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極超音速ミサイルの導入で、やっとズムワルト級の活用方法が見つかった模様。西太平洋前方配備で同級駆逐艦の日本配備も今後大いにあり得るので今後の動向に注目だ。

 


 

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駆逐艦ズムワルト、メイポートハーバー海軍基地へ帰投中。 (U.S. Navy photo by MC2 Timothy Schumaker)

 

海軍は三隻保有するステルス駆逐艦ズムワルト級を改修し、極超音速ミサイル運用能力を付与したいとする。追加予算投入が必要となるが、西太平洋での中国対応を想定し実施する。

 

3月18日付で海軍からズムワルト級のミサイル垂直発射装置に入らない極超音速の運用法で提案を業界に求める公告が出た。ミサイル及び関連ソフトウェアの情報提供も求める。

 

具体的に海軍が求めているのは「高性能ペイロードモジュール」で迅速打撃ミサイルを「三本まとめる構造」で搭載する企画案だ。

 

ズムワルト級の今後に詳しい筋二名の説明では、使用不能状態だった高性能主砲装備にかわり、ペイロードモジュールで極超音速ミサイルを運用するのだという。高性能主砲装備は水平線越え射撃で海兵隊の揚陸作戦を支援する構想で、同級の存在意義とされていた。改修により、DDG-1000級各艦の主任務はインド太平洋での強力な通常抑止力提供にやっと決まることになる。

 

水上艦艇による迅速打撃戦力が実現すれば、中国は犠牲なく戦域の掌握が困難になり状況は複雑になると元潜水艦勤務で現在はハドソン研究所主任研究員のブライアン・クラークは解説する。「これは通常型弾道ミサイル搭載の潜水艦で機能する構想だと思っていた」

 

ただし、実現の条件は艦艇が対象戦域内にあり、あらかじめ定めた目標にミサイル発射が可能であることだ。ミサイル発射が迅速に行え、かつ中国領土内の目標に命中する可能性が高いことも条件だ。潜水艦もこの任務を実施できるが、ズムワルトは水上艦なので追尾が容易となり、強力な通常抑止手段となるが、潜水艦は視認されずこの効果が認識されないとクラークは指摘する。

 

「位置が判明するのでエスカレーションは低い範囲でおさまる。SSBN投入だとエスカレーションが高くなる。水上艦で透明性が高まり、相手にメッセージを示せるが、潜水艦ではこうはいかない」

 

「西太平洋に一隻配備し各種作戦に投入すれば、本気度が伝わり、わずかにエスカレーションしても、南シナ海にも一隻展開すればよい。中国本土内部の標的にも脅威となる」

 

ズムワルトの当初構想では敵沿岸に探知されずに接近し、射程80カイリの艦砲で海兵隊上陸作戦を支援するはずだった。

 

だが、同上ミッションの実行は非現実的と判明し、建造費高騰で28隻建造予定が7隻に、さらに3隻に削られた。

 

期待されていた長距離対地攻撃では高性能砲弾の調達は2016年に中止された。建造規模の縮小で一回の射撃費用が80万ドルになったためだ。

 

2018年には高コストとあわせ射程が想定より短くなると海軍は発表した。当時の調達トップ将官ビル・マーツ中将は議会で、「これだけの高コストでも想定した効果が得られない。そこで主砲装備開発を艦の整備から切り離すこととする」と述べた。

 

その後、ズムワルトを対水上艦攻撃手段に転じる構想が生まれ、今回の迅速打撃極超音速ミサイルを搭載する案に発展した。通常迅速打撃ミサイルの直径が最小でも30インチで、現行のVLS発射装置で対応可能な直径が28インチのため新たなペイロードモジュールが必要となる。

 

三隻保有しているので、一隻を海上哨戒に、一隻を出動準備、さらに一隻を保守管理に常時投入する運用が想定できる。つまり、ズムワルト級はほぼ常時展開できる。

 

元駆逐艦艦長のブライアン・マグラスは国防専門コンサルタント会社The FerryBridge Groupを経営し、海軍は南シナ海に通常抑止力を常時展開すべきと主張する。「予算を使い時間をかけても、特別な戦力を整備すべきだ」

 

The destroyer Michael Monsoor. (U.S. Navy photo courtesy of Bath Iron Works)

駆逐艦マイケル・マンソー (U.S. Navy photo courtesy of Bath Iron Works)

 

 

これをマグラスは「海洋優勢駆逐艦」構想と呼び、ズムワルトの当初の装備品を撤去し、水上艦艇の標準装備となったイージス戦闘システムに換装し、「南シナ海用指揮統制艦」にすべきと主張する。

 

マグラス構想ではズムワルト級は中国内陸部まで射程におさめるだけでなく、無人装備の指揮統制任務にも投入する。USNI Newsは今週月曜日にズムワルト級は今後の演習で無人装備制御機能を試すと伝えていた。

 

また同艦に中高度長時間滞空無人航空装備を搭載し、監視標的捕捉機能を実施すべきとマグラスは主張する。

 

「三隻を西太平洋で前方配備し、常時一隻を任務につけ、将官級の指揮官幕僚を乗せ、独自に中高度長時間滞空UAVを搭載し、通常型迅速打撃戦力とイージス戦闘システムを搭載する。

 

「これで西太平洋での米側の本気度が伝わり、抑止力が生まれる。またステルス艦体にも意味がある。これこそがDDG-1000の将来像だろう」

 

クラークは代償として現在多用されているアーレイ・バーク級駆逐艦と同じ運用は無理とする。「航行の自由作戦に投入できても、対潜戦は対応不能だ。海洋安全保障全般にも投入できない」

 

海軍が同艦の運用構想を説明できれば、議会は追加予算を認め、改修に道が開くとクラークは見る。

 

「議会が海軍に求めているのは任務内容を明確かつ内容が理屈にあっている説明だ。当初想定は接近阻止領域拒否の登場で非現実的になり、海軍は同級の活用方法で首尾一貫した説明してこなかった。このため議会からどう活用するのか説明を求められている格好だ」

 

通常迅速打撃ミサイルの登場で、海軍はついにこの説明が可能になったようだ。■

 

 

What should become of the Zumwalt class? The US Navy has some big ideas.

By: David B. Larter 


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