スキップしてメイン コンテンツに移動

F-15EX制式名称がイーグルIIへ。名称はともかく、同機の将来は明るい。一方で、米空軍はF-35Aの当初調達規模を断念する気配。戦闘機機材構成はますます混乱しそう。

 

  •  

最低144機の調達が決まっているF-15EXは米空軍で最新鋭の機材となり、今後重要な役目が期待されている。

U.S. AIR FORCE / FACEBOOK SCREENCAP

 

米空軍向け最新型戦闘機のボーイングF-15EXの制式名称がイーグルIIになった。フロリダのエグリン空軍基地での受領式典で発表された。初号機引き渡しとしては地味な式典となったが、シリアルナンバー20-0001の機体は空軍の輝かしい戦闘機の伝統を体現し、名称は一部には失望となるが、疑いなく戦後戦闘機の比類なき実戦記録を実現してきた機体の伝統を引き継ぐものだ。

 

F-15EX初号機は3月10日に空軍に引き渡され、ボーイングのセントルイス工場からエグリンまでフェリーされた。現在は第40飛行試験隊がテスト中だ。新規製造F-15の空軍納入は17年ぶりとなった。

 

40TH FLIGHT TEST SQUADRON/PUBLIC DOMAIN

米空軍で供用中のイーグル各型をそろった。手前からF-15C/D、G-F-15E、F-15EX。

 

F-15EXの名称をThe War Zone がすっぱ抜いたのは2年半近く前のことだ。それ以降、同機の性能変更点などをお伝えしてきた。直近記事ではF-15EXで新型極超音速兵器運用も想定されているとあり、空軍戦力の質的変化を象徴している。

 

空軍は合計144機を調達し、旧型F-15C/Dイーグルに交代させる目論見を有する。さらに調達追加でF-15Eストライクイーグルの後継機にする構想もある。今回の制式名称発表のお披露目でデューク・Z・リチャードソン中将(空軍長官官房、自席軍代表)は調達技術平兵たん業務担当としてF-15C/D機材のおおよそ1割は機体構造問題のため飛行停止措置になっており、残る75パーセントの機体は想定寿命2万時間を超えていると述べ、F-15EXは最低でも50年間にわたり運用したいと述べた。F-15が来年に初飛行から半世紀を迎えることを考えるとこの意味は大きい。

 

制式名称がついたF-15EXはエグリン基地で飛行テストを続け、その後第一線部隊に配備される。テスト用二号機20-0002は製造が最終段階で、今月にも第85試験評価飛行隊に納入される。第40飛行試験飛行隊と85試験評価飛行隊は開発テストと運用テストを同時並行で実施する。さらに4機が2023年度末までに空軍へ引き渡される。

 

U.S. AIR FORCE/TECH. SGT. JOHN RAVEN

F-15EX初号機に第40飛行試験隊のマーキングがつき、エグリン基地に移動された。

 

その後、2014年にオレゴン州軍航空隊第173戦闘飛行隊へ引き渡しが始まる。同部隊はF-15C/Dを使う練習飛行隊だ。その翌年にオレゴン州軍142戦闘航空団が初の同機運用部隊になる。これは2025年度の予定だ。米本土防空任務の93パーセントは州軍各部隊が担当しており、現行のF-15C/D型をF-15EXあるいはF-35Aに更改する方針だが、機種構成の詳細は非公表だ。

 

ただ今後のF-15EXではエンジン選択が確定していない。初期生産分6機にはジェネラルエレクトリックF110-GE-129が搭載され、空軍は同エンジンまたはライバルのプラット&ホイットニーF100-PW-229のいずれかを選定する。

 

F-15EXの作戦体制整備への道筋がすんなりと進むのは有償海外援助用F-15で得たデータが活用できるからだ。そのうちカタール向けF-15QAが今回のF-15EXの原型だ。機体生存性はフルテストを実施せず、既存テストデータを使い予算を108百万ドル節約しつつテスト工程を加速化できる。

 

同機の生存性に必須のイーグル・パッシブ/アクティブ警報生存性装備(EPAWSS)のレーダー警報・電子戦装備一式は開発過程にあり、F-15Eに搭載され大規模演習シナリオでのテストに供されている。

 

米空軍がこれまで守ってきたF-35A1,700機調達の意欲を減らす中、F-15EXの将来は明るい。F-16の新規製造機材調達を堂々と口にする関係者も現れており、F-35A調達数削減も話題に上がり、一方で各種無人機の可能性に関心が集まっている。

 

機材構成ではF-35が中心と繰り返す発言が空軍にあるが、同機は「ハイエンド」機材である、というのが空軍参謀総長チャールズ・ブラウン大将の言葉で、費用対効果が優れる機材に調達可能性が開いている。その中にF-15EXがある。

 

一方で今回の制式名称のありふれた響きに関心が集まる。F-15イーグルに続いて、F-15Eがストライク・イーグルと呼称され、大幅改修を受け維持が決まったF-15C/Dの179機は非公式ながらゴールデン・イーグルと呼称された。そこにF-15EXが登場したのだが。

 

ボーイングはアドバンスト・イーグルを推し、新型F-15の販売拡大を図っており、F-15EXもこの流れで生まれた機体である。他方で末尾の「II」はF-35ライトニングII、空軍向け次期捜索救難ヘリコプターのジョリー・グリーンIIで見られる。さらにA-10サンダーボルトIIも過去の機体に敬意を表し命名された。F-16で実戦部隊がヴァイパーの名称をつけているように別名称が登場するかは時がたてばわかるだろう。

 

イーグルIIの名称がお気に召すかは別に同機の未来は有望なようだ。■

 

この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

The F-15EX Is Now Officially Named The Eagle II

With plans to buy at least 144 copies, the Air Force’s latest fighter is set to play a prominent role in the service’s future plans.

BY THOMAS NEWDICK APRIL 7, 2021

 


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...