沖縄県
今週、読売新聞は、米海兵隊が、琉球列島に沿い島々を移動できる海兵隊沿岸連隊を設立すると報じた。九州の最南端から、中間の沖縄まで、台湾北部まで弧を描く範囲を動く連隊だ。センサーやミサイルを搭載した小分隊で新連隊を構成し、敵対する海・空戦力を偵察し、接近してきた場合に撃退する。
海兵隊沿岸連隊は、デビッド・バーガー海兵隊司令官が提唱する「フォースデザイン2030」の一環で、海兵隊をアクセス拒否型部隊に再編成する構想だ。構想では、海兵隊は米海・空軍や自衛隊と連携し南西諸島に展開する。連隊編成の遠征部隊は、中国の対アクセス兵器に対抗するため「立ち入る」ことをめざす。
そして、地理的空間をデフォルトで中国に譲り渡す。海兵隊と同盟国は譲歩を拒否する。
連隊は、中国人民解放軍の南西諸島へのアクセスを拒否し、日本の主権を守り、中国海軍と商船が島々の間の海域を通過する能力を拒否する、2つの目標を掲げる。島々を守り、海峡を封鎖すれば、島々は日米の歩哨が守る万里の長城になる。
その結果、中国海軍と空軍を中国海域に閉じ込め、水上作戦に不可欠な作戦空間を奪う。
軍事戦略は、スポーツ同様に、ホームチームが訪問チームより優位に立つ定説がある。本拠地が近く、戦場となりそうな場所に部隊がいる。地形を、訪問者より知っている。などなど。中国は、米軍や同盟軍に対しホームフィールドの優位性を活用し、沿岸地帯に巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速ミサイル、ミサイル搭載航空機をばらまいている。中国海軍の潜水艦や水上哨戒機と連携し、海岸に設置されたこれらのシーパワーは、強力な敵チームでも手こずりそうだ。
しかし、ホームチーム同士の対決となればどうか。日本と中国の軍隊は同じフィールドでプレーしており、同じような利点を享受する。アジアの強豪両国は7世紀以来、一進一退の攻防を繰り返してきた。1890年代の日清戦争から日本の独壇場となり、中国が覇権を取り戻そうとしている。中国がホームグラウンド・アドバンテージを駆使しているとすれば、米国と日本は遅ればせながら、戦略的地理、同盟外交、海洋権力を駆使して、倍返しをしようとしているのである。
要するに、同盟国は自国の優位性を利用する。海上の万里の長城が、中国がそれを破ろうとするのを阻止するほど禁断的なものであるよう願うばかりだ。でなければ、ホームチーム同士が戦場で出会って、どちらが勝つのか知ることはないだろう。
知らないままでよいのだ。
さて、米海兵隊と仲間たちが琉球での戦略と作戦を描く際は、カール・フォン・クラウゼヴィッツの「紐育戦法」という賢者の助言に耳を傾けるべきだ。海上の長城とは、島々という不動の監視塔を持つ、拡張された防衛境界線にほかならない。クラウゼヴィッツは、防衛線を信用しない。「防衛線が攻撃者に与える障害は、それを支える強力な火力なしには価値がない」と彼は主張する。
クラウゼヴィッツは、19世紀ヨーロッパの陸上戦において、拡大した戦線の守備隊を主に考えていた。しかし、彼の警告は21世紀のアジアでも有効だ。境界線防衛を代数学的に考えてみよう。定義上、どんな線も無限に続く点の集まりであり、優れた兵力を集結できる競合相手が戦闘に勝利する傾向がある。防御側は無限の点で敵より強くなることはできないので、攻撃側に有利だ。攻撃側は、戦線のある地点に戦闘力を結集し、防御側を圧倒し、打ち勝てる。
クラウゼヴィッツは、防衛線を短くし、特定の場所と時間における地上兵力の不一致を火砲で補う解決策をとった。海兵隊と日本は、琉球列島の防衛線を短くできないが、同時に島は動かない。これはかなり大きなアドバンテージだ。中国の商船や中国海軍艦艇が島を突っ切ることはできない。結局、島しょ防衛の課題は、PLA水陸両用軍を琉球沿いに上陸させないことと、海峡を封鎖することに尽きる。これは頑丈な防衛線になる。
海峡とは本来、狭い海である。そのため、琉球の防衛線は、海岸、海上、上空から発射されるミサイルの影になる短い紐の連なりだと考えればよい。それが作戦として成立する。プロイセンの巨匠は、紐育戦法に難色を示したものの、「フォースデザイン2030」の実戦結果を見て、ニヤリと笑うかもしれない。
そうあってほしい。■
The U.S. Marine Corps: Now An Access-Denial Force to Fight China? - 19FortyFive
By James Holmes
A 19FortyFive Contributing Editor, Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation and Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.
In this article:A2/AD, Access-Denial, China, featured, Force Design 2030, Marines, U.S. Marines
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