歴史に残る艦(1)USSニミッツCVN-68
USS Nimitz. U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist Seaman Aiyana S. Paschal/ Released
USSニミッツは1973年完成し、二隻目の原子力空母となった
ニミッツは5年かけて退役し、装備や原子炉を除去する
海軍は長年活躍した同艦を「リサイクル」する
米海軍は2020年12月に今後30年にわたる建艦計画を発表し、2051年までに546隻体制を整備するという野心的な案で、404隻が新規建造で、供用中の304隻を退役させる。
この304隻中で14隻が原子力推進艦で艦船潜水艦リサイクル事業で各艦をリサイクルする。リサイクル事業は原子力艦艇の安全な廃棄処理をめざしたものだ。
この14隻のうち、13隻が原子力潜水艦でロサンジェルス級攻撃型潜水艦11隻とオハイオ級ミサイル潜水艦2隻となる。残る1隻が長年活躍してきたUSSニミッツで、ニミッツ級超大型原子力空母の一号鑑だ。
ニミッツ他潜水艦13隻は今後5年をかけてリサイクルされる。ニミッツは50年におよぶ艦歴を終える。
USSニミッツの就役は1975年5月で、当時はUSSエンタープライズに次ぐ原子力空母2隻目となった。
艦名は米太平洋艦隊司令官として第二次大戦の連合軍作戦を率いたチェスター・ウィリアム・ニミッツ・シニア海軍元帥にちなむ。
全長1,092フィートのニミッツは米海軍、世界ともに最大の艦となった。最高速度は30ノット超で60機の航空隊を搭載し、乗組員は海兵隊員含み5千名だ。
原子力推進方式には数々の利点がある。航続距離は事実上無限で、作戦期間は年単位であり、航行用の燃料搭載が不要となり航空燃料搭載量が2倍増に、さらに航空隊の兵装搭載も3割増えた。原子炉がハイテク電子装備へ電力供給し、蒸気カタパルトを稼働し大型機発艦が可能になった。
長い輝かしい戦歴
USSニミッツは大規模作戦少なくとも7つへの参加したほか、数多くのパトロールや航行の自由運用の記録がある。
ニミッツは1976年に地中海に初めて投入された。1979年にはインド洋でイラン人質危機で待機した。その間に米大使館員の救出を狙ったものの失敗したイーブニングライト作戦に加わった。
1981年には同艦のF−14トムキャットがシドラ湾での航行の自由作戦実施中にリビアのSu-22の2機を撃墜した。
ニミッツは大部分の運用を中東で過ごした。1980年代末のタンカー戦争ではイランの攻撃からクウェイト船籍タンカーを守る米海軍のアーネスト・ウィル作戦で重要な役割を果たし、第二次大戦後で最大規模の船団護衛にあたった。
1980年4月24日、イーブニングライト作戦でUSSニミッツから発艦したRH-53Dシースタリオン編隊。CORBIS/Corbis via Getty Images
ニミッツは第三次台湾海峡危機の1996年にも関与した。ニミッツ空母群および強襲揚陸艦USSベローウッドが台湾海峡を航行し、USSインディペンデンス空母群も付近に展開した力の示威で中国は台湾への圧力継続を断念した。
1990年代にはニミッツ艦載機は砂漠の嵐作戦、南の見張り作戦で偵察活動を展開した。2003年にベルシア湾に戻り、アフガニスタンやイラクの空爆を不朽の自由作戦、イラクの自由作戦で展開した。
2012年にUSSエンタープライズが退役し、ニミッツが最古参空母になった。
2017年には太平洋に短期配備されてからまたペルシア湾に移動し、イラク国内のISIS拠点を空爆し、わずか3ヶ月の間にソーティー1,322回で904発をISISにお見舞いした。
最後の展開とリサイクル作業
2020年4月には太平洋で一部乗組員がコロナウィルスに感染し、ほぼ一ヶ月におよぶ隔離体制をワシントン州ブレマートンでとってから、USSロナルド・レーガンと南シナ海に展開した。
ソマリアの米軍部隊を支援したニミッツは2020年12月に帰国予定だったが、イラン司令官カセム・ソレイマニの殺害一周年で中東に残り抑止力を発揮するよう突如新しい命令を受けた。2021年2月1日に帰国命令が出た段階で外洋航海は240日になっていた。
ニミッツは2022年に退役し、リサイクル工程が2025年開始の予定だ。リサイクルは三段階に分かれる。不活性化、原子炉撤去、リサイクルだ。
USSニミッツは2020年6月8日に母港サンディエゴの海軍航空基地ノースアイランドを出港した。 US Navy/MCS 2nd Class Natalie M. Byers
このうち、不活性化は艦内装備品を撤去後に開始し、原子炉2基の核燃料を撤去することを意味する。核燃料は密閉移動用コンテナに格納され、その後専用コンテナに移し海軍原子炉施設のあるアイダホ州に輸送される。
原子炉撤去段階で原子炉を完全清掃し、密閉し、撤去する。その後、ワシントン州のハンフォード核廃棄物処理施設に送付される。ここはエナジー省の施設だ。
各段階が完了すると、ニミッツで残る部分は姉妹艦での利用のため撤去され、保管される。先に退役したUSSエンタープライズの部品もニミッツ級で再利用されている。
その後、艦体は完全スクラップされる。エンタープライズでは全工程に10年かかる予想だが、ニミッツでも長期事業になりそうだ。■
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Benjamin Brimelow Feb 2, 2021, 11:12 PM
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