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★米国でソノブイ生産に黄信号、どうなる西側諸国の防衛産業のこれから



US could lose a key weapon for tracking Chinese and Russian subs

ロシア、中国の潜水艦追尾に必須の装備品が米国に不足する可能性が出てきた


By: Joe Gould and Aaron Mehta    


海軍がロシアや中国の潜水艦対策で頼りにする装備は重量8ポンド全長3フィート足らずで爆発もしない。
それがソノブイで消耗品水中センサーで数百本単位で空中投下し、敵潜水艦探知に使い米国や同盟国がこれまで数十年に渡り必須装備として使ってきた。ペンタゴンは2020年度予算要求で204千本調達するが2018年より5割増となる。
だがその重要装備の前途に危険信号が出ている。敵国による作為ではない。安心して供給を任せられるメーカーがなくなるのだ。
ペンタゴン装備品では供給メーカーが一社になっていく傾向がある。ソノブイでは米国と英国の合弁企業ERAPSCOである。ペンタゴンによればERAPSCOは2024年までに閉鎖され、英米双方の親企業、イリノイのSparton Corp.、ミドルセクスのUltra Electronicsは業務継続に必要な出資をしないのだという。
産業基盤上の「公然の弱点」でペンタゴンは解決策を見つける必要を迫られているとペンタゴンで産業政策を担当していたエリック・チュウニングが述べる。
ドナルド・トランプ大統領は3月に国防生産法に署名し、国内生産でAN/SSQソノブイ5型式を「国防に絶対必要」装備と指定し、運用能力の維持拡大を認める権限をペンタゴンに与えた。空軍は独自にERAPSO以外の供給メーカーを模索している。
ペンタゴンは「ソノブイ5型式生産で個別専用生産ライン」が必要というが、2社は「専用ライン設置には支援を必要としてくるはず」とDoD報道官マイク・アンドリュース中佐が述べている。
「相当の努力と出資が必要なため合弁企業の親企業が独自出資する見込みはなく2024年までに必要となるソノブイ需要に答えられない」とし「DoDが介入する必要がある」と述べた。
対潜哨戒機P-8やMH-60Rシーホーク対潜ヘリコプターで使うマルティスタティック・アクティブ干渉型MACのソノブイの電池は8時間程度使える。移動する潜水艦追尾ではソノブイは投下されてもすぐに意味がなくなる。P-8の場合はソノブイ120個をミッション一回で消費することがある。
「P-8でどれだけの面積を捜索するかにより変わりますし、標的潜水艦の水中速度にも左右されます」と戦略予算評価センターのブライアン・クラークが解説する。「捜索範囲は標的潜水艦への探知能力で変わります。P-8で対潜防衛帯を作る場合はそこまで多くのソノブイは不要です。移動中の静粛航行中の潜水艦が相手となるとソノブイ全部を使いきり、補充のため基地に戻ることになります」
ロシア、中国の潜水艦活動が活発になるなか対潜部隊はますます多忙になっており、ソノブイ在庫を使い切りそうだ。
米海軍のソノブイ調達予算は2018年の174百万ドルが2019年は216百万ドルに増え、2020年要求では264百万ドルになる。ペンタゴンは議会に第六艦隊のソノブイ再調整予算20百万ドルを要求したほか、38百万ドルでソノブイ追加調達を求めている。
ロシア、中国の潜水艦技術の進展でソノブイの重要性は増す一方だと専門家もみている。
「新時代の潜水艦が静粛化されロシア、中国が就航させており、従来どおりの潜水艦や水上艦を使った対潜戦では対抗しにくくなってきた」とクラークはいい、「わが方の艦艇や潜水艦がパッシブソナーの効果を発揮するためには従来より接近する必要があるし、逆にアクティブソナーは有効範囲が小さく発信源を露呈してしまう」
ロシア潜水艦の性能が高く、ロシアは潜水艦部隊の増強を続けていると国際戦略研究所のニック・チャイルズが指摘する。中国潜水艦は「技術面で遅れている」が大規模な支出で水中戦力の増強を図っている。
「当面はロシア潜水艦部隊が一番やっかいな相手でこのまま増強を続ければ米海軍ではソノブイが大量に必要となります」(チャイルズ)
