米海軍は055型を巡洋艦と認識していますが、PLANは一貫して駆逐艦と呼んでいます。
055型レンハイ級巡洋艦のVLS二基は、米海軍のMk41VLSより大型だ。
055型レンハイ級は多くの点で中国海軍PLANによる米海軍イージス巡洋艦への対抗策だ。大型重装備の同級各艦は中国空母の護衛を任務とする。新たに入手した情報から同級の建造物が続いているようだ。
8隻完成ずみの055型レンハイ級巡洋艦が存在感を増している。PLAN保有の水上戦闘艦中で最大の戦力を有するは疑う余地なく、新情報として2隻が大連で建造中だと判明した。
055型初号艦は南昌(101)で2017年6月進水し、その後7隻が大連、上海で建造された。排水量13千トンと現在建造中の水上戦闘艦として世界最大だ。米イージス巡洋艦より約25パーセントほど大きい。
20年前の中国艦艇は西側、ロシア双方に大きく遅れを取っていた。米国がイージス搭載防空駆逐艦の建造を進める中で、中国艦は短距離ミサイルしか搭載していなかった。だが055型の登場で米海軍タイコンデロガ級イージス巡洋艦に匹敵する艦が生まれた。
米海軍のイージス戦闘システムの中核は強力なAN/SPY-1パッシブ電子スキャンアレイ(PESA)レーダーだ。大型のフェイズドアレイで、各艦に4基搭載し全方向を監視する。これに高度自動化と統合機能を組み合わせ、優秀な状況認識能力が実現する。これまで中国の装備品は数十年遅れている観があった。
大連で艦艇二隻の建造が始まっている。分析したところ055型巡洋艦二隻のようだ。
これが2000年代になると変化し、中国艦艇が一気に近代化した。そのひとつが052C型ルーヤンII級で中国版のイージス駆逐艦とされる。052型は052D型ルーヤンIIIに発展し、346Aフェイズドアレイレーダーを搭載した。AN/SPY-1と異なり、これはアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)だ。
055型には346B型の最新装備が搭載されている。イージスと実戦でどんな違いがあるのかは非公表だ。ただ明らかなのは中国製装備品が成熟度を上げており、確実に改良されていることだ。中国部隊にも同様の状況認識能力が実現していると考えてよい。
重武装
高性能レーダーに組み合わされる垂直発射管システム(VLS)が各種兵装を運用できる。対空ミサイルに加え、対潜、対地攻撃用だ。055型のVLSはタイコンデロガの122より少ない112だが、セルは大型になっている。ただし兵装装てん方法が異なる。この違いは技術の差というより運用方法と優先順位の違いだろう。
防空装備はきわめて類似している。中国のHHQ-9ミサイルにはロシアS-300の影響が色濃く、米スタンダードミサイルと似た役割を想定している。米海軍ではESSM短距離防空ミサイルも搭載しており、VLSセルに短時間で装てん可能だ。中国055型にはこれに匹敵する装備はないと思われるが、かわりに24連装のHHQ-10短距離装備がつく。米中ともに近接対空装備CIWSを搭載する。
また中国のYu-8対潜ミサイルはおおむね米海軍のVL-ASROCに近い。
狙いが違う
中国艦では対水上艦戦に重点を置いている。このためYJ-18長距離超音速対艦ミサイルを搭載している。同ミサイルと比較するとタイコンデロガ級のハープーンはいかにも小型で旧式に映る。ハープーンは最大8発搭載するが、055型はもっと多くのYJ-18を積める。
一方でタイコンデロガ級はトマホーク対地攻撃巡航ミサイル(LACM)を搭載する。055型もLACMとしてYJ-18を利用するようだ。中国には巡航ミサイルを多数そろえており、055型にLACM運用能力がないとは考えにくい。
そして兵装面で大きな違いは対弾道ミサイル(ABM)能力だ。米イージス艦はRIM-161(SM-3)ミサイルで中距離弾道ミサイルの迎撃が可能だが、中国艦にはこれに匹敵する装備は導入していないようだ。
中国独自の装備として055型で対艦弾道ミサイル(ASBM)を将来導入するとの予想がある。この場合は大型といえども現行VLSの改装が必要となろう。
米巡洋艦は一世代前の設計
米中の巡洋艦で最大の違いは艦齢だ。055型は外観、設計思想で一世代新しい。055型の傾斜つき構造とクリーンな艦橋まわりはタイコンデロガ級の角ばった外観と対照的だ。ただ外観だけで戦闘艦の能力は比較できない。とはいえ、米艦が長期にわたり供用されていることは明白だ。
タイコンデロガ級は40年近く供用され、退役があと数年というところになってきた。一番古いUSSバンカーヒルの退役は来年の予定だ。各艦には、巡洋艦の後継艦はない。かわりにアーレイ・バーク級駆逐艦の最新仕様艦が想定される。
アーレイ・バーク級の最新版フライトIIIはタイコンデロガ級より新しいものの、055型と比較すれば基本設計が1980年代と古い。かつ、艦容は中国艦より小さく、VLSセル数も少ない。もちろんそれだけで米駆逐艦が055型に劣るわけではない。多くの面で両艦は近い存在だ。
重要なのは、艦設計を比較しての議論があることだ。20年前は比較対照がなかった。今や、中国艦艇は、そのような議論を成立させるだけの威容を示している。
問題は現在大連で建造中の最新055型が先に建造された8隻と異なるのかだ。ASBMはじめ新装備を搭載する可能性は十分ある。■
Bigger Than A US Navy AEGIS Cruiser: China Is Building More Type-055s - Naval News
H I Sutton 12 Jan 2022
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