韓国大統領選挙で朝鮮半島統一問題が再浮上
韓国の大統領選挙では、特に外交政策で左右の選択となる展開が多い。保守系候補が北朝鮮へ先制攻撃を示唆し、波紋を広げている。左派候補者は逆に、南北朝鮮は「事実上」統一されるべきと示唆した。北朝鮮をめぐる韓国内の左右・ハト派の分裂には根深いものがある。
北朝鮮への先制攻撃は、同国が明らかに攻撃準備に入った証拠がない限り、ひどい考えだ。平壌の考えるレッドラインは分からない。2017年、ドナルド・トランプ前米大統領が「炎と怒り」と「血まみれ」で北攻撃を口にし、タカ派ですら反対したのは、無制限のエスカレーションに暴走すると容易に想像できたからだ。しかし、朝鮮半島統一は、はるかに興味深い政策構想だ。
南北が近づかなければ統一できない
朝鮮半島が分断されたままになっている最大理由は、両国の統治方式があまりにもかけ離れていることである。韓国は(ほぼ)自由民主主義国家であり、別の自由民主主義国家(米国)と同盟を結び、その他多くの国とも提携している。北朝鮮は正反対である。オーウェル的で、専制的で、カルト的で、残忍だ。さらに北朝鮮も類似の独裁国家である中国と同盟を結んでいる。
両者が政治的にあまりにも異質なため、両国間の協力や交流が日常的に困難になっている。ドイツとの対比が示唆に富む。韓国と同様、ドイツも冷戦で分断された。しかし、東ドイツは、北朝鮮のような1984年風の恐ろしい世界に陥らなかった。そのため、両ドイツ間の交流はある程度可能だった。これに対し北朝鮮は、間違いなく史上最悪で最も奇妙な全体主義カルト国家になった。北朝鮮との交流は、そのパラノイア、極端な政治、蔓延する汚職や犯罪などのため、日常レベルで進まない。
韓国の政治家(通常は左派)が迅速な統一を求めるのは実に奇妙だ。現状のまま南北統一すれば、茶番劇になるか、あるいは韓国の自由民主主義を侵し、韓国の保守派から大反発を招くのはもちろん、韓国憲法にも違反する可能性が高い、実効性が皆無に近い上辺だけの連合となるだろう。
統一のあるべき形とは
このため、統一のためには、南北が近づく必要がある。ドイツ統一がこの方法を用い、東ドイツが西ドイツに近づいた。1989年にベルリンの壁が開くと、翌年、東ドイツは自由化され、自由選挙で自由化と統一を支持する結果が出た。共産主義と国家分裂は敗退した。東ドイツは自由主義と統一を選択し、東西ドイツは統一可能な水準になった。そして、実現した。
南北の平和的統一にも、同じことが言える。南北朝鮮では、北朝鮮が極端なため、体制格差が大きく、南北を近づけるのは困難だ。もちろん形式的には、韓国が北朝鮮に似てくることはあり得るが、その可能性は極めて低い。韓国の有権者は、自由民主主義を広く支持している。
となると、真の統一とは、北朝鮮が韓国のようになること、つまり、北朝鮮の自由化、少なくとも穏健化を意味する。その第一歩は、支配者である金一族の退陣であり、北朝鮮が極端な全体主義専制政治から穏健な権威主義独裁政治へ「卒業」することだろう。これは極めて重要なポイントである。権威主義的な北朝鮮は、おそらくミャンマーのように将軍連が統治し、独裁政権や軍閥でありながら、道徳的・政治的に大きく改善されることになるであろう。世界には劣悪な独裁者が多数いる。それでも、北朝鮮の過激さよりは道徳的に好ましい。
どうすれば統一できるか
北朝鮮を全体主義から権威主義に「改善」する方法がわかる人はいない。金正恩の北朝鮮支配は確実で安定している観がある。就任10周年を迎えたが、外部コメントのほとんどすべてが、金正恩の統治は安定し、父親や祖父と同じ全体主義的性格という点で一致している。金正恩は体制内の反対勢力を慎重に買収、または清算してきた。
したがって、韓国の政治家がそのような国との統一を語るとき、政治的に空虚なレトリックか、有権者を集めるため民族主義者の同情心を利用しているか、あるいはどうしようもなく非現実的かのいずれかである。両朝鮮の連邦制を想定すれば著しい困難さが思い浮かぶ。対北朝鮮国連制裁はどうなるのか、南北のまったくちがう政治体制がどう相互作用するのか、などである。
連邦制となれば、機能不全に陥った北朝鮮経済に韓国が補助金を出し、他はほとんど変わらない事態に陥る可能性が高い。事実上、韓国納税者が北朝鮮を援助することになり、韓国で誰も支持しない不条理な結果となる。統一は、戦争や北朝鮮崩壊がない限り、まだ遠い先の話だ。■
Korean Unification: What Would It Actually Take? - 19FortyFive
ByRobert KellyPublishedJanuary 31, 2022
Dr. Robert E. Kelly (@Robert_E_Kelly; website) is a professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. Dr. Kelly is now a 1945 Contributing Editor as well.
In this article:2022 South Korean Presidental Election, Kim Jong-un, Korea, Korean Reunification, Korean Unification, North Korea, South Korea
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