Aviationweek.com 2月8日
F-22の生産継続の支持につながるようにロッキード・マーティンは同機の性能が当初の要求水準を上回っていることを示す社内データを公表した。さらに米空軍は同機を今年のパリ航空ショーで初の展示を行う。米空軍向け追加生産が可能となれば海外向け販売の障害はなくなる。同機を取り巻く意見はばらばらで国防総省は国防支出削減のため同機の生産を予定通り183機で停止したいと考えている。議会は逆に生産を増加して航空宇宙部門の雇用を維持したいと考えている。空軍上層部は最低必要機数を240から250機とし、追加生産60機が必要としている。
F-35の初期低レート生産分550機の価格が上昇することが判明した。F-35の単価は概算2億ドルで、F-22ラプターは1.42億ドル。これでは2014年まで就役しない航空機に空軍が多額の戦闘機予算をつぎこむことになってしまう。さらに、F-22が対空戦闘で本当にどれだけ有効なのかは秘密の壁に阻まれている。現在のところ、F-22は飛行可能なステルス戦闘機二機種のひとつ。これが今後十年以内にロシアと中国が新型機を投入することで変わる可能性がある。仮想敵国部隊の役を演じるパイロットは常時F-22を出し抜く策を模索しているが、今のところ模擬演習でわずか数回の「撃墜」に成功したのみで、それもまぐれ当たり。新たに公表された性能にはレーダー断面積があり、国防総省高官がこっそりと明らかにしたのは同機のレーダー特徴は-40 dBsm. で「おはじき」ぐらいに写る一方でF-35は-35 dBsm.でゴルフボールぐらいの大きさだという。スーパークルーズはマッハ1.78であり、これまでいわれていた1.5ではない。加速は要求性能よりも3.05秒早いというが、同社関係者は具体的な高度と速度は明らかにしていない。アフターバーナーを使用しないフルミリタリー推力でラプターは5万フィートをわずかに上回る高度で作戦可能となっていた。しかし、アラスカの合同演習で約6万5千フィートで空戦を開始している。また、同機搭載のノースロップ・グラマン/レイセオン製のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーは実際は5%も長い有効距離があるといわれている。AESAレーダーの有効距離は機密事項だが、F-16改修型に搭載の最小の機器構成で約90マイル、F/A-18E/Fと F-35は100マイルでF-22は110から115マイルと思われる。これに対して機械式スキャンのF-15Cのレーダーは56マイルとロシア空軍情報部は推測している。米国の航空宇宙関係者もAESAレーダーで有効距離が「すくなくとも」二倍になることを認めている。機体に電子手段発生装置を搭載すると、レーダーはジャミングを放射し、偽の目標ほか誤った情報を敵のセンサーに伝えることができる。電子攻撃の有効距離はAESAレーダーと敵のレーダーの有効距離を加えたものに等しい。長距離で小さな目標を捕捉できるAESAにより敵の巡航ミサイル、ステルス機ならびに小型UAVを捕捉、攻撃が可能となる。
ロッキード・マーティンは経済性も理由としている。複数年度調達の場合のF-22の単価は1.426億ドル。F-35の当初単価は2億ドル近辺と見積もられているが、生産継続で低下していく。日本ではF-15JとF-2を小規模生産する決断の結果、単価はそれぞれ1億ドルとなった。ユーロファイター・タイフーンは小規模生産の場合はもっと高価になるだろう。
運用上の議論は同機が海外のトップクラス戦闘機、たとえばロシアのSu-27やMiG-29に対して本当に有効なのかという点である。ロッキード・マーティンと米空軍のアナリストは対敵航空機撃墜被撃墜率をF-22なら30対1、F-35では3対1、F-15, F/A-18 ならびに F-16なら1対1だろうと見ている。
一方ロシアはF-22の評価で大きくばらついている。同機は「ミサイル防空体制に大きな脅威となる」と見て「防空網を無効にする可能性と、高速性、操縦性と搭載機器により高度に強力で危険な航空機だ」としている一方で、「過大評価はまずい、レーダーで捕捉可能で、破壊することも可能だ」としているため。アメリカの最大の仮想敵国はロシアと中国で、両国は第五世代戦闘機を今後5から10年で実用化するのではないかと見ている。高度防空システムとしてNATOがSA-20とSA-21と呼称するものはロシアではS-300とS-400といわれ、輸出も始まっているが、アメリカ専門家はステルス機で突破可能と見ている。ただし、これら高性能ミサイルの輸出は中国、ベトナム、シリア向けに実施済みであり、イランからも発注があったところである。
もうひとつの考え方はラプター生産を183機で2011年に終了し、実線に投入可能なのは126機しかないというもの。さらにその中で作戦可能なのは100機まで減少する。ラプター183機体制の条件は177機のF-15を2025年まで稼動させて対空制圧任務にあたらせることであり、生産停止は海外販売の道を閉ざすことにもなる。しかし、2014年まで生産を継続すると、その時点では米国経済も今よりは好調となり、作戦可能なF-22の数も180機となる。初期生産のF-35合計68機が加わり、同時にF-22の海外販売の可能性も出てくる。日本とイスラエルは仮に飛行隊一個でも配備できれば周囲の軍事脅威に対する大きな抑止力増加になると発言している。
ロッキード・マーティンはラプターの実戦能力をえさにオバマ政権の支援を引き出したいと考えている。オバマ政権は3月までに同機の生産継続の是非を決定することになっている。生産継続の場合最低20機、さらに空軍が要求機数を再設定すれば60機が想定され、議会も長期予算措置を承認しているが、生産継続の支持獲得には相当の圧力がかかっている。空軍上層部は配備数が増加した場合の運用期間の長さに着目し、20機以上の追加生産の可能性は少ないと見る。ペンタゴン内部の見方はロッキード・マーティンにはC-130JとC-5B改修に加えて、F-35の生産が年間110機に増加するので事業継続は十分可能だとするもの。
コメント:ペンタゴン内部はF-22に対して本当に冷たいですね。すでに生産停止は既定の扱いです。オバマ政権の経済雇用拡大政策に乗じて生産維持を何とか確保したいメーカー側の必死の主張ですが、果たしてどうなるでしょうか。ひょっとすると日本でも再びF-22待望論が出るのかもしれませんが。
F-22の生産継続の支持につながるようにロッキード・マーティンは同機の性能が当初の要求水準を上回っていることを示す社内データを公表した。さらに米空軍は同機を今年のパリ航空ショーで初の展示を行う。米空軍向け追加生産が可能となれば海外向け販売の障害はなくなる。同機を取り巻く意見はばらばらで国防総省は国防支出削減のため同機の生産を予定通り183機で停止したいと考えている。議会は逆に生産を増加して航空宇宙部門の雇用を維持したいと考えている。空軍上層部は最低必要機数を240から250機とし、追加生産60機が必要としている。
F-35の初期低レート生産分550機の価格が上昇することが判明した。F-35の単価は概算2億ドルで、F-22ラプターは1.42億ドル。これでは2014年まで就役しない航空機に空軍が多額の戦闘機予算をつぎこむことになってしまう。さらに、F-22が対空戦闘で本当にどれだけ有効なのかは秘密の壁に阻まれている。現在のところ、F-22は飛行可能なステルス戦闘機二機種のひとつ。これが今後十年以内にロシアと中国が新型機を投入することで変わる可能性がある。仮想敵国部隊の役を演じるパイロットは常時F-22を出し抜く策を模索しているが、今のところ模擬演習でわずか数回の「撃墜」に成功したのみで、それもまぐれ当たり。新たに公表された性能にはレーダー断面積があり、国防総省高官がこっそりと明らかにしたのは同機のレーダー特徴は-40 dBsm. で「おはじき」ぐらいに写る一方でF-35は-35 dBsm.でゴルフボールぐらいの大きさだという。スーパークルーズはマッハ1.78であり、これまでいわれていた1.5ではない。加速は要求性能よりも3.05秒早いというが、同社関係者は具体的な高度と速度は明らかにしていない。アフターバーナーを使用しないフルミリタリー推力でラプターは5万フィートをわずかに上回る高度で作戦可能となっていた。しかし、アラスカの合同演習で約6万5千フィートで空戦を開始している。また、同機搭載のノースロップ・グラマン/レイセオン製のアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーは実際は5%も長い有効距離があるといわれている。AESAレーダーの有効距離は機密事項だが、F-16改修型に搭載の最小の機器構成で約90マイル、F/A-18E/Fと F-35は100マイルでF-22は110から115マイルと思われる。これに対して機械式スキャンのF-15Cのレーダーは56マイルとロシア空軍情報部は推測している。米国の航空宇宙関係者もAESAレーダーで有効距離が「すくなくとも」二倍になることを認めている。機体に電子手段発生装置を搭載すると、レーダーはジャミングを放射し、偽の目標ほか誤った情報を敵のセンサーに伝えることができる。電子攻撃の有効距離はAESAレーダーと敵のレーダーの有効距離を加えたものに等しい。長距離で小さな目標を捕捉できるAESAにより敵の巡航ミサイル、ステルス機ならびに小型UAVを捕捉、攻撃が可能となる。
ロッキード・マーティンは経済性も理由としている。複数年度調達の場合のF-22の単価は1.426億ドル。F-35の当初単価は2億ドル近辺と見積もられているが、生産継続で低下していく。日本ではF-15JとF-2を小規模生産する決断の結果、単価はそれぞれ1億ドルとなった。ユーロファイター・タイフーンは小規模生産の場合はもっと高価になるだろう。
運用上の議論は同機が海外のトップクラス戦闘機、たとえばロシアのSu-27やMiG-29に対して本当に有効なのかという点である。ロッキード・マーティンと米空軍のアナリストは対敵航空機撃墜被撃墜率をF-22なら30対1、F-35では3対1、F-15, F/A-18 ならびに F-16なら1対1だろうと見ている。
一方ロシアはF-22の評価で大きくばらついている。同機は「ミサイル防空体制に大きな脅威となる」と見て「防空網を無効にする可能性と、高速性、操縦性と搭載機器により高度に強力で危険な航空機だ」としている一方で、「過大評価はまずい、レーダーで捕捉可能で、破壊することも可能だ」としているため。アメリカの最大の仮想敵国はロシアと中国で、両国は第五世代戦闘機を今後5から10年で実用化するのではないかと見ている。高度防空システムとしてNATOがSA-20とSA-21と呼称するものはロシアではS-300とS-400といわれ、輸出も始まっているが、アメリカ専門家はステルス機で突破可能と見ている。ただし、これら高性能ミサイルの輸出は中国、ベトナム、シリア向けに実施済みであり、イランからも発注があったところである。
もうひとつの考え方はラプター生産を183機で2011年に終了し、実線に投入可能なのは126機しかないというもの。さらにその中で作戦可能なのは100機まで減少する。ラプター183機体制の条件は177機のF-15を2025年まで稼動させて対空制圧任務にあたらせることであり、生産停止は海外販売の道を閉ざすことにもなる。しかし、2014年まで生産を継続すると、その時点では米国経済も今よりは好調となり、作戦可能なF-22の数も180機となる。初期生産のF-35合計68機が加わり、同時にF-22の海外販売の可能性も出てくる。日本とイスラエルは仮に飛行隊一個でも配備できれば周囲の軍事脅威に対する大きな抑止力増加になると発言している。
ロッキード・マーティンはラプターの実戦能力をえさにオバマ政権の支援を引き出したいと考えている。オバマ政権は3月までに同機の生産継続の是非を決定することになっている。生産継続の場合最低20機、さらに空軍が要求機数を再設定すれば60機が想定され、議会も長期予算措置を承認しているが、生産継続の支持獲得には相当の圧力がかかっている。空軍上層部は配備数が増加した場合の運用期間の長さに着目し、20機以上の追加生産の可能性は少ないと見る。ペンタゴン内部の見方はロッキード・マーティンにはC-130JとC-5B改修に加えて、F-35の生産が年間110機に増加するので事業継続は十分可能だとするもの。
コメント:ペンタゴン内部はF-22に対して本当に冷たいですね。すでに生産停止は既定の扱いです。オバマ政権の経済雇用拡大政策に乗じて生産維持を何とか確保したいメーカー側の必死の主張ですが、果たしてどうなるでしょうか。ひょっとすると日本でも再びF-22待望論が出るのかもしれませんが。
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