Report to Congress on Current U.S.-Iran Tensions
米イラン緊張状態の現況を米議会に伝える報告書の内容
May 17, 2019 9:56 AM
2019年5月16日付で議会調査部がまとめた米イラン緊張のエスカレーションに関する報告書をお伝えする。
報告書より
米イラン間の緊張がここ数週間で緊張しているのはトランプ政権がイランに「最大限の圧力」をかけるべく施策を実行してきたためでイラン指導部も対応策を発表している。米側の動きにはイラン革命防衛隊(IRGC)の海外テロリスト集団(FTO)への指定、イラン産原油購入国への制裁再開、イラン核開発で認められている部分を援助する国への制裁適用猶予の廃止、イラン産品取引への制裁措置がある。米政府関係者はイランとつながる脅威が米軍及び米国権益に発生する可能性があるため追加軍事力派遣に踏み切ったと説明している。ただし5月16日付け報道ではドナルド・トランプ大統領はエスカレーション回避に外交手段を優先する姿勢だという。
米イラン間の緊張増大に関し議会から追加情報開示を求める声が出ている。議会はより広範な視点で対イラン政策を検討するかイランへの軍事力行使の可能性を検討するだろう。
イランへ圧力をかける政権の動き
イランの経済、行政に圧力を増大すべく政権が示してきた動きを以下列挙する。
- 2019年4月8日、政権はIRGCを外国テロリスト組織(FTO)に指定し、イラン国会はこれに対し在中東の米中央軍(CENTCOM)及び関連部隊をテロリスト集団と指定する法案を可決した。
- 2019年5月2日、政権はイラン原油購入への米制裁の適用例外扱いを終了し、イランの原油輸出を「ゼロ」にするとした。
- 2019年5月3日、政権はイランの自由及び拡散防止法 (IFCA, P.L. 112-239)でJCPOAが認める備蓄上限を超える分のイラン製重水や低濃縮ウラニウムの移動を認めてきた措置を終了した。
- 2019年5月5日、イランが協調勢力に米軍人や装備集積地を襲撃する準備をさせているとの報道を根拠に国家安全保障担当大統領補佐官ジョン・ボルトンからUSSエイブラハム・リンカン空母打撃群の現地派遣を前倒しするとともに爆撃機部隊もペルシア湾岸に展開すると発表があった。
- 5月8日に大統領は大統領令13871を発出し政権が指定するイランの鉄、鉄鋼、アルミ・銅製品の取扱が大きい個人団体の在米資産を凍結すると発表。対象製品はイラン輸出のおよそ1割を占めるが、域内企業が製品大部分の仕向地となっており米制裁措置の適用は容易ではない。
イランは、戦争を望んでいるのだろうか。
返信削除この記事に書かれていないが、2件のサウジアラビアを対象と推定する攻撃があった。1件目は、UAE沖のタンカー攻撃であり、2隻のサウジのタンカーが損傷した。他国の2隻も損傷した。2件目は、サウジを横断するパイプラインの攻撃であり、2カ所で損傷した。
前者は、DNK(ノルウェー戦争保険)によるとイラン革命防衛隊(IRGC)によるものであり、後者は、サウジによるとIRGCの影響下にあるイエメンのフーシ派によるものと考えられている。
いずれも攻撃による損傷の程度は大きなものでなく、脅迫とも考えられるが、危険な行為である。サウジ、あるいは米軍による反撃を招くかもしれない。そうなれば一挙に戦争危機になる。
もう一つ特筆すべきは、ドローンの使用である。船舶の攻撃に水中ドローンが使われたと伝えられており、船尾の損傷位置から音響追尾型のようだ。パイプラインの攻撃は無人攻撃機によるミサイル攻撃であり、攻撃位置がかなり内陸であることから、航続距離の大きな大型の翼竜タイプのドローンが使われたようだ。
追記
削除船舶攻撃の兵器について、米国は機雷を使用したとしている。
そうなると、この機雷は、追尾式機雷であり、中国製のEM-52 ロケット上昇機雷か、そのコピーである可能性がある。イランは、1994年に中国からこの機雷を購入している。以下のpdfの20ページ(本文18ページ)を参照。
http://www.andrewerickson.com/wp-content/uploads/2010/05/China-Maritime-Study-3_Chinese-Mine-Warfare_Erickson-Goldstein-Murray_June-2009_Japanese-Translation.pdf