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弾道ミサイル整備で中国侵攻への抑止効果を狙う台湾の動向は日本にも大いに参考となる。ミサイル整備が専守防衛に反するというのは大きな間違いではないか。

 

 

 

湾が中国との大規模交戦で勝利する事態は考えにくい。台湾は防衛に注力している。台湾の抑止力で鍵となるのがミサイルだ。

 

台湾の安全保障では中国がトップ懸念事項であり、台湾は中国との緊張の中で綱渡りしつつ、頼りになる兵装の性能で自国の安全を確保している。

 

これまで台湾のミサイル装備は防衛を主眼としてきたが、ミサイル技術の進歩で中国本土奥深くも射程に収めるミサイルが登場しており、精度も従来より格段に向上している。

 

優風Hsiung Feng III

優風のミサイルファミリーで最新の装備が優風IIIで中国艦船の性能向上に対抗し1994年に台湾が開発開始したミサイルだ。

 

優風IIIは超音速ミサイルで固体燃料ブースターと、液体燃料のラムジェットで超音速飛翔を実現した。対艦ミサイルとして生まれ、射程距離は推定150キロ。台湾は核保有国ではないので、通常型の高性能火薬あるいは装甲貫徹型弾頭を搭載する。

 

優風IIIの爆発装置は他と違い、「ミサイルが艦艇に突入するとスマート信管で爆発の威力を最大限伝え、被害を最大化する」のだという。

 

優風IIE 

 

優風ファミリーでIIE型は全く違う形のミサイルだ。専門家によれば優風IIEの射程は600キロで、「優風巡航ミサイルで唯一対地攻撃に特化している」という。

 

優風IIEも固体燃料ブースターと液体燃料ターボジェットを併用する。命中精度は15メートルCEPといわれ、50パーセントの確率で標的から15メートル以内に命中する。同様に準鋼鉄貫通型高性能火薬あるいは破砕型弾頭を搭載する。

 

初の対地攻撃能力が実現したため、台湾が目指していたF-15C/D型66機購入交渉が難航したともいわれる。

 

雲峰Yun Feng

雲峰ミサイルは現在開発中で、その他の台湾ミサイル装備と一線を画すのは、構想段階から対地攻撃を想定し、中国本土内部も射程に入れる。当然ながら公表されている内容はごくわずかだ。

 

優風、IIEと同様に雲峰も準鋼鉄貫通用の高性能火薬あるいは破砕型弾頭を装着し、1,200キロから2,000キロの射程があるといわれる。

 

台湾の保有するミサイル装備は大半が短距離対応かつ防衛的な機能を想定している。台湾は中国本土から180キロしか離れておらず、台湾のミサイルは大きく対艦ミサイルと短距離弾道ミサイルの二種類に分類される。台湾が保有するミサイルで中国沿岸部まで到達できるのは萬剣Wan Chienと優風IIEの二種類しかなく、それぞれ240キロ、600キロの射程がある。

 

元々こうした短距離ミサイルは台湾海峡をやってくる中国部隊の撃退を唯一の目標に開発された経緯がある。また米製ミサイルも保有し、TOWおよびジャベリン対戦車ミサイル、ヘルファイヤ地対空ミサイルの実力に期待する。

 

その中で中国を刺激しないよう密かに開発されたのが雲峰だ。

 

同ミサイルで判明している内容は皆無に近い。開発は2012年ごろはじまり、台湾国民は27百万ドルを負担したといわれる。

 

同ミサイルは対地ミサイルで500ポンドの通常弾頭付きで、超音速飛翔が可能だという点のみ判明している。

 

抑止力としてのミサイル

 

台湾は中国との決戦は避け、防衛力の整備を念頭に進めている。台湾の目的は中国に勝利を収めることではなく、戦勝条件のハードルを上げることで武力衝突が現実にならないようにすることにある。台湾のミサイル装備の整備はこの目標達成に成功しているといえよう。

 

雲峰は中国北部、中央部への攻撃を念頭に開発されたといわれ、北京も射程に収めている可能性がある。同ミサイルのテストは進行中だが、開発の核心部分は完了しているようだ。台湾が同ミサイルをどこに配備するか、何発が製造され、どこを標的にするのかが注目される。台湾のミサイル整備で中国による侵攻を阻止する、あるいは鈍化させる効果に期待が集まる。■

 

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Taiwan’s Missile Forces are Raising the Costs of Chinese Aggression


Taiwan Reportedly Plans to Upgrade Supersonic Hsiung Feng III Missiles



March 25, 2021  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Reboot  Tags: ChinaTaiwanBallistic MissilesMilitaryAsymmetric Warfare

by Caleb Larson

 

Caleb Larson is a Defense Writer with The National Interest. He holds a Master of Public Policy and covers U.S. and Russian security, European defense issues, and German politics and culture. This article first appeared last year.

 


コメント

  1. ぼたんのちから2021年3月26日 1:45

    日本が、約2千発の短~中距離ミサイルを持つPLAに対し、迎撃ミサイルや通常兵器の強化で対抗しようすることは、費用や迎撃効果等の面で無理があり、ミサイルの数を揃えれば攻撃側が常に優位になり、日本に向けた何百発ものミサイルで大きな損害を被ることは避けられない。
    想定する敵国は北朝鮮だけでない。また、迎撃技術より攻撃技術の改良の方がより簡単に見える。つまり、現在のミサイル防衛体制は、PLAに対してならば困難であり通用しないだろう。
    ミサイル防衛の効果がさらに減ることが予想され、迎撃技術の改良や開発に多大な費用と時間が必要ならば、ミサイル防衛による抑止力もまた限界に来ていると言えるだろう。
    台湾は、「雲峰」対地ミサイルに抑止力を求めている。これは正しい台湾の選択だろう。今日、ロイターが台湾の長距離ミサイルの大量生産を報じていたが、これは「雲峰」だろう。
    日本もいずれ同様な選択を行うことになるだろう。日本は既に数種の中距離対艦・対地ミサイルの開発を開始したが、遅延は許されない状況になってきている。
    また、イージスアショア設置の撤回と新たなイージス搭載艦の建造は、正しい選択であるだろう。固定されたイージスはミサイルの集中攻撃によりごく初期に破壊され、イージス艦の残存性が高いことは間違いないからである。

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