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戦闘機搭載ポッドの実現に近づいてきたレーザー兵器の最新テスト結果

本ブログではエネルギーの代わりにエナジーを訳語として採用しています。先回のレイセオン製に続きロッキードもレーザーで大きな存在感を示しています。



The Air Force Just Shot Down Multiple Missiles With A Laser Destined For Fighter Aircraft

米空軍がレーザーでミサイル複数撃破に成功。戦闘機へ搭載予定

The service wants this game-changing capability to be hanging off the wings of fighter jets by the early 2020s.

2020年代初頭にも戦闘機主翼下に戦闘を一変させる装備を導入する


空軍からレーザーで空中発射ミサイル数発の撃破に成功したと発表が出た。今回は地上配備型を投入したが戦闘機等に搭載し空中での脅威排除が期待されている。空軍発表では装備をポッドにおさめ2021年に飛行テストし、2020年代中に実戦配備したいとある。
空軍実験本部(AFRL) は2019年4月23日に米陸軍ホワイトサンズミサイル試射場(ニューメキシコ)で契約企業ロッキード・マーティンと今回の試射を行ったと発表。ロッキード・マーティンは指向性エナジー兵器開発契約を2017年に交付され、自機防衛高出力エナジーレーザー実証事業Self-Protect High Energy Laser Demonstrator (SHiELD)の高性能技術実証Advanced Technology Demonstration (ATD) にあたってきた。この内レーザー部分は次世代小型化レーザー発展事業Laser Advancements for Next-generation Compact Environments (LANCE)としてSHiELDの一部として進められてきた。戦闘機に搭載可能なポッドにすべておさめる装備は同じSHiELDでもSHiELDタレット研究航空効果SHiELD Turret Research in Aero Effects (STRAFE) と、レーザーポッド研究開発 Laser Pod Research & Development (LPRD) として別事業扱いされてきた。
「テスト成功は大きな一歩で指向性エナジー装備と防御策がこれで先に進みます」とAFRL所長空軍少将ウィリアム・クーリーは声明文を発表。「敵ミサイルを光速で撃破する技術で厳しい空域でも航空作戦の展開が可能となります」
ただしテスト内容に不明な点が多い。まず基本条件が不明でレーザー操作員がミサイルの飛来方向等を事前に知っていたのか、高度や飛来のタイミング、天候条件は把握していたのかわからない。空軍は投入したミサイルの種類を明らかにしておらず現実的な脅威対象を模したのだろうか。とはいえレーザーで目標捕捉、追尾、交戦、破壊の一連の作業ができたのはSHiELD開発で大きな一歩だろう。
空軍が複数目標に対応できる装備を導入するということは低出力段階は完了したことになる。2016年時点では空軍は高出力テスト第二段階で代替レーザー発射装置の運用は想定していなかった。ただし大日程が変更となった可能性はある。
空軍は 飛来する空対空ミサイルをSHiELDで撃破したいとする。同時に地対空ミサイル対応も高リスク防空体制の内部での作戦実施には必要だ。空軍は同装備を大型で低速飛行の戦闘機材や支援機材にも応用できるとし、爆撃機、給油機、輸送機のほか高性能レーダー他センサーを用いるミサイルの技術進歩にも対応出来ると見ている。

LOCKHEED MARTIN
An artist's conception of a future fight jet shooting down a threat with a laser.

今回のテストがSHiELDの全体テスト工程でどの部分に相当するかも全く不明だ。AFRLがテストを三段階にわけていたとする2016年の資料を The War Zoneは情報公開法で入手した。
入手資料には検閲部分も多いものの第一段階で低出力地上テスト、低出力飛行テストを代替レーザー装置でおこなうとあり、現在がこの段階と思われる。下に地上発射テストに関する資料を掲載した。ただし空軍は第一段階の飛行テストの詳細説明すべてを検閲で消した。

USAF VIA FOIA

地上テストは予定通りの進展だが、代替レーザー装置による飛行テストはまだ先なのかもしれない。ロッキードと空軍がテストに使う機材も不明だが、同社は改造ダッソー・ファルコン10ビジネスジェットにターレットレーザーを搭載し空中適応型空中視覚ビーム制御Aero-Adaptive, Aero-Optic Beam Control (ABC)に使っていた。
AFRLはABCを国防高等研究プロジェクト庁 (DARPA)とともに進め、この実験で高度焦点合わせ安定化技術の有効性を確認している。AFRLによればこれまでの指向性エナジー兵器開発事業はABCのようにSHiELDにも継承されており、ビーム焦点を自動安定化させる制御能力が必要とされるとしている。
SHiELDでは出力変調であらゆる条件で敵装備を無力化させる効果の実現が必要だ。レーザーの有効範囲と出力はその他指向性エナジー兵器と同様に大気状態に大きく依存し、雲や煙でビームが分断されてしまう。
それを念頭に、SHiELDの第一段階ではレーザー以外に「飛行中にポッドでのビーム制御、出力確保、冷却、システム制御」が重要とロッキード・マーティンの契約内容にあるが、LPRDポッドやSTRAFEタレットの製造メーカーは不明だ。

USAF VIA FOIA

空軍では現時点の主な課題はロッキード・マーティンが代替レーザー装置をどこまで小型化しポッドに収めることだとする。
半導体レーザー技術は大きく進展を示している。ロッキード・マーティンがSHiELD契約交付を受けた2017年当時では同社は60キロワットレーザーを米陸軍の地上配備テスト用に納入していた。同年に陸軍のAH-64アパッチ・ガンシップヘリコプターがレイセオン製の半導体レーザーポッドで目標をホワイトサンズで破壊に成功した。米海軍も独自にレーザー兵器を艦載用に開発し、各軍でのレーザー兵器テストは広く行われている。
さらに空軍はSHiELDの成功にむけ動いている。ポッド搭載レーザー防御装備が軍用機に導入されれば革命的な出来事になる。高温燃焼式のフレアやレーダー波撹乱用のチャフは搭載量が限られるが、レーザー兵器は事実上無限に使えると言って良い。.
とはいえSHiELDに限界がないわけではない。タレット式レーザーでは一度に一つの標的に対応するだけだが大気状況による効果減少リスクがある。今後登場するレーザーミサイル防御システムは機体防御装備の一環としてその他の手段と併用されるはずだ。電子戦ジャマー、曳航式おとり、直撃迎撃体が想定されている。
ではSHiELDや派生装備は視界内空戦で攻撃手段に使えないのか。あるいは対地攻撃にはどうか。防御用ポッドで発射するレーザー兵器は今後の攻撃用装備の基礎にもなりそうだ。
2018年10月、高出力エナジーレーザーや高出力高周波指向性エナジー兵器で「空中からの精密攻撃」ミッションや防御任務をSHiELDと別の提案をAFRLが公募した。また空軍特殊作戦軍団 (AFSOC) は攻撃用レーザーをAC-130ゴーストライダー・ガンシップに2022年までに導入するとしていたが、この日程は先送りになったようだ。

全て予定通りなら空軍はあと二年もすればポッド式 SHiELDシステムの試作型を戦闘機で実証する。今回のホワイトサンズでの最新テストを見ると事業は予定通り進展しており、戦場のあり方を一変しそうな技術が実用化に近づいているようだ。■

コメント

  1. Energyの訳語をわざわざエネルギーではなくエナジーとする理由はなんでしょう?

    学術的にも一般的にもエネルギーで通る訳語です。既に日本語になっていると言ってもいい。

    文句を言う訳ではないですが、理由を教えて頂きたいのですが。

    返信削除
  2. ポッドじゃ、ステルス機には載せられないね。

    返信削除

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