重要となる。
このほかにも、多くの国からウクライナに対する新たな支援表明が相次いでいる。ここ数週間でも、英国、フランス、ポーランド、スウェーデンなどが、戦車など重装甲車両や自走榴弾砲など、ウクライナ軍の戦力強化に向けた支援を計画していることが確認されたばかりだ。
これは、ウクライナ政府とその国際的パートナーが、ロシア軍が春に大規模攻勢を仕掛ける準備をしていると警告を強めているためだ。ロシアが今後数週間のうちに動員できる追加部隊と装備の質と量には確かに疑問があるが、質の低い部隊の急増だとしてもウクライナの防衛を圧倒しかねないという懸念がある。
米国や他の国の政府関係者は、ウクライナへの新たな軍事援助の発表は、1年近い紛争の後、この努力に揺るぎないコミットメントを示すものであると明らかにしている。
「ウクライナがロシア軍を押し返す中、我々は引き続き#UnitedWithUkraineである」と、アントニー・ブリンケン米国務長官は今夜、新しいアメリカの軍事支援策についてツイートした。
明日、ドイツのラムシュタイン空軍基地で行われる、いわゆるウクライナ防衛コンタクトグループの米軍主催の会議を受けて、より実質的な援助の発表が行われると予想される。
今夜発表されたストライカー、ブラッドレー、アベンジャーズなどを含むアメリカの新しい支援パッケージは、侵略的なロシア軍に対抗するウクライナの戦いを引き続き支援する大規模な新しい誓約であることは明らかだ。■
Stryker Combat Vehicles Will Be Headed To Ukraine From U.S.
BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JAN 19, 2023 10:52 PM
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。