艦載機特に戦闘機パイロットの存在意義をめぐり、無人機導入に抵抗があった米海軍でもここに来て無搭乗機材の活用は避けられないと開発試験を加速化しています。空軍に続き同じ機材を試験用とは言え導入するのは、海軍が空軍の知見を活用したいと思惑が見えてきます。さて、これまで無人機については及び腰だった日本ですが、遅れを取り戻すことができるのかが2030年代の安全保障環境に影響を与えそうですね。The Warzoneの記事です。
USAF
米海軍が導入するXQ-58Aは、敵防空網を突破する自律型ドローンの能力実証で役立つ
米海軍がクレイトスのXQ-58A Valkyrieドローンの最新のオペレーターになる。海軍はPenetrating Affordable Autonomous Collaborative Killerと呼ぶ新プログラムの一環として、ステルス低価格の同型2機の購入契約を同社に交付した。現在のところ、XQ-58Aの唯一のユーザーが米空軍で、機密扱いの共同戦闘機プログラムプロジェクトを含む様々な試験目的で使用中だ。
海軍がXQ-58Aをどう使用するか詳細は不明だが、今回の無人機購入は、海軍の将来的な無人化へのビジョンと、拡大し続け、大きな利益を生む可能性があるこの市場におけるクレイトスの位置づけに関して、重要な進展と言える。
国防総省は2022年12月30日、毎日の契約通知で、海軍がXQ-58Aを2機購入する契約を確定させたと発表した。契約は、海軍航空システム本部(NAVAIR)の海軍航空戦機部門(NAWCAD)を通じ行われ、15百万ドルで、生産と配送、不特定の 「センサーと武器システムのペイロード」が対象。
通知によると、無人機は、「貫通型安価な自律型協調キラー - ポートフォリオの目標を達成する」ため使用される。これには「非経常的なエンジニアリングサービス、システム/サブシステムの統合、設置、試験、地上・飛行運用、ロジスティクス、メンテナンス、および政府試験場での飛行試験と実証実験のため政府所有のまま請負業者による運用」が含まれるとある。作業は、9月30日に終了する今年度中に完了するとある。
契約通知には、対象のXQ-58Aが改良型ブロック2バージョンかどうかは書かれていない。両機の正確な性能は不明だが、クレイトスのウェブサイトによると、ヴァルキリーは海抜45,000フィートまで飛行可能で、最大航続距離は3,000マイルという。ペイロードは同社によれば、最大6,000ポンドになる。XQ-58Aは、各種センサーやその他のシステムを迅速に統合できるよう、モジュール式のオープンアーキテクチャ設計だ。
米空軍のXQ-58Aが2021年にテストされた USAF
XQ-58Aは、地上ランチャーからロケットアシスト方式で離陸し、パラシュートで地上に帰還する。これにより滑走路に依存しない。クレイトスは以前から、ヴァルキリーが容易に展開できるプラットフォームであると宣伝しており、コンテナ型ランチャーのコンセプトも示していた。
国防総省の契約通知には、海軍が合衆国法典第10編第4023節の権限を行使し、特に実験目的の各種調達に適用され、競争なしでクレイトスを指名したと書かれている。
「貫通型アフォーダブル自律協働キラー」という説明と、「センサーと兵器システムのペイロード」の両方についての言及から海軍のねらう中核的な目的で強いヒントがわかる。これは、敵防空網を突破し、高度自律性で活動できるステルス無人プラットフォームを複数開発する計画で、潜在的にはネットワーク化された群として、有人プラットフォームと共同し多様な任務を遂行すると示唆している。これには、情報、監視、偵察(ISR)または通信ノード(いずれの場合もメッシュ・ネットワークの一部として)として機能すること、電子戦ノードとして機能すること、その他、空や地上の敵脅威と直接交戦することなどが含まれる可能性がある。
空軍は、協調型戦闘航空機材Collaborative Combat Aircraft(CCA)プログラムの目標を説明するため、同一ではないにしても、多くの類似した用語を使用している。さらに、CCAは、空軍の大規模な次世代航空支配(NGAD)構想の一部でもある。NGADには、新型無人機以外に、第6世代有人戦闘機の開発や、新型い高度なセンサー、ネットワーキング、戦闘管理スイート、兵器システム、次世代ジェットエンジンなど、さまざまなプロジェクトが含まれる。
