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ロッキード・マーティンに聞くイージス戦闘システムの現状と今後の姿。どう進化していくのか。中心的装備として各種装備に展開していく。(長文ご注意ください)ここまで全体像を解説する記事はほかにないのでは?

 

US NAVY/COMPOSITE

ージス戦闘システムはギリシア神話のゼウス神の盾から命名され、海軍水上艦艇に革命的変化を実現した。実戦化は40年近く前に始まった。イージスはコンピュータ、センサー、兵装、通信、ヒューマン・インタ―フェイスを組み合わせ高度の自動化を実現し、技術面の勝利となり、以前はSFの世界の性能を現実にした。その後、イージスは大幅に性能を向上し、水上艦艇で周囲の空域海域をコントロールできるようになった。

現在もシステムは威力を維持し、米海軍の主要水上戦闘艦ほぼ全艦に導入され、同盟国も採用しており、今後のさらなる発展が期待される。

今回ロッキード・マーティンで水上艦艇向けミッションシステム部長のリッチ・カラブリーズに取材する機会を得て、イージスの現状がよりよく理解できた。さらに、今後の方向性も聞けた。すべて驚くべき内容だった。

前口上はこれくらいに、インタビューの全体をご覧いただきたい。

タイラー:イージス戦闘システムはUSSタイコンデロガに搭載された40年前からどのくらい進化しているのか。イージスに代わる新しいシステムはあるのか、それともイージスは今後も今の姿のままになるのだろうか。

リッチ:ひとことで答えれば、劇的な変化だ。理解している人は少ないが、イージスの構成は一貫して進化している。機能上で大きな節目があったが、イージスの構成に機能を追加し、性能が向上し、形態が機能に追随し、構造が変わっていった。技術の進展もあった。

USN

USSノートンサウンドは水上機母艦だったが、イージス試験艦に改装され1973年から各種試験に強要された。AN/SPY-1Aが艦橋に設置されている。イージス開発は1960年代に始まり、1980年代初頭に実用化された。

 

イージスの出発点までさかのぼると、当時はCMS-2コンピュータ言語というアセンブリー言語で書いていたが、COTS言語の登場でC++、JAVAを導入し、今は各種スクリプト言語で作成している。イージス・ウェポンシステムでは処理能力も含め、すべての点で劇的な変化が40年間で生まれた。

イージス・ウェポンシステムの名前こそ同じだが、内部に大きな変化があり、ソフトウェアをモジュラー化し柔軟な構成にした他、新機能、新兵器、センサーを統合している。

今後を見通せば、情報ソース、データソースを活用し、システムの作動および構成を抜本的に変化させる。

USN

初の実用イージス搭載艦となった巡洋艦USSタイコンデロガ(CG-47)がスタンダードIIミサイルの発射を準備している。1983年4月9日。

 

タイラー:基本的に同じでも同時に全く違うシステムだという点は理解されていないと思う。時が流れ同じコンセプトでも違いが大きくなり、40年前から大きく近代化されているという理解で正しいかな。

リッチ:そうだね、それで正しい。ちゃんと理解している人は多くない。もうひとつ、コモン・ソース・ライブリーのことは知っているかな。この用語を聞いて思いつく点はないかな。

タイラー:思いつかないね。

リッチ:実力を発揮できるのはコモン・ソース・ライブリーCSLがあるからこそなんだ。CSLの役割は共通コンピュータプログラムでイージス・コンピュータプログラムをもとに水上艦多数をサポートすることにある。水上艦艇はLCS、新型フリゲートのコンステレーション級を含め、沿岸警備隊、イージス巡洋艦・駆逐艦、各国向け事業も含め全部イージスのコモン・ソース・ライブリー上に構築している。

LOCKHEED MARTIN

イージスほか関連装備の中心がCSLだ。

 

