スキップしてメイン コンテンツに移動

日米同盟の進化、共同技術開発、さらに政治面の結束...CSIS-JIIA共催イベントで林外相が示した今後の方向性。

 

U.S. Indo-Pacific Command

 

 

ンド太平洋地区で敵対する勢力と課題を共有する日本は米国との同盟関係および軍事技術協力により戦略上の優位性を確保し、域内バランスの回復をめざす。

 

 

2022年2月18日に開かれた戦略国際研究センター(CSIS)と日本国際問題研究所(JIIA)共催のイベントに林芳正外相はビデオで登壇し、「インド太平洋のみならず各所で軍事面の動きの加速とともに一方的に力で現状変更する動きに直面している。いわゆるグレイゾーンでサイバー脅威も増大している」「経済力をテコに国益を勝ち取ろうとする国もある。通商関係やサプライチェーンの弱点を利用し、経済で強硬な動きが出ている」と述べた。

 

中国の軍事面での強硬な態度と急速な近代化を米日両国はインド太平洋の安全保障上の脅威と受け止め、中国に技術面での優位性を奪われる事態を恐れる両国は防衛力増強をめざすのはこのためだ。

 

林外相は米国務長官アントニー・ブリンケン、国防長官ロイド・オースティンIII、防衛相岸信夫との1月会談で日米同盟の進化が話題となり、合わせてインド太平洋方面の懸念事項を共有したと述べた。

 

同相は日米同盟による抑止効果、対応力の強化で一致した強い決意を会談で確認し、今後の脅威に対応するとした。中心となる分野には、装備の防御、共同での情報収集監視偵察活動、現実を反映した訓練、柔軟な抑止力手段の選択、戦略的メッセージの発信、両国の共同利用がある。

 

なかでも鍵となるのが日本の戦略防衛文書の方向性を米国にあわせることだと同相は述べた。日本は防衛姿勢を2013年以降初めて強化し、日本自身の国防戦略を見直し、その他防衛関連文書の改定も勧めているとした。

 

JIIAの理事長佐々江賢一郎は新たな防衛政策は2013年以降の中国、北朝鮮の動向を反映すると述べ、防衛力の迅速な整備に主眼を置くとした。

 

小谷哲夫主任研究員は日本の防衛装備供給国として米国が最大だが、防衛装備の国内製造強化を日本政府が目指し、あらたな防衛関連文書にもこれを盛り込むと述べた。

 

ただし、日本の防衛産業単独での防衛力整備は困難だ。「私見だが共同開発、共同生産でハイエンド技術の整備が強まるだろう」と小谷主任研究員は発言した。

 

林外相は技術優位性の確保のため新技術への投資を続けるとし、防衛予算の増額が必要とした。今後十年に渡り、政府は予算支出を増やしていくと述べた。

 

「防衛予算増額なくして国土防衛は不可能とのコンセンサスができている」(林外相)

 

宇宙、サイバー、人工知能、量子コンピュータ、極超音速兵器などで米国と日本は協力し、域内の安全を維持できると外相は述べた。

 

その中で中国と北朝鮮が極超音速技術を急速に拡充している。対抗して日米両国は新たな合意事項を1月に発表し、極超音速ミサイル防衛での研究開発を強化するとした。

 

小谷主任研究員からは極超音速兵器への防衛力強化としてセンサー機能の向上、宇宙空間での能力整備が日米同盟の共通課題に出ているとの発言があった。

 

新技術開発のため、林外相は日本政府は民間企業と経済安全保障の強化に務める必要があると、グローバル規模のサプライチェーンを念頭に発言した。

 

その他の協力分野として政治面での結束があり、米、日、オーストラリア、インドによる4カ国対話(クアッド)が今後の安全保障に不可欠と外相は述べた。

 

「こうした動きで力のバランスを回復できれば、外交の効果が強化され、緊張緩和しつつ永続する平和安定が実現する」と林外相は述べた。■


Japan Seeks to Accelerate Integrated Deterrence with US

2/18/2022

By Mikayla Easley

 


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...