スキップしてメイン コンテンツに移動

三沢基地配備のF-16編隊がワイルドウィーゼル仕様で南シナ海へ展開。搭載兵装は実弾だった。


F-16CM Japan South China Sea

IORI

 

本に配備中の米空軍F-16編隊が南シナ海へ展開し、空対空ミサイル実弾を搭載したフル装備で対応した

 

競合状態が続く南シナ海に展開した米空軍F-16戦闘機の4機編隊が横田航空基地に着陸した。編隊は配備先の三沢に戻る途中だった。写真から各機に空対空ミサイル実弾の搭載がわかる。今回の南シナ海展開は人民解放軍が25機とこれまでで最大規模を台湾南西部の防空識別圏に現れたのと同じタイミングとなった。

 

ヴァイパー編隊を撮影したloriが各機の重装備ぶりを伝えている。視界外対応型のAIM-120C-7AMRAAM空対空ミサイル5本、短距離用AIM-9サイドワインダー1、最新のAIM-9Xを搭載した機もあり、残りの機には旧型AIM-9Mだった。機体下にはAN/ALQ-184電子対抗自機防御ポッドがついていた。すべて実弾というのが通常と異なり、とくに日本上空で実弾搭載を見るのはまれで、今回のフライトが長距離訓練飛行ではなかったことがわかる。計算の上で中国軍へシグナルを送ったものであり、緊急時対応運用だったのかもしれない。


IORI

実弾AIM-120C-7 AMRAAMミサイル三本のクローズアップ。

 

機体空気取り入れ口右側にAN/ASQ-213 HARM標的捕捉システムポッドをつけた機体はレーダー破壊用のワイルドウィーゼル仕様のF-16CMだが、今回はこれにも空対空ミサイルが目いっぱい搭載されていた。実弾を南シナ海に持ち込んだのは戦闘航空哨戒 (CAPs) を台湾近辺で展開する米軍の実力を誇示する意図があったのだろう。

 

撮影は4月17日で各機は南シナ海で4月12日に展開しており、横田基地への着陸は現地時間午後3時ごろで、燃料補給のためだったのだろう。同日午後5時ごろに出発している。横田から三沢までは400マイルほどの行程だ。

 

4月12日に始まった今回の展開場所は不明だが、嘉手納航空基地を利用したはずだ。沖縄は台湾から300マイルの地点で、米空軍の集積度も高い。とはいえ、展開には空中給油が必要で、KC-135ストラトタンカー4機が台湾南部に展開していたのが判明している。

 

IORI

F-16CM serial number シリアルナンバー91-0357のF-16CMには第35戦闘航空団司令の標識がついていた。 

 

南シナ海上空で同編隊は空母USSセオドア・ロウズヴェルト(CVN-71)上空を通過飛行している。

 

あわせて同編隊は武装哨戒飛行を行ったが、人民解放軍は25機もの軍用機を台湾南西の防空識別圏内に送った。内訳はJ-16が14機、J-10多用途戦闘機4機、H-6Kミサイル搭載爆撃機4機、KQ-200対潜哨戒機2機、KJ-500空中早期警戒統制機1機だった。

 

TAIWANESE MINISTRY OF NATIONAL DEFENSE

台湾国防部の公式発表で4月12日、台湾南西部ADIZへの中国機進入のフライトパスが示されている。

 

同空域に現れた中国機編隊としては先月の規模を上まわり、機体編成はほぼ同じだった。3月26日、一部中国機が南シナ海方面に展開してから帰投したのは、台湾東部の攻撃パターンを意識してのことだろう。

 

IORI

横田航空基地に着陸態勢のF-16CMの一機でASQ-213 HARM標的捕捉ポッドが空気取り入れ口付近についているのがわかる。

 

これにたいし4月12日のPLA機は南シナ海北東末端へ向け、おおむね直線コースを取ってから本土へ帰投している。同様の飛行パターンは1月24日にも見られた。

 

