スキップしてメイン コンテンツに移動

2022年2月3日、ISIS指導者強襲作戦の第一報、デルタフォースが投入され、米軍はヘリ一機を喪失。標的対象は自爆し巻き添え死亡が発生。

(メディア関係者へ ヘリコプター名称はMH60ではありません)


MH60 SYRIA RAID BLACK HAWK DOWN

U.S. DEPARTMENT OF DEFENSE/VIA TWITTER

 

シリアのイドリブ地方でISIS首脳殺害作戦に特殊部隊、ヘリコプター、無人機が動員された。

 

軍は2022年2月3日、シリア北部に特殊部隊をヘリコプターで侵入させ、ISSI指導者アブ・イブラヒム・アル-ハシミ・アル・クライシAbu Ibrahim Al Hashimi Al Qurayshiを殺害した。詳細情報はまだ限られているが、ペンタゴンは軍閥が支配するイドリブ地方のアトメAtmeでの教習作戦は「成功」に終わり、米側に損失はなかったと発表したが、特殊作戦仕様のMH-60一機を喪失した。強襲地点は以前のISIS指導者アブ・バカ・アル・バグダディを米軍が襲ったバリシャ村から15マイル離れている。

 

 

以下の声明をペンタゴン報道官ジョン・カービーが発表した。

 

「米特殊作戦軍団がシリア北西部で対テロ作戦を今夜実行した。ミッションは成功した。米側に人的損害はない。詳細は明らかになり次第発表する」

 

ジョー・バイデン大統領もISIS首脳殺害の作戦血行を命じたことを認め、空爆よりも高リスクの特殊作戦を選択したことを明らかにした。近隣一般市民のリスクを減らすためだったという。バイデンからはホワイトハウスからの生放送に先立ち自身で声明文を発表した。

 

「わが軍の技量と勇気によりISIS首領アブ・イブラヒム・アル-ハシミ・アル-クライシを除去した。米軍部隊は全員が無事帰還した」

 

イドリブ地方の目撃談では作戦は二時間ほどで終了した。米関係者はソーシャルメディア上で動員されたのは回転翼機でMH-60は陸軍のエリート部隊160特殊作戦航空連隊所属でAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターや無人機も投入されたと明らかにした。報道によると、建物近くにヘリコプター2機あるいは3機が着陸し、拡声器で女子児童に退避を命じた。

 

MH-60の一機を現地投入時に喪失した。残骸の写真がソーシャルメディアに拡散している。ペンタゴンも技術上の問題が発生し、同機は着陸せざるを得ず、その後破壊用に爆発物およびF-16戦闘機からの射撃で機体を破壊したと認めている。ただし、同機の部品の一部は無傷のようだ。

 

SOCOM

第160特殊作戦航空連隊のMH-60M

 

「現地時間午前1時に軍用機、ヘリコプターの騒音で起こされた」と攻撃地点にほど近い場所に暮らすアドナン・アボ・モハマドがウォールストリートジャーナルに語っている。「地上すれすれを飛んでいた。戦闘は午前3時ごろまで続いた」

 

バイデン大統領は強襲作戦実行時点でアル・クライシは自爆ベストを着用し、爆発させて自身と家族を巻き添えに死亡したと述べている。以前のISIS首脳アル・バクダディも自爆で子供二人と死亡した。

 

強襲作戦の標的となったのは3階建屋でアトメ近郊になり、その後AFP通信記者が現地を訪れている。写真で激戦の跡がわかり、吹き飛ばされた窓、崩れた天井、壁に残る血痕、屋根にも崩壊部分が見える。ソーシャルメディア上の記事では米軍部隊と敵の地上戦が交戦したとある。アル・クライシは建屋から出ず、米側は予め情報活動で本人の居場所を把握し、建屋を徹底的に調べていたことがわかる。

 

今回の作戦は米中央軍が統括し、2019年のアル・バグダディ殺害作戦以降で最大規模だったらしい。

 

シリア人権監視団(英国に拠点を構える情報団体)からはアル・クライシを標的とした作戦で死亡したのは少なくとも13名に登り、うち4名は子供、3名は一般市民女性だったとする。シリアの民間防衛団体ホワイトヘルメッツは子供6名、女性4名としている。

 

イドリブ地方では複雑な関係の場所で別々の戦闘員集団が活動し、バシャ・アル・アサドの中央政府に対抗する地盤ともいわれる。同地ではベイ特殊部隊の作戦がここ数ヶ月続いており、明らかに別の重要人物を狙っておいr、アルカイダの上級指導者アブドゥル・ハミド・アル-マターは昨年10月に無人機で殺害された。

 

名目上はトルコがイドリブを実効支配中だが、地上を支配するのはハヤト・タヒル・アル-シャムHayat Tahrir Al Sham(HTS)で元アルカイダ構成員の指揮下にある。

 

HTSはアルカイダとつながる急進先頭集団への抗争を展開し、ISISとも対抗している。米政府はシリアのアルカイダ(AQ-S)の名称をフラス・アル-ディンに使っている。HTS、フラス・アル-ディンともに米空爆の標的で、投入されているAGM-114R9Xミサイルは鋭い刃が6枚飛び出す構造で現地で悪名高い。

