スキップしてメイン コンテンツに移動

中国の主力戦車ZTZ-96,,ZTZ-99の実力とは。西側、ロシアの戦車と比較する。

 

国軍の戦車部隊で目立つのは装備の設計年次が西側、ロシアと比べると比較的新しいことだ。現在供用中の装備は1970年代後半から1980年代初頭が中心だが、中でもZTZ-96、ZTZ-99は1980年代末に開発が始まり、供用開始は1990年代末から2000年代初頭だ。

 

だが、中国の設計内容はその間の技術進歩を取り入れているのだろうか。

 

ZTZ-96は中国初の近代主力戦車で、一号車は1999年に部隊編入された。

 

ZTZ-88の105mm主砲は125mmZPT98平滑砲に取り替えられた。これ自体がソ連/ロシア製2A46Mのコピーだ。火器管制装置(FCS)は輸入したマルコーニ製が原型で、レーザー測距器 (LRF)、主砲安定装置、光学安定機能を付与した。しかし、1999年製としては780hpでは出力不足は否めない

 

全体として良好とはいうものの、装甲に問題がある。装甲は複合材としては旧型で現在のロシアあるいは西側の設計と比較すると効果が低い。米陸軍のM829A2砲弾はロシア戦車コンタクト-5爆発反応装甲(ERA)を貫通すべく開発された。標準仕様のZTZ-96はERAを搭載しない。 

 

このため装甲を改良したZTZ-96Aが2009年に登場し、同じ車台に装甲を追加し、ERAも搭載した。ZTZ-96Aは砲塔形状がZTZ-96と異なる。砲塔部分はZTZ-99から流用している。

 

FCSと砲塔の制御も小幅改良を受けているが、とくに重要な内容ではない。レーザー警報受信機を砲塔後部に追加し、防御性を高めた。熱画像装置も新たに追加した。

 

こうした改良でZTZ-96Aの車重に780hpエンジンでは出力不足になった。中国は2014年の戦車競技会でZTZ-96Aでは1000hpのロシアT-72B3に追随できないことを思い知らされた。

 

このためZTZ-96B改修はエンジンに中心をおき、1130hpに強化された。また新型FCS、車内環境の改良、遠隔武装運用能力が付与された。その他の改良内容もあるが、ZTZ-96Bの改修はまだ日が浅く、不明点が多い。

 

こうした改良はあるものの、ZTZ-96Bは相当前の設計をもとにしている。ZTZ-96BはZTZ-99と並行開発され、ZTZ-96はつなぎ的存在になったが、ZTZ-99はエイブラムズ、レパード2、T-80に競合可能な装備として当初から設計された。

 

ZTZ-99の初期設計は1998年ごろ決定され、1999年の軍事パレードで初めて姿を現した。初期生産型の砲塔は平たんでZTZ-96同様の125mm主砲を搭載した。

 

基本形 ZTZ-99 (9910) は車長専用の視認装置がつき、M1A1、レパード2A、T-72Bでもこれはついていない。エンジンは1200hpで、T-72B3を上回る。

 

ただし、このまま生産に移されなかったのは、装甲で欠陥が見つかったためだ。開発をやり直した。小幅改良した型式をZTZ-99フェイズ-Iとして2008年に生産開始した。開発はその後も続きフェイズ-IIとして、砲塔部分に角度がつき、ERAモジュールが車体についた。

 

さらに設計変更を受けたのがZTZ-99Aでエンジンは1500hpとなった。車体形状も変更され、M1エイブラムズに似た鋭角がついた。砲塔も再設計され、装甲が厚くなった。また近代型戦車の各特徴を採用し、車長、銃手ともに熱画像を利用できるようになり、敵戦車攻撃能力、レーザー警報受信機を搭載した。

 

ではZTZ-96、ZTZ-99各型の実力はどの程度なのか。ZTZ-96Bは装甲の古さで各国の第一線主力戦車と比べ威力が劣るだろう。ERAを導入しても大きな向上はない。125mm主砲と新型火器管制装置により敵への攻撃能力は向上しているが、簡単に撃破されそうだ。

 

ZTZ-99Aは別だ。装甲の改良、ネットワーク機能、センサー能力の付与で、手ごわい敵になりそうだ。ただし、中国製の熱画像装置の性能は不明だ。最新の米M1A2Cの熱画像装置は第三世代といわれ、探知識別能力と探知距離が向上し、中国製装備の性能を超え、エイブラムズが有利になる。

 

中国はロシア/ソ連方式の回転式装弾装置を搭載し、敵弾命中の際は乗員に危険な事態になりそうだ。ZTZ-99Aに自動装弾機能が採用されていないのに驚かされる。第三世代戦車の多くが採用しており、日本の90式、10式、韓国のK2戦車も例外ではない。自動装弾装置の大きな意義は安全性だ。機構の複雑さと費用から中国が採用しなかった可能性がある。

 

結論としてZTZ-99Aは旧型の米戦車に、ロシア戦車の場合は大部分の車両に脅威となりそうだが、米ロ新鋭車両には勝てないと思われる。砲塔部分、車体部分を基本形のまま製造を続けていることから、中国は戦車に求められる水準を把握しきれていないことがわかり、ZTZ-99Aは完成度が高い車両ではない。これは最新の米ロ製戦車との比較の話だ。

 

M1A2Dやアルマータ戦車はZTZ-99Aを上回る水準のようだ。中国軍首脳部が別の戦車設計を優先している証はなく、ZTZ-99Aが当面の開発で中心になっているようだ。■

 

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

China’s ZTZ-99A: How Dangerous Is This Tank?

March 27, 2021  Topic: Tanks  Region: China  Blog Brand: The Reboot  Tags: Russian TanksTanksChinaUnited StatesMilitary

by Charlie Gao

 

 

Some details taken from The Technical Development of China's Tanks from the Type 59 to the Type 88 Main Battle Tank by Wu Zheren and Hu Xiaofang.

Charlie Gao studied Political and Computer Science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national security issues. This article first appeared in 2018.

Image: Wikipedia.


コメント

  1. ぼたんのちから2021年3月30日 11:34

    1万3000両ある中国陸軍(PLAGF)の戦車の中でZTZ-99 やZTZ-96は合わせて3000両も無いかもしれない。残る1万両は旧式である。
    ZTZ-99 やZTZ-96は最新型と言うが、世界的レベルでない。
    PLAGFの状況は、戦車の数はあるが、ほとんどが旧式で、大規模運用を伴う実戦経験がなく(ソ連はノモンハンの経験があったが、その教訓はソ連軍に一般的でない)、しかもPLAGF幹部が粛清されていることも考えれば、これは第2次世界大戦のドイツ侵攻前のソ連と同様な状況だろう。
    このように考えれば、ロシアのような大陸軍国が中国に侵攻する隙があるということだろう。特に米露が手を結べば、PLAGFは、後背地を失い、反攻の機会さえ得られない状況もあり得る。
    PLAは、あまりにも海空軍に力を入れ過ぎたのかもしれない。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