PLAが南シナ海とならび台湾ADIZで大規模航空運用することが増えている。動員されている機体数の多さだけでなく、長距離爆撃機や空中早期警戒機を伴うなど挑発的な機体構成になっていることも要注意だ。

 

TAIWANESE MINISTRY OF NATIONAL DEFENSE

人民解放軍空軍のKJ-200 AEW&C機。

 

台湾は都度スクランブル出動で対応しており、防空ミサイルの準備も整えているが、米空軍が同地区にプレゼンスを示したのは異例のことで、発進地が日本の三沢基地という点に注意が必要だ。

 

今回の米戦闘機部隊の投入は挑発行動を示すPLA機への直接対応というよりは、USSセオドア・ロウズヴェルトの展開に合わせた展開だったのは明らかだ。同空母にPLAは南シナ海で模擬攻撃を頻繁にかけたと伝えられる。とはいえ、今回の事例は米国の兵力投射能力を示しており、有事の際には陸上配備機材をはるか遠くの対決場所まで展開できることを如実に示した。

 

U.S. NAVY/MASS COMMUNICATION SPECIALIST 3RD CLASS CARLOS W. HOPPER

T第13戦闘飛行隊のF-16CM4機がUSSセオドア・ロウズヴェルト上空を通過飛行した。4月12日。

 

中国が武力で台湾統合をねらっていると米関係者が声を上げることがふえてきた。「米国を追い抜き、法の支配を基礎とする国際秩序に代わろうとする中国の野望が増大しているのが心配だ。これを中国は2050年ごろまでに実現したいとする。心配なのはその達成が早まるころだ」とインド太平洋軍司令官だったフィル・デイヴィッドソン海軍大将が今年初頭に議会で発言している。「野望のひとつが台湾であるのは明らかで、2020年代中に脅威は明確になり、今後6年間で強まるだろう」

 

三沢基地を離陸したF-16編隊は相当の距離を克服し、域内戦略バランスで重要な役割を示した。また、ワイルド・ウィーゼル任務の武功は有名で、尾翼に「WW」を記した各機は空対空戦でも重装備だった。

 

U.S. NAVY/MASS COMMUNICATION SPECIALIST 3RD CLASS CARLOS W. HOPPER

F-16の一機がバンクしAMRAAMに加えAIM-9一本を搭載している姿を示した。

 

 

インド太平洋地区での有事に備え、35戦闘航空団のF-16二個飛行隊、第13戦闘飛行隊「パンサーズ」と第14戦闘飛行隊「サムライズ」が待機している。台湾をめぐる最悪のシナリオは中国本土からの攻撃あるいは揚陸侵攻作戦だ。米航空戦力がこうした攻撃の際に大きな役割を果たす。ただし、米国は軍事作戦を展開すべきではないと主張する向きもある。

 

だが中国以外にも脅威がある。太平洋空軍責任区域(AOR)の1億平方マイルを受け持つ三沢のF-16部隊には北朝鮮、ロシアへの対応ミッションも想定されている。また、米中央軍AORに派遣され、対ISIS戦闘に投入されている。

 

今回のF-16編隊は未整備施設での運用も試した可能性がある。グアムでF-16、F-35を使い、同様の試行を今年早々に実施している。この作戦構想は大規模事態への対応で重要な要素となり、戦力を各地に分散した作戦となるようだ。この構想の背後には太平洋地区で弾道ミサイル攻撃が現実の脅威となっていることがある。三沢基地はミサイル攻撃の対象となりそうだ。

 

第35戦闘航空団司令だったR・スコット・ジョウブ大佐(現准将)は「三沢配備のF-16部隊は小規模ながら強力できわめて敏捷で、現在配備中のいかなる戦闘機に対抗可能だ」と筆者に語ってくれた。

 

今後台湾周辺に米戦術機が展開するのが日常的になり、特に南シナ海も活動範囲におさめるかに関心が集まるだろう。■


この記事は以下を再構成し人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

 Here's A Closer Look At The Heavily Armed F-16 Fighter Jets That Ventured Into The South China Sea

 

BY THOMAS NEWDICK APRIL 19, 2021


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM