スキップしてメイン コンテンツに移動

F-35は何がすごいのか、第四世代機とどこがちがうのか、パイロット3名に聞いてみた

 

 

F-35は25mm機関砲、第5世代ステルス、そして比類なき「センサー融合」を備えている。Warrior MavenのKris OsbornがF-35戦闘機パイロットにインタビューした。

 

 

F-35は25mm砲を搭載し、第5世代ステルス機として飛行し、まったく新しい世代の空対空・空対地兵器で攻撃するが、その最大の特徴は、よく言われる「センサー融合」あるのではないだろうか。

 

F-35の兵装

最近行ったF-35パイロット3名へのインタビューでも一貫して強調されていた。ロッキード・マーチンのF-35テストパイロット、クリス・"ワーム"・スピネリは、最大の特徴は 「データ統合」だと語っている。

 

F-35のデータ統合とは

「以前乗っていた第4世代のF-16と、F-35での数時間の飛行との最大の違いは、データ統合とデータ管理能力だ。F-35は非常に優れた状況認識能力を備え、これまで操縦したどのプラットフォームよりも優れています」とスピネリは言う。

 このような技術的プロセスの利点は確かに自明だが、「センサー融合」は見過ごされがちな戦術的ダイナミクスをもたらしてくれる。F-35は、パイロットを「真の戦術家」に変える。現在、ロッキード・マーティンで戦闘機飛行作戦主任(F-35テストパイロット)を務めるトニー・"ブリック"・ウィルソンは、F-35パイロットインタビューで、こう語ってくれた。

 「センサー融合で、パイロットの作業負荷が軽減され、パイロットに状況判断のバブルが生まれ、単なるパイロットではなく、センサー管理者でもなく、真の戦術員になるのです。パイロットに余裕があることで、生存率が高まり、殺傷能力も向上します」とウィルソンは言う。

  戦闘機は、高度、航行軌道、速度、時間的制約のあるデータおよび武器情報の収集と処理の必要性など、明確かつ管理可能な多くの変動要因に合わせて運用される。

 F-35は、次世代EW兵器群、アップグレードされた空対空攻撃ミサイル、長距離照準センサー、ミッションデータファイル、敵ターゲット「識別」用の脅威ライブラリで武装しています。センサーフュージョンはこれらすべてを「断捨離」すると、ロッキードマーチンでF-35生産・訓練パイロットを務めるモネッサ「サイレン」バルジザーはインタビューで話している。

 「ディスプレイの素晴らしいところは、見えるものと見えないものをコントロールできることで、必要なものをすべて表示できるので、味方や空対空、空対地の統計、航法ポイントなど、高度な情報を見ることができるのです。そのため、パイロットがどれだけすべてのデータを処理できるかが問題になります。なんといってもデータは大量で、常に動的だからです。機内のあらゆるセンサーから、常にリアルタイム情報が提供されます」とバルジザーは言う。

 

Monessa “Siren” Balzhiser

Monessa “Siren” Balzhiser

Lockheed Martin

 

F-35の 先進電子走査型アレイ 

F-35 Advanced Electronically Scanned Arrayは、敵を破壊するため、脅威となる物体を認識し、長距離赤外線ターゲットセンサーで描写し、搭載された脅威ライブラリデータベースがターゲットを明確に特定し、精密誘導兵器が攻撃を行う。

このプロセスの最後には、パイロットが迅速かつ果断に行動するための単純な「決定」が待つ。

 「意思決定者のパイロットにとって、ゲームを変える最大の違いは、F-35が機体のあらゆるセンサーを融合・統合していることです。F-35は、航空機の各種センサーを融合・統合し、全体像を描き出すのです。これは、第4世代のプラットフォームではできなかったことです」とスピネリは言う。

 融合プロセスは、高度なコンピューティングの副産物として意図された。空軍の元チーフ・サイエンティストは、数年前の在職中に、F-35のセンサー融合は実はAIの初期段階であると教えてくれた。高度なコンピュータアルゴリズムは、一連の自動化機能を実行し、多くの手続き的な分析作業は、人間の介入なく実行できる。