構造には柔軟性をもたせてあり、ロッキード・マーティンはツールや知見を発揮して、納入している。ミッション別にコンピュータプログラムを特定化しているといってよい。ミッションは多様で、沿岸警備隊の警備艦では麻薬流入の取り締まりが主だが、イージス駆逐艦では統合防空体制というハイエンドとなり、その中間がLCSのような艦と、ミッションや機能面の幅が広く、センサーの種類も異なる。すべてをCSLの形で同じイージスコンピュータプログラムで動かしている。

USN

フリーダム級LCSもCSLを利用しているが、任務内容に特化する形に編集している。

 

この形で機能を提供するように変更した意味は大きい。特定機能に焦点をあわせつつ、機能をつけたりはずしたりしている。このため、あとになって、機能が欲しくなった国でもCSLが組み込み済みなので、スイッチを入れるだけでその機能を有効にできる。ただし、必要なセンサーや兵装が艦に導入済みになっていることが条件だ。

タイラー:興味深いね。自動車業界のトレンドにも重なる。標準ソフトを搭載したままで、スイッチを入れれば機能が有効になるのと同じだね。そうなると、ソフトウェアが今は最大のハードルとなるわけか。

イージスのベースライン9で弾道ミサイル防衛と空気吸い込み式の脅威対象へ対応が有効となったね。巡航ミサイルや航空機とか。この点について話してもらえないかな。実現に際し何が課題だったのか、導入した水上艦艇で画期的な効果が生まれるのだろうか。

リッチ:うん、画期的な要素は艦艇でAAW機能または弾道ミサイル対応性能が統合防空ミサイル防衛体制の前に生まれたことだね。これまで長年に渡りコンピュータプログラムを別々に作成してきたが、状況に応じプログラムを使い分けできるようになった。統合防空ミサイル迎撃体制の導入で両方のミッションが実行可能になった。

USN

従来はイージス艦は防空戦あるいは弾道ミサイル迎撃を同時に実施できなかった。

 

アーキテクチャの最大の推進役はミッション・プランナーで、艦の位置に応じ最適な装備の投入が可能となる。ミッション、優先事項、その他を考慮し、レーダー資源をどう配分してミッションを達成するかを決めてくれる。この波及効果がシステム全体に広がり、信号処理、火器管制も決まる。だが最大の効果は各種機能の実行を同時実施できるようになったことだ。

イージス・ウェポンシステムの各機能では統合防空ミサイル防衛の実現で必要となる変更点を評価し、ここでもミッション・プランナーが鍵となる。リアルタイムの対応がこれからも変化していくミッションで実現できるようにしている。

タイラー:もし、今CIC(艦の神経中心というべき中央情報センター)にいて、弾道ミサイルの脅威を探知、との報告が入れば、わかっている情報から作戦を組み立てるのが大事になるね。ミッション・プランナーでこうした場合に柔軟な対応が可能になるのか。

リッチ:そうだね、作戦区域、現在地点の地理条件、脅威内容がわかるので、システムを微調整して一番可能性が高いシナリオへの対応が準備することになる。

USN

USSノーマンディ(CG-60)のCIC内部。

 

タイラー:そこにAESA、SPY-6レーダー、イージスベイスライン10仕様が登場する。海軍にどんな効果が生まれるのか。今後登場するフライトIII仕様のアーレイ・バーク級駆逐艦に搭載されるが、同時に供用中のフライトII艦一部にも導入される可能性がある。センサーのアップグレードやベイスライン10はイージスシステムの進化にどんな意味があるのか。

リッチ:レーダーの専門家ではないけど、まずレーダーで比較すると性能だ。どこまで探知できて、どこまで判別できるかだ。性能は上がるので判断時間で余裕が生まれる。脅威の高まりに応じ、必要な効果なのは当然だが、任務に適化したレーダーで戦闘システムが進化していく点で違いが生まれる。

GAO/NAVY

フライトIII仕様のアーレイ・バーク級駆逐艦にSPY-6レーダーが搭載される。

 

