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台湾が潜水艦国内建造に乗り出し、戦術・戦略地図はこう変わる。日米など同盟国も台湾の自助努力を見て、台湾支援へ動きやすくなる。そうなると中国には不利な状況が増えるばかり。

 

 

湾の潜水艦建造は大歓迎だ。

 

米国政府が台湾向け潜水艦の艤装兵装品輸出に課していた制限を解除したため建造が可能となった。台湾国内の建造所で8隻建造し、海外提携先がセンサー、戦闘システム、兵装を技術支援とともに提供することになりそうだ。末広がりで縁起の良い八隻がそろえば、現有の老朽艦2隻、旧式化が進む2隻にかわり、政治戦略的な効果を台湾にもたらす。

 

台湾は自国の運命を自らの手で開くことが可能となる。なんといっても世界では自助努力をする側が救われる構図となっている。賢明な社会は自らの手で安全と権益を守る傾向があり、頼りにならない海外同盟国に任せることはない。

 

自助努力が国際関係の基礎となるかは人間の特性を見ればわかる。ジョージ・S・パットン将軍は人間観察に優れ、人は勝者には惜しみない賛辞を送り、敗者には軽蔑を送るものと述べた。実際その通りだ。勝ち目のない側にわざわざ寄り添うものがいるだろうか。

 

ウィンストン・チャーチルの下で英国は1940年から1941年にかけ枢軸側に単独立ち向かう状態となったが、勇気を示した。それだけの価値があった。台湾の潜水艦部隊は英国の戦いにおける英国空軍に匹敵する。台湾海軍(中華民国海軍ROCN)は本国をめざす敵部隊の接近を拒みつつ、同盟諸国による台湾支援に勢いをつけるだろう。

 

軍事の賢人カール・フォン・クラウゼビッツは優先事項が競合すれば同盟軍は集中できなくなると述べている。相互に支援しあっていても対象国の主張を自国のものととらえなければ効果が生まれない。中途半端な対応のまま外交、経済、軍事各面で資源を使ってしまう。

 

事態が悪化すると、体力のない同盟国が姿を消すことになるとクラウゼビッツは警告していた。台湾住民はこの現象を骨身にしみて知っているはずだ。外諸国には台湾防衛にかけつけないよう中国本土が外交、経済、軍事で露骨な脅かしで求めているからだ。

 

このため台湾は台湾海峡をはさむ強大な兄弟国に対する防衛体制を自らの手で強化する必要がある。海軍作戦に関しては、「制海」から「海上拒否」戦略に移行することである。制海とは強者の戦略だ。制海任務にあたる海軍部隊は対抗勢力を重要水域から排除し、兵力展開の航路を制御するべく水域を確保する。

 

かつては台湾海軍も制海任務を目指し、実際にその実現の好機があった。装備人員で優秀性があったため、規模こそ大きいが遅れた人民解放軍海軍に対抗する立場にあった。だがそうした日々は回想のかなたとなり、中国はハイテク軍艦軍用機を大量生産能力を手にし、沿岸には強力な支援火力を整備している。

 

端的に言えば、台湾海軍は近隣水域さえも統制できず、海洋支配の再確立の可能性は皆無に近い。だからといって台湾が敗北にむかっているわけではない。自国防衛のためROCNは台湾周辺のPLANによる支配を打破しようとするはずだ。揚陸部隊を撃破し、封鎖をうちやぶり、海上輸送を寸断すれば、同盟国なかんずく米国が救援にかけつける時間をかせぐことができ、中国による侵攻を食い止めることができる。

 

海上拒否は昔からある戦略で弱者のものだ。巧妙に運用すれば敵部隊には暗い一日になる。歴史家セオドア・ロップは世紀末のフランス海軍を観察し、弱小ダビデが巨人ゴライアス(英海軍)に勝つためには巨人の沿海地区で移動の自由を奪えばよいと考えた。

 

ロップの海上拒否構想には今も魅了するものがあり、ディーゼル潜水艦に「大気非依存型推進」が搭載され、探知困難なまま海中待機できるようになった。高速警戒艇は水上交通にまぎれ、混雑する沿海部を気づかれずに移動できる。

 

洋上あるいは水中から魚雷攻撃や対艦ミサイルを発射し、侵攻部隊の接近に対抗できる。また無人機、無人艇、無人潜水艇を併用できる。混みあった台湾海峡でこうした装備から攻撃を受ければPLANは反撃が難しく、対応に使える時間も限られる。

 

