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バイオハイブリッドロボットで生体の筋肉組織と機械部品の融合を目指す米陸軍研究本部の最新動向

 The first applications for bio hybrid robotics the team are expected to focus on include legged platforms, similar to LLAMA, a research platform developed through the Army’s Robotics Collaborative Technology Alliance.

バイオハイブリッド技術初の応用として開発チームは四脚構造の本体を完成させる。外観は陸軍のロボット工学機連携技術開発アライアンスが開発下LLAMAに似ている。U.S. ARMY



米陸軍研究本部の技術陣からバイオハイブリッドロボット技術の初期段階の概要について説明を受けた。

 

ぎこちない動作のアンドロイドから敏捷な動きで生体により近づくロボットの製造へ道を開くべく、陸軍研究本部(ARL)はバイオハイブリッドロボット技術のハイリスク研究にとりかっており、ゆくゆくは生体組織と機械部品の融合をめざす。

「これは完全に新しい研究分野で、生まれたばかりの技術だ。生体の筋肉組織あるいは細胞を大型機構に統合して運動を生体装置で制御する技術の研究は2000年以降始まって、2010年代初めに加速化された。ということで新技術なのだ」と研究開発にあたるディーン・カルバー博士が述べている。「それだけにこれからさらに進歩の可能性があり、これまで得られた知見を活用できそうだ」

本人はNextgovの取材で未来を見据えた研究と驚異的な成果につながる期待を生む応用に触れている。

大きな効果を生む可能性

カルバー博士は機械工学を学び、デューク大大学院でエナジー管理に興味を覚え、貯蔵エナジーから動作を得る複雑な方法の研究を始めた。

「卒業後は筋肉の作動原理研究が大きなテーマだった。生体にエナジーがどのように貯蔵されるのか、またどのように動作に使っているのか」とし、「こうした疑問への解答が思ったより解明されていないことがわかった。ロボット工学ではすでに応用策が研究されていたし、陸軍向けに新型車両の研究も進んでいた。私自身は今でも同じ問題の解答を模索している」

カルバー博士は2017年ごろからこの課題にとりくんできた。めざすのは長期間稼働でき、強靭性があり、作動しても高温にならないデバイスだ。

「答えは生体組織にあった」とカルヴァーは説明した。

現在陸軍で供用中の高性能ロボットは貨物を運搬したり、周囲の状況を記録する。車輪4つを装着することが多く、高さは1フィートから2フィート程度だ。舗装面なら時速2マイルで移動する。ただカルバーが指摘するように問題が二つある。移動手段が車輪になっていることとバッテリーで動力供給していることだ。

「野生の狼を見てみよう。重量は同じくらいだが、餌なしで数百マイル移動できる。短い睡眠で翌日も移動できる。両者の性能の差は歴然だ。ロボットで長距離運用が可能になれば、大きな進展となる。その手段は自然界を観察することで得る」

そこでバッテリーとモーターの組み合わせという固定観念ではなく、筋肉をアクチュエーターに使えば早く実現できるという発想が研究陣に生まれ、バッテリーの代わりに化学エナジーを利用する。カルバーによれば筋肉組織並びに他の生体構造ではエナジーを運動に変えル歳の真の利点は柔軟性だという。例えば、現在の四本足ロボットに舗装駐車場を横断させる指示を与えれば、うまくこなす。だが、砂利駐車場の場合、転倒せずに移動するのは簡単とはいえない。

その理由にマシンのアクチュエーターに柔軟性がないことがあり、モーターは想定外の事象に対応できない。

「野原を走ればウサギの掘った穴に落ちることもあるが、足から脳へ『ウサギ穴に落っこちた』との信号が来る前に体が穴の出現に備えるようにできている。生体制御系としてこの機能が備わっているが、別の見方をすれば筋肉や腱が微妙に屈曲伸展して、状況対応している。これと同じ機能を提供する」とカルバーは説明している。「ロボットが想定外で予測不可能な状況に遭遇すれば、適応が求められる。今回の研究がここで威力を発揮する」

画期的な新技術になる

バイオハイブリッド試作品は陸軍研究本部だけで完成させるわけではない。カルバーは「生体組織を機械部品表面につなげば、電気信号あるいは化学刺激で筋肉のオンオフができる」とし、「ばねのような収縮伸展を実現し、モーターより利点が生まれる」とする。

このため動物標本から採取した筋肉組織を実験室で培養し陸軍のニーズに対応する。

陸軍が新型ロボット開発に向かえば、モーターあるいはバイオハイブリッド筋肉アクチュエーターでほとんどの用途に対応できるとカルバーはみている。

「この問題に答えを出すためには筋肉組織がどのように作動しているかを真剣に理解し、電気信号、イオン、化学物質で作動させるシステムをどのように統合し、長く維持でき作動させる課題を解決する必要がある」とカルバーは説明しており、「現時点では学術界の協力者にこちらが開発したモデルの有効性の実証をお願いしている」

陸軍研究本部が目指す初期のバイオハイブリッド・ロボットは「現行の脚つき推進移動適応研究機構LLAMAや海兵隊の脚つき分隊支援装備LS3に類似してくる」という。

ARLにはデューク大、ノースカロライナ大と連携し実験を続けている。

Nextgovの取材でカルバーは軍事研究の意義を「新分野で主導的立場を確立」することにあるとしていた。現実を見れば、米国の敵対勢力に追いつくことが危険を生むかもしれない。

「バイオハイブリッドやバイオ関連の技術は今の規模で今の枠組みのままなら、『生物学を応用して強化すればいい』のだが、『生体を強靭にしている要素を学び、これを解明しゼロから作り上げ、ロボット、デバイス、メカ部品のみならず、自然界にみられる機能を取り入れたうえで、考え方も革命的に変え、機能もさらに伸ばす」とカルバーは述べた。「これだけ画期的な技術なので我が国が主導権を握りたいし、先頭を走る存在になりたい」■

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Army Explores Equipping Robots with Living Muscle Tissue

 

BY BRANDI VINCENT


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