ベイスライン10では任務特化型レーダーに任務内容を伝え、どう作動すべきか指示する機能を導入する。レーダーはそのとおりに機能して戦闘システムに貢献する。この意味は大きい。もう一つ、各種センサーとの統合だ。水上センサー・コーディネーターの導入で、艦の資源配分を決め、センサー作動を微調整し環境に合わせ、脅威対象、地理条件に対応する。

そこにSPY-6導入の意味があり、任務特化型レーダー性能を実現し、性能と精度が向上し、戦闘システムも任務特化型レーダーを駆使できるようになる。ただ、同時にセンサーで得られるデータソースを戦闘システムで活用することがアーキテクチャ上の次の課題になった。

RAYTHEON

SPY-6 レーダー。 

 

任務特化型でないレーダーをベイスライン9搭載艦で使うコモン・ソース・ライブリーに戻すようにした。これをCSL一貫性と呼ぶ方向にもっていく。これはベイスライン9とフライトIII艦全体の機能水準をひとつにまとめることで、フライトII艦、フライトIII艦のアーキテクチャを統一することになる。ただし、レーダーの違いで機能や性能で違いが生まれる。DDG搭載のSPY-6は後付け搭載のSPY-6と異なり、より小型で回転式になる可能性もある。レーダー改修ではこれと別に旧型レーダーでも半導体レーダー並の性能の実現を目指している。旧式SPY-1でもSPY-6並になるということだ。

タイラー:イージスに赤外線探知システムのような新型センサーは統合されないのか。指向性エナジーのような新型兵装はどうか。システムの今後の姿を聞きたい。

リッチ:ここも手短に言えば、すべてだ。一貫して複合装備の統合融合機能をイージス・ウェポンシステムで実現しようとしており、新型兵装やセンサーに注目し、ハードキル、ソフトキルの調整をめざしている。ヘリオス・レーザーウェポンシステムにイージス・ウェポンシステムのCSLを統合する実験をニュージャージーで行っており、レーザー担当からはイージス・ウェポンシステムのコンピュータプログラムでレーザー試射に成功したと聞いている。兵装調整の機能を作り上げれば、ハードキルになる。ソフトキルでも自動化を目指し、ヘリオス・ウェポンシステムと連携している。

LOCKHEED MARTIN

「トウモロコシ畑の巡洋艦」USSランコカスはニュージャージーに設置されたイージス実験施設だ。 

 

同様にEW(電子戦)でもSEWIPやあらゆるデータソースがあり、艦のC4I(指揮・統制・通信・コンピュータ処理・情報)あるいはC6I、S6ISRといっても良いけど、これまでは壁があり、C4システムにデータソースが残ったまま、イージス・ウェポンシステムはSPYレーダーだけで運用していた。現在はデータすべての融合で状況判断水準の刷新をめざしており、どんな形のデータでも活用できるようにする。

タイラー:自動化が高度になれば艦内で兵装の投入が効率良く行えるようになり、標的の識別も簡単になれば、交戦の効果も上がるね。各種兵装の融合が目標なんだよね。

リッチ:そのとおり。水上センサー・コーディネーターにより目標の識別、設定、更に追尾が自動化されれば、兵装とセンサーの有効活用につながる。あらゆるセンサーを投入しなくても良い。別のセンサーで同じ情報が入手できるからだ。レーダーも全部使用しなくて良い。SPQ-9があればミッションに必要なデータは手に入る。

LOCKHEED MARTIN

イージスは六か国の海軍部隊で供用中だ。

 

タイラー:発展型シースパローミサイルのブロック2とSM-6をネットワーク化し、レーダー照射なしでもミサイルの最終飛翔段階での迎撃が可能になったが、システムはこれからどう変わっていくのか。単純化が可能になり、米海軍のイージス搭載駆逐艦や巡洋艦で標的へ照射は不要になるのだろうか。

リッチ:そうだね、ミッションごとに見ていけば、「打ちっぱなし」ミサイルがどこまで信頼できるかの話になるね。標的へ照射が不要になればミサイル対応が楽になるし、タイコンデロガ級巡洋艦では照射装備が4基、アーレイ・バーク級では3基と限定があるからね。ここでも火器管制のアーキテクチャが重要で、スマート兵器が最適対応を可能としてくれる。この自動化効果はイージス・ウェポンシステムに組み入れてある。

兵装の選択、組み合わせができ、今使用可能な兵装も把握できる。打ちっぱなしミサイルで柔軟度が生まれるが、やはり結局はミッション、標的、時間要素を正しく理解することだ。

タイラー:自動化はどこまで可能になるのだろうか。指揮命令所にいれば、システムが最適な選択を提案してくれるのだろうか。どのように作動するのだろうか。

リッチ:面白い質問だね。実はイージスは誕生当時から理論上は完全自律型で作られており、どこまで信頼するかの問題なんだ。このため、今の改良点はシステムが提示する内容の信頼度が高くなるようにアルゴリズムを投入し、決定を可能にするよう目指しているとところだ。システムの決定については確率や合理性についても説明できるけど、行動計画が急速展開する中では、水上センサーコーディネーター他の搭載を進め、自動化範囲を広げたい。乗組員に時間の余裕はないからね。

現場では状況は乗組員にもわかっており、背景事情も理解しているので、正しい判断を下せるはずだ。そのため情報を活用する。だが自動化へ依存度を高める必要があり、システムの一部に組み込まれることになる。実はこれはイージス・ウェポンシステムの当初からある話だ。データ融合で情報量が増えると、兵装の選択肢が増える。このため環境は複雑になる。一方で脅威も強力になっており、自動化に頼る度合いが増え、意思決定の補助手段が登場する。センサーリソースのバランス取りや攻撃兵器を標的に合わせた組み合わせにするとかがミッションの成功に不可欠となる。

タイラー:ペイスライン10仕様が登場し、既成艦に搭載されるとどんな姿になるのか。アップデートの内容はハードウェア全体を交換しソフトウェアを更新するのか。あるいはソフトウェア移植が中心となるのか。

リッチ:すべて各艦の状況次第だね。ベイスライン9ではTI-12HやTI-16といったハードウェアを撤去した。これは処理能力の問題で、旧世代になってしまったからだ。

ベイスライン9搭載艦で後期ハードウェアを作動させる場合はソフトウェア更新が中心となる。ベイスライン10が完成すれば、ベイスライン9と交代させる。当然ながら、センサー兵装をすべてそのまま使うことにならない。そのため、一部で性能が変わるが、機能面では同じで、ベイスライン9、10搭載艦で共通性をもたせる。

最新仕様にアップデートされていない艦では、旧式装置を取り外し、新型コンピュータ能力やTI-16ハードウェアに交代させる。旧式ハードウェアの撤去は大仕事で時間費用ともに相当の規模になるんだ。

ただ、現時点で当社が旧式艦に提供しているのは「仮想化」イージス・ウェポンシステムで、ハードウェア面の必要条件は小さい。

USN

イージス艦はネットワーク接続し、戦闘チームとして機能する想定で作られた。 

 

そこで当面はベイスライン5仕様艦に注目する。BMDとしては初期性能の艦で処理系装備は搭載しているものの、技術面で更新が必要な艦だ。更新で処理環境が変わり、追加演算能力が生まれるが、仮想イージス・ウェポンシステムで演算装備の小型化に成功したので、ベイスライン9やベイスライン10の設計思想をベイスライン5艦に応用し追加ハードウェアなしに実現するという、これまでの近代化と違う方向に進める。

タイラー:仮想化の実態は何なのか。イージスでどう定義するのかな。

リッチ:仮想化の意味は仮想マシンの導入だよ。仮想マシンは処理系機器のソフトウェアと思ってもらいたい。ハードウェアというと金属筐体を想像すると思うけど、仮想マシンはコンピュータプログラムであり、日頃使っているコンピュータと同じ存在なんだ。

そこで、TI-16ラックのハードウェアを作動させたら、ブレイドサーバーがあれば、フィジカルのブレイドサーバーでなくてもいいんだ。というのはサーバー内にTI-16ブレイドサーバーを10個仮想的に作るからだ。そこでイージス・ウェポンシステムを全部稼働させてもコンピューターシステムは遥かに小型化しつつ、現在の処理能力のレベルを活用できる。金属筐体に話を戻すと市販の仮想マシン、もともとのイージス・ウェポンシステムのコンピュータプログラムとオペレーティンすシステムその他を収納することになるんだ。

USN

イージス艦のCICIは技術の進歩で変化してきたが、共通するのはSF映画のような雰囲気だ。小型化しつつ処理能力が向上したため設置場所をとらなくなった。写真はタイコンデロガ級巡洋艦の初期の姿。 

USN

これが巡洋艦USSノーマンディのCICの貴重な写真。共通性もあるが、以前より高性能技術が導入されているのがわかる。

こうした動きの一方で、イージス・ウェポンシステムを小型艦に搭載したいとか、陸上配備仕様にする動きがあるが、当社はヴァリアントシールドValiant Shieldのような試行を大幅に進めている。ヴァリアントシールドはコンピュータプログラムで、仮想化イージス・ウェポンシステムを搭載した小さな箱で、全く同じ機能を発揮するが、搭載機器の収納スペースは不要となる。

タイラー:つまり、コンピュータハードウェアの小型化で前提が変わるのかな、大型ハードウェアの調整は不要となり、旧型艦でも最新のイージス機能が実現するのかな。

リッチ:そうだね、その作業は不要になる。対象艦艇全部を見たわけではないけど、旧式装備は撤去して小さな箱の中に仮想イージス・ウェポンシステムを入れるのは可能だ。古いインターフェイスでは新形ネットワークとの互換性がネックになるし、処理能力の向上や仮想化が難しい場合もあるので簡単ではないけどね。.

タイラー:今後の話では極超音速ミサイル防衛や無人装備の統制などシステムはどう変わっていくのかな。無人装備自身が独自のウェポンシステムを搭載しており、何らかの統制が必要になるのでは。この二点で今後どうなって、イージスとの接点はどうなるのか。

リッチ:LUSVつまり大型無人水上艦艇向けの作業は始まっているよ。その制御システムをUOC無人作戦センターと呼んでおり、全体機能の定義に取り掛かっている。これはイージスや今後登場するフリゲート艦にも搭載される。また、LUSV自体にもコモン・ソース・ライブラリーを導入する。そうなると別の場所のイージス・ウェポンシステムのようなコンピュータプログラムで無人艦の兵装管理を実行する、とか制御装置としてイージスのCSLのような形で制御することもありうる。

USN

技術実証艇シーハンターSea Hunter は「ゴーストフリート」構想実現に向けた重要な役割を果たしており、ペンタゴンの戦略機能実現室が協力しながら、各種無人艦艇の投入を目指す。運用には遠隔操作が必要となり、イージスがこの基盤となる可能性がある。

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コモン・ソース・ライブラリーをファミリー展開した相互通信が出発点となる。構想はすでに動いており設計の初期段階だ。LUSVの艦体と戦闘システムの構築は別でコモン・ソース・ライブラリーのコンピュータープログラムをネットワーク化したファミリー構成になるのではないか。

敵側の脅威も一貫して強化されている。そこでイージス能力迅速整備Aegis Speed To Capability (ASTOC)と呼び、現実のギャップから、今後あり得るギャップを想定して従来より早く戦力を実現していく。ASTOCの例として極超音速兵器の追尾能力があり、極超音速兵器との交戦能力の実現を目指している。先を見通した対応に集中しているんだけど、現時点ではあまりお話できない....

一つ言えるのは、イージスが対応する脅威評価作業を政府と継続していくことだ。政府が脅威を定義する。政府が優先事項を決める。当社はその情報を社内の研究開発部門と共有し、政府と連携してアーキテクチャの改良点を提言する。イージス・ウェポンシステムの設計面のサポートも目指し、想定される脅威にどこまで対応できるかを示す。情報収集から評価までの一貫した作業を続けて、イージス・ウェポンシステムを脅威に対抗できるよう維持していく。

USN

 ゴーストフリートの試験艦が昨年9月にフェイズ1を完了した。民間の高速補給艇を無人水上艦艇(USV)に改装しオーヴァーロードテストに投入した。米海軍はこれを通じ今後のUSV運用に備える

 

タイラー:協調型交戦能力Cooperative Engagement Capability (CEC)やネットワーク砲運用を各種装備で行うのはイージスシステムが中心になるでは。将来のイージスはどんな姿になるだろうか。

リッチ:進化が進むだらおう。CECは特化したため制約もある。今想定しているのは通信の枠をうちやぶることでCECだけに依存する通信ではなく、利用できるソースを活用してネットワークの結節点を作ることだ。

目指している究極の姿はCSL全体でイージスだが、イージスというときはLCSやフリゲートも含む。また当社が艦艇自衛システムShip Self-Defense System, the SSDSの受注に成功したことをご存知だろう。戦闘システムを空母や揚陸艦にも展開する。各艦艇共通の内容として、CECに通じるものがあるが、通信経路は別に確保する。

USN

米海軍が目指すのは戦闘場面で各装備をネットワーク化し、攻撃力やセンサー能力を分散化させることだ。そこでイージスが重要な存在となる。

 

NIFC-CA(海軍統合火器管制防空能力)が例だ。NIFC-CAでは通信経路を別に確保して交戦に活用するんだ。

タイラー:駆逐艦や巡洋艦あるいは150マイル離れた地点にいるF-35で敵を撃破したいときに、敵の姿が見えないときはF-35のセンサーをネットワーク接続して兵装の投入を決めるということか。そのアーキテクチュアはどうなるのか。

リッチ:F-35の統合はすでに実施済みだ。実証実験している。アーキテクチャの構成部品はできている。F-35発のデータを受信し、兵装管制し交戦に活用できるようになる。F-35を目として使い、データを得ることになる。艦上のデータ融合機能はすごいものになる。データを活用できれば、打ちっぱなしミサイルの話に戻るけど、F-35をネットワークに組み込んで戦闘空間を拡大し、イージスの構成部品やイージスの結節点を使い、共有できることになる。

タイラー:よく耳にする「イージス・ライト」は公式にCOMBATTS-21と呼称されており、新型フリゲート艦FFG-Xに搭載されるが、同じバージョンがLCSやほかの艦にも搭載されるよね。イージスとCOMBATTS-21の違いはどこなのか。

リッチ:LCSとイージス艦で機能をどう差別化するかの問題だ。ここでもCOMBATSS-21はコモン・ソース・ライブラリーの応用のひとつなんだ。フリゲートで一部にLCSの戦闘システムの発展型とみる人がいるけど、今はフリゲート・イージス・ウェポンシステムと呼んでおり、フリゲートにイージス艦に近い機能をもたせようとしており、LCSとは方向が違ってくる。

USN

FFG(X)と呼ばれてきたコンステレーション級誘導ミサイルフリゲート艦の想像図。

 

大きな違いは兵装だ。LCSは単純な構成で、イージス艦のような兵装の活用は必要ない。COMBATSS-21では、C&Dつまりコマンドと意思決定の要素、ADSつまりイージス・ディスプレイシステム、ACIつまりイージス・コンピューティング・インフラストラクチャアがある。この三つもLCSに搭載され、TRS-3Dあるいは4DのレーダーもLCSに搭載され、砲とRAMミサイルを管制する。

共通しているのはイージスシステム上と同じになることだ。イージス艦ではSPYコンピュータプログラムがあり、兵装管制システムがある。兵装もセンサーも強力だ。そこでこうした機能を追加すれば、共通部分が生まれる。LCSにもイージスの中核部分が見られる。レベルがCOMBATSS-21になるだけだ。そこで追加機能がLCSで必要となれば、COMBATSS-21搭載艦との差別化が生まれ、これもイージス艦と呼んでよい。

USN

沿岸警備隊のカッターとフライトIIのアーレイ・バーク級駆逐艦はCSLを利用する戦闘システムで共通しており、ともにイージスの系譜だ

 

タイラー:将来の大型水上戦闘艦構想にイージスシステムも搭載されるのだろうか。CSLは別の扱いになるのか。

リッチ:そうだね、活躍の舞台は当社から見れば大きな規模ではない。ソフトウェアの観点からは。そのため重視していない。海軍の構想はCSLを発展させ将来の艦艇で戦闘システムに使うことで、海軍は統合戦闘システムと呼んでおり、将来の大型水上戦闘艦を想定しているんだろう。

進化は続いており、今取り掛かっているのはコンポーネント化し、さらに迅速に艦上搭載が実現するアーキテクチャアだ。今ある機能をすべて継続統合と呼ぶ工程に放り込んで、新機能を迅速に実現する意味で、小幅改修で艦艇に導入することなんだ。

今のベイスラインは大規模すぎて構想から実証まで何年もかかる。今後登場する大型水上戦闘艦や統合戦闘システムでは機能を部分に分けて迅速導入を可能とする。ASTOCs(イージス迅速能力実現)の話題は先に話したよね。

USN

海軍は戦闘艦の隻数増加に躍起となっている。無人艦艇が重要となる一方で、CSL搭載の従来型水上艦の増強が急務だ。

 

すべての作業は統合戦闘システムの目標達成に向けられ、大型水上戦闘艦の目標も達成するほか、LUSVやUSVでも同様だし、その他装備品の目標も実現する。第一線にこれまでより早く必要な機能を届けることを念頭に、設計期間、統合回数、引き渡しをDevSecOpsパイプラインの形で実現していく。これにより、進化は継続していく。イージス・ウェポンシステムにはパイプラインとして継続作業中の要素があり、当社は海軍と歩調を合わせ実現をめざしているんだ。

タイラー:DDG-1000の一隻については別のシステムになるのかな。たしか残りは一隻しかないが...

リッチ:DDG-1000は異色の艦だね。仮想イージス・ウェポンシステムをDDG-1000に移植する構想はある。SPYレーダーをDDG-1000へ後付け搭載する検討をしている。海軍が合意すればすぐ実施できる。とはいえ、やはり異例の艦種だ。CSLではないし、SSDSはCSLでもない。ただ、今はSSDSをフリゲート艦とイージス艦に搭載しようとしており、将来的には横展開できそうだ。

DDG-1001 FACEBOOK PAGE

USSマイケル・マンソー含みズムワルト級駆逐艦は三隻ある 


空母で成果が生まれればイージス艦にも応用できる。フリゲートのSSDSで成果が生まれれば、すごいことになる。各種プログラムを取り揃えており、シナジー効果を水上艦部隊全体に応用できるだろう。DDG-1000では共用性をさらに引き上げる機会を期待している。今は単独仕様の戦闘システムでもシナジー効果が各種プログラムにあらわれるからだ。

くりかえすが、SSDSはコモン・ソース・ライブラリーの一部ではない。ただ、戦闘システムのファミリーの一部として当社が実現をめざしている。そこで、個別の知見を共有する機会が生まれ、要求仕様、設計、さらにコンピューターソフトウェアも共有できそうだ。

タイラー:そのほか付け加えたいことはないかな。

リッチ:言いたいのは今のイージスはひと昔前と違う存在になっていることだ。今のイージスは各種艦艇の中心装備で、コモン・ソース・ライブリーの内容を共有し、今後も進化させて新しい脅威に対応させる。同時に装備品の提供方法も変え、充実した性能を迅速に提供していくためDevSecOpsパイプラインを活用し、実際にこれを実施している。ベイスライン10、ベイスライン9両方の実力を実証中で、小幅改良にして従来より早く実現させていく。

リッチ・カラブリースと広報担当のメリッサ・チャドウィックには今回の詳細な取材に対応してもらい感謝の念を伝えたい

 

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  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...