近代海戦では一隻の小舟艇でさえ敵の戦略に打撃を与えられる。英海軍とアルゼンチン海軍で1982年のフォークランド戦争でこれを学んだ。英海軍の原子力攻撃型潜水艦がアルゼンチン海軍の誇り巡洋艦ヘネラル・ベルグラーノを撃沈した。だが英海軍任務部隊は遊弋するアルゼンチン潜水艦一隻のため対潜装備をほぼ全数投入したものの排除できなかった。台湾海軍の技量はアルゼンチン海軍以上とみる向きがあろう。ROCNが米国や西側装備品、戦術、知見を活用できるためだ。ROCNが水中戦を有利に展開すればPLANの作戦展開を妨害でき、台湾は有利になる。すべて理想通りになれば台湾近海への侵入そのものを防げるはずだ。

 

そこで潜水艦の連続建造が台湾の目的にかなうことになる。8隻を新規建造し、旧型艦を退役させる。訓練、維持、整備を順当に行えば常時三隻ないし四隻が出撃可能になる。各艦に戦略的価値が生まれる。海軍は哨戒活動を常時展開し、乗員の戦術対応能力を磨きながら、潜水艦部隊が停泊中に奇襲攻撃で壊滅する事態を回避できる。

 

台湾海軍にこれ以外にも海上拒否の手段があるのだろうか。海上拒否は防御的に見えるが、実は攻撃戦術も含まれる。攻撃が戦略的防御の中心であることは海洋戦略の大家も認めるところだ。ROCN潜水艦部隊は、高雄などの沖合で哨戒任務にあたるが、こうした地点は揚陸強襲作戦の対象になりかねない。あえて攻撃されるのを待ってから反撃を強烈に加える作戦だ。

 

潜水艦艦長に攻撃精神が旺盛なら中国本土の港湾地点沖合まで移動して海中に潜むことも可能だろう。あるいは台湾海峡周辺に待機する。ルソン海峡がPLAN潜水艦の西太平洋、南シナ海への重要な移動経路で、ここをふさげば大きな効果が生まれる。台湾北部の宮古海峡も潜水艦の狩場になりそうだ。

 

中国が第一列島線から自由に動けなくなれば台湾の東海岸が安全になる。そうなれば台湾軍は中央部防衛に集中し、米軍も同盟諸国と第一列島線に展開し、PLAの海上作戦に大きな障害が生じる。

 

政治面の効果はこうなる。ROCNにより台湾の戦略価値が高まり、全体としての同盟国側戦略にも弾みがつく。同時に米海軍、海上自衛隊といった同盟国部隊に台湾防衛に手を貸す大義名分が生まれる。同盟国側は共通の大義名分のもと団結できる。台湾が自助努力で存続をかけ努力する姿が他国からの支援につながる。好循環が生まれる。

 

就役艦が増えれば、目標実現がそれだけ早くなり、よいことづくめだ。他方で各国潜水艦部隊間で戦術、訓練、水域管理を共有する議論を静かに始めるのは早ければ早いほど良い。

 

台湾の水中戦力増強問題はつまるところ新型潜水艦調達になる。多国間部隊で水中戦技術を磨こう。ともに前進したいものである。■

 

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The Need for Taiwan's Forthcoming Submarine Program Is More Than Pressing

April 27, 2021  Topic: Submarines  Region: Asia Pacific  Blog Brand: The Reboot  Tags: TaiwanMilitaryTechnologyWorldSubmarinesChina

by James Holmes

 

James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College, coauthor of Red Star over the Pacific, and author of A Brief Guide to Maritime Strategy. The views voiced here are his alone.

Image: Reuters. 


コメント

  1. ぼたんのちから2021年4月29日 1:55

    Holmes先生は、台湾の、建造が完了しても数少ない潜水艦に過大な期待をかけているように見えるが、それは酷と言うものだろう。中国は、台湾侵攻に多くの対地ミサイルとPLAN、PLAAFの半数以上を集中するだろう。
    台湾防衛は、台湾国民が独立維持を望んでいることが前提であるが、強大化するPLAの前に台湾単独での対抗は荷が重すぎるのは確かだろう。
    しかし、台湾単独での台湾防衛をあきらめるには早過ぎる。台湾が「海上拒否」戦略を採るならば、先ず台湾周辺の機雷網の設置と対艦ミサイルの整備を優先すべきだろう。台湾軍はそれを目指しているようにも見える。
    台湾海峡の封鎖は、台湾防衛戦略の要である。PLANの上陸侵攻部隊を接近させなければ、台湾侵攻の半分以上は失敗したも同然だ。新造する潜水艦は、侵攻路の周辺か、台湾周辺のチョークポイントで待ち構えればよりよい戦果が生まれるだろう。
    これらに加えて、台湾は戦略兵器を持つべきである。それは三峡ダムの攻撃能力であり、これは核兵器並みの抑止力がある。
    ところで、中国の台湾侵攻に関して日本の対応が定まっていないが、台湾が占領されると、日本の国家戦略が成り立たなくなることに注意すべきと考えるが、いかがだろう。

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