スキップしてメイン コンテンツに移動

2021年4月4日、遼寧空母打撃群が宮古海峡を通過していた。中国の空母打撃群整備は今後も進む。日本含め周辺国はどう対応すべきか。

 THE WAR ZONE

PLAN STRIKE GROUP

PLAN

 

  

国初の航空母艦遼寧が宮古海峡を4月4日に通過航行した。ソ連が建造し中国が改修した同空母は5隻を伴い、打撃群を構成している。

 

統合幕僚監部発表では以下の各艦が通航した。


052D型ルーヤン級駆逐艦2隻

055型レンハイ級ミサイル駆逐艦1隻

054A型ジャンカイ級IIフリゲート1隻

901型フーユー級高速戦闘支援艦1隻


JAPAN SELF DEFENSE FORCES

宮古海峡を通過した遼寧空母打撃群各艦の写真を日本が公表した。

 

加えて自衛隊は宮古海峡上空を飛行する陕西Y-9一機も探知し、迎撃した。中国は同型機を改装し、電子偵察機あるいは哨戒機として使用しており、相手国の艦船を探知し、対応体制に関する情報を収集しつつ、味方艦船の追尾方法も把握できる。

JSDF

The track of the Y-9.

JSDF

 

宮古海峡は狭いながら国際水域につながり、日本の排他的経済水域を通過することから重要な戦略的水路とみなされる。米空軍で中国関連の安全保障問題を専門とするベン・ローセンは「中国の戦略思考ではこうした水路は第一列島線の外へ部隊を移動するため死活的な意味があるとする」

 

今回の遼寧の航行は国際法上で問題はないが、武力を背景に強硬態度を強める中国の象徴であり、公海で空母打撃群を運用する技術に熟達してきた印にもなる。

 

Y-9に加え、台湾もY-8による領空進入を発表しており、国防部は台湾海峡上空を同機が飛行したとする。

TAIWAN MOD

空母打撃群の通航にあわせ中国はほぼ同時期にTY-8輸送機も飛行させた。

 

こうした挑発的な動きは前からある。遼寧はこれまでも宮古海峡を2020年4月に通航している。中国はCOVID-19のため同艦は行動できなくなっていたとしていた。

 

同空母の航行は南シナ海での対立が強まる中で実施去れた。3月22日フィリピンは200隻余り集合した中国漁船の撤収を求めた。その中に人民武装海上民兵部隊People’s Armed Forces Maritime Militia (PAFMM)所属の船舶数十隻が混じっていたとForeign Policyが暴露している。

 

この直近の南シナ海での進展も中国が繰り広げる強硬策の一環にすぎず、遼寧が熟達した空母打撃群として第一列島線を出ると、人民解放軍海軍のめざす大洋での作戦展開の夢の実現にまた近づく。

 

遼寧には国産建造したクローン姉妹艦山東があり、空母打撃群として日常的に投入できる状態になってきた。さらに三番目の空母003型の建造が上海で進んでおり、中国が兵力投射能力の整備をめざし空母部隊を整備しているのは明らかだ。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

 

China's Liaoning Carrier Strike Group Passes Through Japan's Miyako Strait

China's ability to integrate its carriers with an increasingly advanced strike group continues to evolve, as does its blue water operations ambitions.

BY ADAM KEHOE APRIL 4, 2021

 


コメント

  1. ぼたんのちから2021年4月6日 20:01

    PLAN遼寧空母部隊は、先ず台湾に対し、次に南シナ海で米軍とASEAN諸国に対し示威行為を行うつもりでいるのだろう。
    随伴する055型駆逐艦と052D型駆逐艦の1隻は、3月下旬に日本海に派遣され、日本に対し示威行動を行った北海艦隊所属の艦であるが、帰港後1週間ほどで南シナ海方面に派遣されたことになる。このようなタイトなスケジュールで同じ艦を運用するには訳があるのだろう。
    推測する理由は、これらが精鋭艦であり、急遽決められた日本海への派遣に対応でき、その後すぐに空母部隊の直衛任務の果たせたということだ。これは侮れない。
    北海艦隊に052D型駆逐艦は他に6隻ほどあるが、No.120の艦はNo.101の055型駆逐艦とペアを組む最精鋭であると推測する。
    あるいは、単に使える艦が無かったかもしれないが。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...