スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナ侵攻に踏み切ればロシアの衰退が早まる....だからプーチンは侵攻命令を下せないのか....だが選択の余地が狭まっている

  

Russian President Putin. Image Credit: Creative Commons.

 

シアのウクライナ侵攻が切迫する状況が2ヶ月続いている。まだ実行に移っていないものの、回避の可能性が狭まってきた。

 

 

来月になれば春雨が降り、現地の地上行動は難しくなる。装甲車両、軌道車両は泥に動きを取られる。また大規模部隊を出動可能状態に維持するには多大な経費がかかる。とくに冬季には。ロシア軍は臨時施設に寝泊まりし食事をとれば相当の費用がかかる。

 

ウラジミール・プーチン大統領がウクライナ侵攻を望むなら、一刻も早く実行すべきなのだが、動きがない。

 

ウクライナ侵攻が遅れている理由

 

 

プーチンが瀬戸際策をしているとの見方が多い。西側外交部門ではプーチンを外交政策の大家と見る傾向がある。無理もない。プーチンは西側を長年にわたりかき回してきた。西側諸国の政治面に介入し、不安を掻き立てきた。トランプの2016年大統領選挙、ブレグジットやフランス右派といったポピュリスト運動を支援してきた。

 

また、プーチンは時間との勝負をしているのか。好戦的態度と脅しで、ウクライナ、NATOのいずれかから譲歩を引き出そうというのか。プーチンにとって最良の結果は、ウクライナでの政権交代、すなわちNATO加盟を公然と断念する新政府の誕生だろう。ウクライナ侵攻は、「ウクライナとロシアは一つの民族、一つの国家であるべき」とのプーチンの常識を覆す結果になる。ウクライナを非同盟でロシアに傾く緩衝国家にすることがプーチンにとって理想的だ。

 

しかし、上記アプローチが裏目に出ることが多くなっている。プーチンのウクライナいじめは、瀬戸際外交としては失敗だ。NATOは、ロシアによる侵攻、NATO加盟の拒否権にともに反対しており、結束度は高い。ドイツでさえゆっくりと歩み寄ってきた。プーチンは逆説的に、ウクライナのナショナリズムを活気づけ、ロシアとの違いを意識させてしまった。つまり、プーチンの選択肢は侵攻か撤退のどちらかに絞られつつある。譲歩なしの撤退は屈辱的なため、やはり侵攻実行が最善の策となる。冷戦後のロシアが地位を失ったとプーチンが深く恨んでいるのは明白だ。ロシアの強硬さと重要度を示すためだけのため、侵攻に踏み切るだろう。

 

ロシアの弱体化

 

ウクライナ侵攻は、ソ連の「栄光」の時代から国力を大きく削がれたロシアが、犠牲を払ってでも解決しなければならない愚挙となる。ロシアが勝つことに異論を唱える人はいないが、費用対効果では侵攻は支持できない。ロシアは、反乱軍/占領後の泥沼化した紛争に苦労するが、広範な制裁にも音を上げないだろう。ロシア人はすでにこの流れを感じ取っている。世論もロシア軍エリートも、無関心かウクライナでの過剰行動に嫌気が差している。

 

皮肉なことに、NATOが戦ってくれない、弱く、半分敵国の隣国ウクライナの占領は国家のロシアにとって大きな負担となり、そこまでロシアを追い込んだ最も責任のある人物がプーチンとなる。プーチンは20年間トップに君臨し、ロシアを無慈悲に統治してきた。ロシアの腐敗は、今や第三世界の破綻国家に匹敵する。GDP成長率と人口増加率はわずか1%前後、一人当たりGDPはヨーロッパ最低レベルであり、平均寿命も同様だ。統治は、寡頭政治、国の財産を盗み取る石油に基づく強権体制である。ウクライナが西側諸国統合を求めるのは当然だ。

 

ロシア軍には国内の産業サプライチェーンがあり、2014年のクリミア半島での停戦後の制裁から逃れるのに役立っている。そして、クリミア併合に投入された特殊部隊は、広く尊敬を集めている。しかし、ロシア軍の大半は徴募兵で、チェチェンなどの紛争での戦闘実績は散々だった。その軍がウクライナで対反乱戦を数年に渡り維持できるかは不明である。1980年代のアフガン反乱で赤軍は非道行為を展開し、心をつかむ真剣な努力もせず、戦争は残忍で勝ち目のない泥沼と化した。帰国したくてたまらない不幸なロシア人兵士たちが、ウクライナで同じように無関心と過剰反応に陥るのは容易に想像できよう。

 

ロシアの衰退で泥沼は更に悪化する

 

大国は「永遠に続く戦争」を短期間なら持続できる。アメリカはベトナムとアフガニスタンで10年以上戦った。フランスはベトナムとアルジェリアで数年戦った。赤軍はアフガニスタンで10年戦った。いずれも愚かな戦いであった。しかし、愚かといえども、勝ち目のない戦いに固執する誤った指導者を支える国家資源があれば、持続可能なのである。

 

ロシアには、不真面目で強気な指導者がいるが、資源はない。韓国より小規模で資源依存の腐敗した経済では、侵略は容易に永遠の戦争になり、その泥沼の余波がプーチンのがたがたの政権を直撃する。だからプーチンは攻撃しないだろう。プーチンは、侵攻のリスクが大きいことを知っていると思いたい。■

 

Russia Is a Nation In Decline: Invading Ukraine Be a Tragic Mistake - 19FortyFive

ByRobert KellyPublished3 hours ago

 

Dr. Robert E. Kelly (@Robert_E_Kelly; website) is a professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. Dr. Kelly is a 1945 Contributing Editor as well. 

In this article:featured, History, Joe Biden, NATO, Putin, Russia, Russia in Decline, Russian History, Ukraine

 


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...