給油中の第6世代戦闘機の想像図。Lockheed Martin
ロッキード・マーチン
海軍は独自のNGADプログラムを持っており、機密扱いだが、F/A-XXと呼ぶ第6世代戦闘機を含め、空軍と多くの点で類似している。また、海軍関係者は過去に、将来の空母航空団の航空機の50%以上が無搭乗になる可能性があると発言している。そのため、NAVAIRによるXQ-58Aの2機購入が、同軍のNGADの取り組みのうち、CCAのようなサブコンポーネントと結びつく可能性は大いにあり得る。
2019年以来、空軍はXQ-58Aを使用して、高度な自律機能、通信およびデータ共有スイート、CCAプログラムで取得する可能性を含む将来の無人機につながるその他システム、ならびに乗員付きプラットフォームに関する作業をサポートしてきた。2022年11月、フロリダ州エグリン空軍基地の第96試験飛行隊は、2機のヴァルキリーが第40飛行試験飛行隊に加わり、自律機能関連の試験を開始したと発表した。
空軍は2021年、わずか3回の飛行を終えた最初のXQ-58Aを引退させ、博物館に送ると決定し、同機の設計が低コスト重視であることも浮き彫りになった。当時、空軍の広報担当者はAviation Week誌に対し、同無人機は 「大規模なアップグレードや修理 」を想定していなかったと語っている。
ヴァルキリーの正確な現在の単価は不明だ。クレイトスが昨年発表したデータでは、年間50機生産した場合、約400万ドルになるとされているが、同社は過去に、100機以上の生産では200万ドル以下になる可能性があると述べていた。
このように考えると、海軍が保有する2機のXQ-58Aも同様に試験支援用で、空軍の知見を活用できる可能性がある。逆に海軍の自律化技術は、空軍の様々な先進的なドローン開発に活用されている。米軍は無搭乗機とのチーミング・コンセプトに長年取り組んでおり、2015年には海兵隊のAV-8Bハリアー・ジャンプジェットとクレイトスUTAP-22マコ・ドローンを連結し飛ばすテストも行った。
同型のドローンが作戦行動機材に移行することは予見していないのかもしれないが、それでも今回の機材は、さらなるヴァルキリーや改良型につながるかもしれない、そうした能力への貴重な足がかりにもなるだろう。
もちろん、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、ジェネラル・アトミックス、ボーイング、レイセオンなど、米国の主要な防衛関連企業も最近、将来の無人プラットフォームと、さらに高度な自律性と乗員・無人チーム編成コンセプトを支える技術のビジョンを打ち出している。こうした作業の多くは、少なくとも部分的には、空軍で発展途上の CCA 要件を満たすのが目的のようだ。しかし、多くは、海軍の同様のプロジェクト、たとえば「貫通型安価な自律型共同殺人機」のポートフォリオにも適用できる。
はっきりしているのは、有人機やその他無人機と連携できる高度自律性があり、比較的安価な大量の高度無人機を、将来の米国の航空戦力の重要な構成要素と米軍がみなすようになってきたことだ。この視点は、特に中国やロシアといった潜在的な互角戦力を有するの敵対国に対する、将来の高度紛争の計画時に顕著になる。例えば、米政府と契約するシンクタンクなどは、XQ-58サイズやそれ以下のドローンを混合した高度に自律的な群れが、中国の台湾への軍事介入時でのアメリカの反応シナリオで、ゲームを変える可能性を一貫して示している。
高度な無人航空機と自律型テクノロジーの開発と実用化で大きく進歩している中国の国営航空産業や、米国の同盟国協力国多数も、同様の結論に達しているようだ。
以上を念頭に置き、2022年11月にクレイトスが発注元二箇所からXQ-58A受注を見込んでいると述べていたことが興味深い。うち1つが米国海軍だと判明した。もう1つは未公表のままだ。同社は当時、別の無名の「第4の新規顧客でヴァルキリーシステム複数と」と交渉中と述べていた。■
Navy Buys XQ-58A Valkyries For Secretive 'Killer' Drone Project
BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED JAN 2, 2023 6:28 PM
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