 これでパイロットの「認知的負担」を軽減し、人間の認知が必要なより重要な作業にパイロットを解放するだけでなく、受信データの別々のプールを相互比較し、結論を導き出すことができる。

 

F-35と AI

膨大なセンサーデータを収集受信し、膨大、あるいは無限に近い量の情報を数秒で解析し、問題解決し、衝撃を与え、各種変数を整理し、それらをどのように適合し、統合し、あるいは単に影響を及ぼすのかという観点から、AI対応システムを機能させることができる。

 例えば、速度や高度は、航法や照準に影響を与える。脅威データは、接近速度を決定し、特定の脅威に最適な武器を決定する。AIを搭載したコンピューティングは、これらの機能の多くを自律的に実行し、変数を既存の情報や過去の事例と比較して、意思決定者に推奨事項を提示する。

 

F-35とF/A-18、F-16、F-15EXとの比較

F-35の長期的なメンテナンスの課題、運用・維持コスト、ロジスティクスの複雑さなどに関する議論、論争、批判が渦巻く中、F-35とF/A-18、F-16、あるいは大規模改良されたF-15EXといった第4世代戦闘機とどの程度違うのかと、多くの人が考えるのではないだろうか?

 F-35の差と優位性は、長期的なコストに関する懸念を正当化できるのだろうか。

 もちろん、F-35の製造が進むにつれてコストは低下し、多くの第4世代戦闘機を必要とする任務をF-35がこなすようになれば、批判的な意見と異なる財務状況が出てくる。

ロッキードと国防総省は、コストについて取り組んでおり、大きな成功を収めていると言われている。第4世代戦闘機を大量に必要とする任務で投入する戦闘機の数が少なくて済むというコスト削減と合わせて、ロッキードと空軍が生産の合理化と高度化に取り組み、1機単価を大幅に引き下げることによって、予算が節約されている。

 しかし、純粋に性能だけで検証すればどうなるか。F-35はどのくらい優れているのか?

 これは、事情を知るべき立場の人に尋ねればよい。そこで、第4世代機とF-35の両方で操縦経験があるF-35パイロット3人に話を聞いた。各パイロットは、戦争シナリオでF-35運用がいかに異なるかを、ユニークかつ経験豊富な視点で語ってくれた。

 各パイロットのコメントは、センシング、データ融合、操縦性、ミッションインテリジェンスデータなど、重要なテーマで一致している。

 

視界外でのF-35 

F-35の女性パイロット、モネッサ・"サイレン"・バルジザー(ロッキード・マーチンのF-35生産・訓練パイロット)は、インタビューで次のように語ってくれた。「目視の範囲外での攻撃・破壊能力は、F-35ならではの大きな利点です。

 「F-35には素晴らしいレーダーがあり、敵に発見される前に目視範囲外から撃てる。これは第5世代戦闘機の大きな利点です」と彼女は言う。バルジザーは、これを「ファーストショット、ファーストキル」という言葉で表現した。

 視線距離を超え攻撃できることに加え、F-35は接近戦もこなす可能性があり、センサーは更新された位置情報を提供する。

 

F-35の戦術空域での優位性

F-35のテストパイロット、クリス・ワーム・スピネリは、空軍で24年間、F-22やF-16戦闘機に乗り、ロッキードに入社した。F-35の技術は、空対空戦闘で生死を分ける敵との位置関係を、パイロットにまったく新しい形で理解させてくれると、言う。

 「第4世代戦闘機の空対空戦闘では、敵機の追撃を生き残るために発射し、機動するす。私自身、ラプターF-22でF-16で戦った経験から言えるのは、見ることにとてもイライラするということです。正直なところ、(敵機を)見ることさえできないし、何が起こっているのかもわからない」とスピネリは語った。