 

これまでHTSが実は米無人機によるアルカイダ工作員殺害を支援しているとの情報があり、米国と各種戦闘集団との関係が複雑になっていた。今回の作戦では米関係者はHTS戦闘員から地上で反撃を受けたと述べており、HTSが攻撃の対象になったと勘違いして条件反射した可能性もある。

 

シリア政府軍ならびにロシア軍による作戦も繰り返し実施されているものの、イドリブは依然として戦闘員を各種集団に供給しており、安全に作戦を立案実行可能な場所となっている。状況は流動的だが、ロシアとトルコが仕切った休戦が公式には有効とされる。

 

アトメは戦闘員集団に安全な隠れ家となっており、離散家族の収容地もあり、一般市民に紛れ込んでいる。

 

今回の強襲作戦についてバイデン大統領はアル-クライシがシリア北部で最近発生したISISによる刑務所脱獄を主導したと述べている。この事件は先月のことでISIS戦闘員がクルド族が管理するグワイラン刑務所(ハサカ市)に収容される同僚を脱獄させようと激しい銃撃戦を展開した。状況は直ちにエスカレートし、米軍にクルド勢力支援のための空爆要請が出た。

 

AP PHOTO/BADERKHAN AHMAD

グワイラン刑務所脱獄事件後に米軍とシリア民主軍部隊がシリア・ハサカでISIS戦闘員を捜索した。 on January 29, after the attack on Ghwayran prison.

 

脱獄後に戦闘員数百名は再確保されたが、一部はそのまま逃げ、ISISの脅威がまだ残ることをあらためて教えてくれた。ISISは2019年に自ら宣言したカリフ制が崩壊した。

 

「(アル-クライシ殺害の)影響はISISに痛手となろう」と政府高官はCNNに述べ、同指導者は多くの作戦に関わっていたとした。

 

 

Update 2:10 PM EST:

 

新情報で米陸軍のエリート部隊デルタフォースが今回の強襲作戦を主導したとわかった。デルタフォースはこれまで8年に渡り同地で重要人物狩りを展開しており、対ISIS戦を支援してきた。2019年のアブ・バカ・アル-バグダディ殺害もそのひとつだ。米軍の6x6パンダー走行車両別名走行地上移動装備(AGMS)が少なくとも一両グワイラン刑務所脱獄事件後に視認されている。AGMSsはデルタフォース専用なので、同部隊が現地に展開しているのがわかる。

 

また未確認情報だがMH-60ヘリコプターの喪失は地上銃火を浴びたことと機構面の問題のためだとの報道がある。残骸の写真から動悸のレーダーやセンサータレットが機首から除去されているのがわかる。地上の米軍隊員が予め除去してから機体を爆破したのか、現地の別のものが回収したのかは不明だ。

 

国防長官ロイド・オースティンの声明では米軍攻撃で一般市民も巻き添え殺害された可能性を残している。米軍全体としてここ数ヶ月にわたり一般市民の犠牲を発生させていることに批判が集まっており、調査が進行中だ。

 

「この機会に国防総省が民間人死傷を回避することを真剣にとらえていることをあらためて明らかにしたい。今回の作戦は特別に企画され実施され、民間人の被害を最小限とした」「アル-クライシ他は現地で女性児童を巻き添えで死亡させた。だがミッションの複雑さを考えると、我が方の行動も一般市民に損害を与えた可能性は残る)(オースティン長官の声明文)

 

Update 2:20 PM EST:

 

中央軍司令官フランク・マッケンジー米海兵隊大将から今回の強襲作戦の追加情報が出ている。中東研究所シンクタンク主催のヴァーチャル対談の席上で。それによると作戦の目的はISIS主導者の捕獲で、長距離ヘリコプター強襲であったとし、米側から先に出ている内容を繰り返している。同大将からは米支援を受けるシリア内のクルド中心の部隊が今回の作戦成功に貢献下との発言があったが、米軍と共同行動したかについては発言がなかった。

 

ただし、アル-クライシ住居3階での爆発について、米側は本人が自爆ベストを爆発させたものとしており、同大将は「予想を超えた威力」があったとした。ただし、その詳細については語っていない。

 

また地上要員が不時着を余儀なくされたMH-60を意図的に破壊したとし、同機には航空機からも射撃を加え、「機微装備がシリアに残らないよう」にしたという。同機搭載のレーダーやセンサータレットなどの装備品がどうなったかについては語っていない。こうした部品は意図的に除去されていたようだ。

 

米軍による一般市民の死傷者について「今の時点で大きな問題ではないようだ」としたが、調査は展開中だとした。同大将は強襲作戦中に発生した民間人の損害はISISが全て責任があると糾弾している。■

 


Night Stalker MH-60 Black Hawk Lost In Successful 

Raid That Killed ISIS Leader In Syria (Updated)

 

Special operators, helicopters, airstrikes, and drones were all involved in the mission that targeted the head of ISIS in Syria’s Idlib province.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 3, 2022

 



コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM