A Spy Submarine Like No Other: Come Aboard the USS Jimmy Carter 他に例のないスパイ潜水艦USSジミー・カーターの内幕
March 22, 2019 Topic: Security Blog Brand: The Buzz Tags: SubmarineMilitaryTechnologyWorldSeawolf ClassRussia
2013年1月20日、シーウルフ級攻撃型潜水艦USSジミー・カーターが母港ワシントン州バンゴーを出港し二ヶ月未満で修理のためハワイ州パール・ハーバーに入港した。
すべて謎のままだ。同艦がどこにいたのか、乗員150名がなにをしていのか知る由もない。シーウルフ級は米軍で最も秘匿性が高い装備の一つだ。「サイレントサービス」関連情報は見つけるのが難しい。
ジミー・カーターが何らかのミッションについていたのはあきらかで同艦公式記録ではミッション7とあいまいな記述があるだけだ。「広範囲におよぶ極度に緊張する環境で外部支援のないまま任務を遂行し、今回の任務でUSSジミー・カーターは国家安全保障の目標追求で優秀な実績を再び残した」とある。
公式記述ではわからないが、ミッション7で同艦は大統領感状を得ている。「類まれな英雄的行動を武装敵勢力を前に示した」事が理由と海軍は説明。
シーウルフ級最終艦となったジミー・カーターは独特の存在だ。建造に当たりペンタゴンは特殊モジュール(全長100フィート、2,500トン)を追加した。ここに水中無人機、SEALs等を搭載する。
砂時計の形の同モジュールから特殊訓練を受けた要員が出て海底通信回線を見つけ盗聴装置をとりつける。同艦はペンタゴンのステルス・スパイ艦になった。
ミッション7で大統領感状を受けたことからわかるのはなにか。これは海軍十字章に匹敵し、「極度に困難かつ危険な」任務を達成した証とされる。だが海軍長官は同年中の同艦の活動についてありきたりな描写しかしていない。
秘密のベールに包まれた海中研究開発分遣隊の隊員を乗せたジミー・カーターは「極度に厳しい内容の単独潜水艦作戦を成功裏に実施し国家安全保障上死活的な意味のある成果を遂げた」というのが当時の作戦遂行の表現だ。分遣隊と同艦乗員は「難易度高く複雑な任務を数々の困難を克服して成功させた」とある。
報告書には写真二枚が添付されている。艦長ブライアン・エルコウィッツ中佐が他の士官と感状を手にする様子、同感状の三角旗の写真だ。海軍は各自の顔を黒塗りした。
War Is Boringは情報公開法により今回の文書を入手した。各水上艦、潜水艦、飛行隊、司令部は年次作戦記録のワシントンDCの海軍歴史伝統本部への提出が義務づけられている。ただし内容は個別具体的である必要はない。ジミー・カーターの記録は同艦が秘密に包まれていることをあらためて示している。
海軍は潜水艦について語りたがらずシーウルフ級ではさらに口が堅い。当初は最大の水中戦力艦として建造予定だったが、冷戦終結でソ連のハイテク潜水艦の脅威が消えたと見て建造を大幅縮小した。
30隻建造予定が3隻になり、全長350フィートを超え、潜水時9,100トンのシーウルフ級は単価は30億ドルと史上最高の建造費となった。
海軍はUSSシーウルフ、コネチカット、ジミー・カーターの三艦で潜水艦開発戦隊5を編成した。同隊の簡素なウェブサイトでは新型海中聴音装置や遠隔操作水中機のテストにあたるとだけ記述している。
同隊は北極海での潜水艦戦術開発も担当する。各艦は魚雷発射管8本を維持しハープーン対艦ミサイルやトマホーク巡航ミサイルも発射可能だ。
同隊ウェブサイトでは情報収集任務の記述はない。名称こそ実験とあるが、海軍がこうしたエリート部隊を特殊任務にあてるのは普通のことだ。伝説の域に達したSEALのチームシックスは正式名称は海軍特殊戦開発集団だ。大統領を世界各地に送り届ける海兵隊のヘリコプター飛行隊1は略称をHMX-1とし、やはり「実験」が出自とわかる。
ジミー・カーターのスパイ艦としての実情を知らせるものとして海軍は同艦就航のわずか4ヶ月前に同様に秘密に覆われたUSSパーチェイを退役させていた。パーチェイほど多く受勲した艦はないと海軍は述べ、大統領感状は9回受けている。
1974年にスタージョン級攻撃型潜水艦として完工したパーチェイはソ連通信の盗聴用に改装され、1978年から79年にかけオホーツク海の海底ケーブルを盗聴し、アイヴィボールの作戦名がついた。
「海軍はNSAの助けを借りパーチェイをオホーツクに派遣し録音ポッド二号機を設置し盗聴地点を増やした」とシェリー・ソンタグとストファー・ドリュー共著のBlind Man’s Bluff: The Untold Story of American Submarine Espionage にある。「同艦は誰も言ったことのない危険な海域に派遣された」
オホーツク海での成功で交通量がもっと多い、つまり危険度が高いバレンツ海でのミッションが続いた。ソ連対潜部隊から逃れるべくパーチェイは氷の下から水路に向かった。
1991年に海軍はパーチェイを大修理し新設の潜水艦開発戦隊5に編入した。
同書刊行の段階でジミー・カーターは完成前だったがソンタグ=ドリューは同艦中央部の延長部分はパーチェイと同様の装備を載せるためと説明していた。海軍とNSAが装備を改良したのは間違いない。
ジェネラル・ダイナミクスのエレクトリック・ボート事業部で同艦が建造中の2001年にNSA長官のマイケル・ヘイデン中将はウォール・ストリート・ジャーナルが海底ケーブル盗聴任務をあげたのを一笑した。「ここにすわって推論が間違いと説得するつもりはない」とし、ジミー・カーターの任務内容についてコメントを避けた。
二年後にジャーナル紙が同艦に海底盗聴任務が考えられると再び報道した。同艦はその後10年以上任務をこなしているが同艦の作戦関連の情報はこれ以外に出ていない。
あと10年、あるいはもっと長く待たないと事実は確認できないのか。その場合でも海軍発表よりソンタグ=ドリューの著作物のような資料がないとジミー・カーターの実態、あるいはミッション7の詳細はわからないのではないか。■
This first appeared in WarIsBoring back in early 2016.
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