ERAPSCOはソノブイ5型式のうち4つを製造しており、海軍は同社と四年契約で2023年まで確保している。競合状態を刺激しようと海軍はSpartanおよびUltra Electronicsの提携関係解消を求め、ソノブイを各社別々に供給するよう求めている。
だがSpartonは年次営業報告で「相当の企業努力と支出が必要となるためSpartonあるいはERAPSCO合弁企業体の親企業の双方」が海軍の要求に別個に応えられる保証はないと明記している。
Spartonは財務が苦しくなり2017年7月にUltra Electronicsによる買収で合意したもののわずか一年未満で破談となった。米司法省が独占禁止の疑いで成立を拒んだためだ。
SpartonはそこでCerberus Capital Managementに183百万ドルで自らを売却した。Cerberusはニューヨーク市の不良債権買い取り金融業者である。同社はStaples(事務用品メーカー)やSafeway(食料品小売りチェーン)を傘下に収めており、防衛部門でもDynCorpやNavistar Defenseを買収している。
アンドリュース中佐は政府の懸念事項をDefense Newsに伝えている。
「DoD/DoNは年間204千基のソノブイ5型式の購入を予定する。このためDoD/DoNは安定供給体制を必要とする。こうした要求のため、また安定したソノブイ生産の産業基盤のため5型式ソノブイそれぞれで専用生産ラインが必要だ」
「国防生産法第三章事業として米海軍向けソノブイ生産の産業基盤の維持再編を通じソノブイ供給元を最低2社確保したい」とし、「そのためトランプ大統領、DoD、DoNはDPA予算と民間支出分あわせ費用対効果が最優秀で利便性に富みかつ実務的な方法でAN/SSQシリーズのソノブイ性能確保という必須課題に応えていきたい」
国防支出法では国防総省に中核産業ニーズに関係する企業向けに資金提供を認めている。産業基盤検討結果を受けて実現した方策だ。
「われわれがしたかったのは資金投入で産業基盤への支援を確実に示し2社以上の供給元を確保することです」とチュゥニングが産業政策の責任者を務めた立場でDefense Newsに語っている。「現状の不具合を考えれば当然の結果でDPAの権限により製造拡大につながる刺激策を提供できるわけです」
Ultra Electronicsと Spartonは両社共同事業の今後についてコメントを拒否している。
「Ultra Electronicsは米海軍と協力関係を維持しソノブイ生産を継続し将来を見据えた開発も行います。当社は今後もASW関連の要望の増大に応えていきます」との声明が出ている。
米国がソノブイを国外調達するとしたら英国やフランスにもメーカーがあるが、生産はすでに該当国向けで確定しており、そもそもソノブイでは米国が世界最大の供給国なので米国の国内生産が消えればソノブイの世界的供給不足につながりかねない。
チャイルズやクラークも米国内にソノブイメーカーの確保は必須とみており、生産の必要性に加え「重要技術分野で最先端」として残るためにも必要だとチャイルズは見ている。■
David Larter in Washington contributed to this report.

心配になる話ですね。防衛産業といえども民間企業なので株主の利益が最大になる決定をしていくわけですが、国防事業は悩ましい分野なのでしょう。日米とわずこれから防衛事業から抜ける企業が増えれば大変なことです。ソノブイについてはNECもメーカーらしいのですが、性能がイマイチのようでやはり米国製輸入に頼るのが海自の現状らしいです。ということは米海軍が悩めば海自にはもっと大変な事態です。こうした中で政府が民間企業を支援してほしい産業製品を確保する「産業政策」を米国防総省の音頭で進めているのは皮肉にしか聞こえません(米国は日本の産業政策を散々批判し、自由企業体制を標榜していました)が、状況が状況なだけに防衛省も産業政策を今や堂々と進めるべき段階なのではないでしょうか。とかく、戦闘機や潜水艦といった「正面」装備に関心が集まりがちですが、産業基盤といったマクロの視点も必要と痛感します。■

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