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プーチンが核兵器使用を口にする理由。ボルトン元国連大使が解説。ロシアの状況が予想以上に悪い。情報線宣伝戦に注意すべきだ。

  

 

 

クライナ侵攻が想定どおりに迅速に展開していないためか、ウラジミール・プーチンが賭け金をさらにあげようとしている。西側エリート層の心拍数、血圧をあげようというのか。2月27日日曜日の発表でロシア核抑止部隊に高い警戒態勢を取らせる様子を公開し、国内外に見せつけた。

 

この発表で抑止体制が引き上げられるのかは不明だし、情報操作以上の実効性があるか疑わしい。過剰反応したり、逆に反応しないとプーチンの思うつぼだ。

 

クレムリンの視点でいえば、ウクライナ戦で勝てない中での宣伝戦としては異例なほどの遅出しとなった。侵攻開始の先週木曜日以来、モスクワから公式発表は極めて少なく、あっても大部分が差し障りのない内容に終始していた。これに対し、ウクライナ側は中央地方問わず情報を公開し、通常の報道発表とソーシャルメディア双方を使っている。西側メディアもウクライナ報道を増やしており、映像画像さらに一般ウクライナ市民、兵士への取材で良いニュースの拡散に一役買っている。ロシア国内からも、戦線の裏側まで報道しており、部分的ながらモスクワはそうした報道の規制に成果を上げている。

 

例えば、スネーク島のウクライナ守備隊は、ロシアの降伏勧告を受けて、キエフが主張するように殺害されたのか、それともモスクワが言うように捕虜になったのか、プロパガンダ戦争の例にもれず、真偽は疑問のままだ。ウィンストン・チャーチルは、「戦時中に真実は非常に貴重となるため、嘘の護衛を真実に常に付けるべきである」と正しく述べた。不愉快だが広く現れる必要性をウクライナが正しく認識していないとしても、誰も驚くことはないだろう。

 

プーチンは、ロシアの情報戦で核のカードを使うことで、目的を2つ達成したいのだろう。第一に、プーチンは国民に訴えかけ、NATOの脅威と第二次世界大戦以来の歴史的不満から、ウクライナ侵攻以外に選択肢がなかったと納得させようとしている。ロシア国内のプロパガンダキャンペーンは不調で、プーチンは市民の注意を引き、自分の旗の周りに人々を集めるに、もっとセンセーショナルな材料が必要と判断したのだろう。 そして、プーチンがスペードのエースを見せたとウクライナで戦闘中のロシア軍が知れば、士気が下がるはずはない。ただし、この作戦がロシア国内でうまくいくかは別問題である。

 

しかし、プーチンの真の読者層は、彼が弱腰と見るアメリカやヨーロッパの政治指導者であることは間違いないだろう。望ましいプロパガンダ効果を外国にもたらすために重要なのは、ロシアの軍事ドクトリンが戦術核兵器の先制使用を明確に想定し、強調していることを想起させることだ。核兵器に触れただけで怯える西側諸国の人々の数は相当数に上るが、これがプーチンの主なターゲットだ。彼がどこまで成功するかは、すぐにも分かるだろう。

 

NATOがウクライナ政府に武器など緊急支援を続けることで揺るぎはないはずだ。ウクライナ=ベラルーシ国境で開かれるという和平交渉も含め、ロシアと交渉できることは何もない。米国がここで迷いを見せれば、ウクライナ危機で予想以上に不屈の精神を発揮している欧州が動揺を示すだけである。

 

プーチンがウクライナ戦争でロシアの核戦力の使用を述べたが、本気である可能性が残る。おそらく、欧米メディアの報道以上に、ロシアの事態は悪化しているのだろう。プーチンは、軍事的大失敗となれば、権力の座から追われ、自分が仲間たちとが作り上げてきた政権全体が崩壊すると懸念しているのかもしれない。こうした絶望的な状況で、核兵器を使用すれば、全く新しいシナリオが生まれる。プーチンは、ロシアの通常兵器による軍事的失敗を他人のせいにし、1945年以来初めて戦時中に核兵器を使用する過激なまでの不確実性を活用し、権力にしがみつこうというのだ。

 

このシナリオが現実になることはないはずだが、深く憂慮すべきなのは明らかだ。バイデン政権は、プーチンの侵攻開始前に、クレムリンの能力と計画に関する情報を電波に乗せて流してきたが、抑止効果がなかったのが残念で、乱発しすぎたかもしれない。しかし、今こそ機密情報の解除を利用舌情報線を展開すべきだ。

 

その間に、ウクライナ他の地域でも、こちら側の課題は多い。敵対勢力がこちら側のウクライナ関連での優先事項を利用しようとするかもしれない。プーチンの核の脅威は真剣に評価する必要があるが、反射的に対応する必要はない。■

 

Atomic Bluff? Why Putin Placed Russia's Nuclear Forces on High Alert - 19FortyFive

ByJohn Bolton

 

Ambassador John R. