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イスラエル空軍は米空軍の余剰F-15取得を期待。これまでもF-15バズとしてイスラエル仕様に強化改修した実績がある技術力の高さが背景に。F-35取得とあわせ、中東での航空戦力優越を狙う。

 本日(3月16日)は東京で日米外交防衛トップ会談があり、日本側はF-15JSIの価格急騰を話題にするとの報道があります。まさかEX導入に急遽切り替わるような大幅な方向転換はないと思いますが、イスラエル並みの技術力(あわせて意思の強さ)がないと、足元をみられてしますね。

Israeli Air Force exercise "Blue Flag"SARA LEMEL/PICTURE-ALLIANCE/DPA/

 

5世代戦闘機のみ調達するはずだった米空軍はF-15EX導入で方針変更した。新型イーグル配備の影響は今後長く続き、米空軍以外にも現れそうだ。

一つ考えられるのがイスラエル空軍IAFで、米国が提供する大型商談で高性能版F-15とともにF-35追加導入に動くものと見られていた。F-15EXにイスラエルは今の所音無しの構えで、F-35追加導入は発表があったが、新型F-15に全く言及がない。

イスラエルはF-15A/B/C/D各型『バズ』Bazを自国仕様にあわせ改修しているが、同機がIAFに登場したほぼ50年前が出発点だ。イスラエルは当初『対地攻撃能力皆無』のイーグルを長距離攻撃機材に変え、機体一体型燃料タンクも導入した。これはF-15Eストライクイーグルの登場前の話だ。さらに「イスラエル化」され、バズ2000改修は大幅なものになった。現在も真の多任務戦闘機として供用中で、米・イスラエル製兵装を搭載し長距離攻撃が可能だ。複座B/D型を特にIAFが重宝するのはネットワークや衛星通信中継機として指揮統制機能を強化しているからだ。

USAF

F-15バズ

 

米空軍の余剰F-15はイスラエルに流れ、バズ機材となっている。最近もF-15Dの余剰機材がIAFに渡り、対イラン戦で極めて重要な機材になる期待が高い。

受領した機材はD型でも最古のものだが、IAFはダビデの星マークに塗り替えただけではない。まず、慎重に分解して大幅改修を施してから再組立てした。その後、損耗機材のかわりに配備されている。

IAF

初期導入のF-15Dはイスラエルにより徹底的に手を加えられている。

 

ではIAFが新造F-15を導入する、導入しない話がどうからむのか。USAFが144機のF-15EX導入を発表したのは、旧型C/D機材の更新用とされたが、旧型機は合計210機ある。そのうち、178機はゴールデンイーグル・ロードマップで今後も供用を続ける予定だった。その中で最古参機には主翼交換が2020年代末までに必要とされ、多大な費用がかかるとされていた。こうした機材の主任務は本土防衛とならび極超音速ミサイル運用の想定で、空軍は結局旧型機の改修よりも新規製造のF-15EX導入に方針を変えた。

 

USAF

改修型F-15Dバズ

 

F-15X構想が突如登場したことで、200機以上ある後期製造分のF-15C/DをUSAFが余剰機材に区分する見込みが現実のものとなった。F-15EX調達が進めば、空軍で不要となるF-15が出現する可能性が高い。F-15Dの最後の機体がイスラエルに無償移譲されれば非常に魅力的な話になる。新規製造F-15EXの機体単価が80-90百万ドルになり、製造まで時間がかかることを考えればなおさらだ。

ストライクイーグルが原型のF-15Iがイスラエルに25機あり、現状ではイスラエル航空戦力の中心的存在だ。そこにF-35と新型スタンドオフミサイルが導入されれば、あえて第4世代戦闘機の新規製造機体に重点をおかなくてもよくなる。必要なのは兵装運搬手段でありネットワーク機能を充実した機体でイスラエルの求める仕様に特化し、国内装備品を搭載した機体だ。必要な追加F-15の8割を2割のコストで実現できれば、抵抗するのはが極めて困難だ。

USAF

イスラエルはストライクイーグルをF-15Iとして25機運用中。 

 

同様に改修を加えるF-35Iは攻撃任務に適化して、航空作戦の初期段階で敵防空能力が高い状態での活躍を期待される。F-15は後衛につき、長距離戦術支援機材あるいは兵装トラックとして、スタンドオフ兵器を運用し、ネットワーク指揮統制機能を発揮することで、F-35I含む僚機に機能を発揮させる。しかも非常に魅力的な機体価格でこれが実現する。ここにF-15C/Dの伝説的とも言える空対空対応能力が加わる。有人機・無人機の並行運用も「忠実なるウィングマン」の登場で現実のものになりつつある。複座F-15Dを改修すればこの任務にも理想的となろう。

更に大きな可能性がある。イスラエルは後期生産型のF-15Cを単座バズ部隊に導入する構想も練っている。USAFのF-15Cでは多くがAN/APG-63(V)3アクティブ電子スキャンアレイ方式(AESA)レーダーを搭載し、最強の空対空戦闘機用レーダーとなっている。改修費用は米空軍が負担済みで、そのまま引き渡されそうだ。

AUTHOR/TYLER ROGOWAY

米空軍142戦闘航空団のF-15Cに新たに搭載されたAN/APG-63V3 レーダー

 

とはいえIAFにF-15EX導入の可能性がないわけではない。20年前のF-15I導入と同じ話だ。同型機導入構想に有利な条件もある。なんといっても新規製造機材の信頼性・高寿命に対抗できる選択肢は他にない。またF-15EXの性能水準も否定しがたい。それでも、F-15バズ改修でUSAF提供の最古参D型機を再生するのに成功しており、イスラエルはF-15EXの高性能なみの水準を想定しているのではないか。現状のF-15A-Dバズが50-55機、F-15Iラアムが25機あるところにF-15を追加導入し、さらにF-35も追加導入しても両立は可能だろう。

USAFは現行の「制空任務イーグル」全機を用途廃止しF-15EX導入を進めるようだ。これでIAFに夢だった事態が現実になる。バズ改修で第4世代重戦闘機のニーズが満たされ、十分な数の機材が低価格で入手できれば、IAFがF-15EXを真剣に導入する必要はなくなる。とりあえず、今回は。■

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Israel Could Be Waiting For Surplus US Air Force F-15s Instead Of Buying New Advanced Eagles


米空軍がF-15EX導入を進める中、イスラエル空軍は余剰機材を入手する機会を待つ

BY TYLER ROGOWAY MARCH 13, 2021


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