 スピネリは、F-35は、航空戦で周囲の状況を知る必要のあるパイロットにとって、まったく異なる「戦術的空気」のイメージや「メンタル・モデル」を生み出すと語った。

 「第4世代機では、精神的にモデルを構築し、判断を下さなければならないのです。もちろん、空と地上の脅威やその他の脅威に関する脅威環境がどれほど密集しているかで、それは困難なものになります。これは、F-35と対照的です。F-35では、海外情報源からも情報を得て、自分の搭乗機でより大きな画像を見られます」とスピネリは言う。

 空での勝利では、元戦闘機パイロットのジョン・ボイド大佐提唱の「OODAループ」が、今も使われている。「観察、方向づけ、決断、行動」で、敵より速く決断の「ループ」サイクルを完了できるパイロットは.空中で敵を撃破できる。OODAループを高速化し、合理化し、指数関数的に改善することが、F-35の優位性を決定づける最重要の要素であることは間違いない。

 スピネリのF-35操縦の経験は、もちろん機体のセンサーデータ処理速度やデータフュージョンを活用したもので、ボイドのOODAループと完全にコンセプトが一致している。

 F-35は、「自分が持つ知識や情報だけで良いのですから、そこが大きな違いです。F-35は、状況に応じて正しい、あるいは適切な戦術的判断を下し、敵の攻撃に対し自分の攻撃が成功する確率が最も高いタイミングで実行できる意思決定を可能にします」とスピネリは語っている。

 

F-35のセンサー融合

スピネリの言う「戦術航空」のイメージは、F-35の搭載する各種センサーの情報「融合」で実現される。

 「センサー融合とは、一見バラバラで、無関係に見える情報を、パイロットのために分析し、1つのスクリーンにまとめることだ。基本的にパイロットは、統合画像を得るために異なるセンサーシステムを見て、分析し、比較する必要はなく、機内のコンピュータがそれを行う。

 「F-35のレーダー、電子戦(EW)システム、MADL(Multifunction Advanced Data Link)がすべて統合していることがF-35と従来のF-16やF-18との最大の違いです」とスピネリは述べている。

 興味深いことに、データ融合がコックピット内のノイズを低減し、パイロットが目前の緊急の課題に集中できるようにしてくれる。

 トニー・"ブリック"・ウィルソンは、元米海軍のF/A-18パイロットで、空母運用型のF-35Cにも長い間乗っており、第4世代と第5世代の航空機を比較できる。

 

F-35のコックピット通信とセンサー融合

「コックピット内が静かなのが大きな違いです。脅威の内容にもよりますが、飛行中に発生するエラーの多くは、通信の聞き間違いや、重要な情報の聞き逃しによるものです」。

 騒音や注意散漫の減少の一因は、各システムが集合的に、あるいは統合的に収集、整理、合理化されているためとウィルソンは説明する。

 「F-35では、センサ・スイートを常時携帯しています。しかし、センサー融合が多くの通信を必要としない形でパイロットに情報を提供するため、非常に静かです」とウィルソンは述べている。

 単純化しすぎるのは良くないが、敵ターゲットを見つけ、破壊する能力は、空戦での生死を左右する。この単純な方程式を考えると、パイロット3名は、F-35の最大の利点は、「センサー融合」 にあると同意している。

 「第4世代戦闘機との最大の違いは、電子戦から武器、レーダー、照準ポッド、各種センサーまで、さまざまなシステムを常に管理していることです。第4世代では、コックピットの中で全部を確認するのに100%集中していました...一方、私がF-35では、それがすべて自分のために行われているのです」と彼女は語ってくれた。■

 

What it is Like to Fly an F-35: Interviews with Three F-35 Pilots - Warrior Maven: Center for Military Modernization

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN - CENTER FOR MILITARY MODERNIZATION

DEC 24, 2022

 

 

Kris Osborn is the President of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest and President of Warrior Maven -the Center for Military Modernization. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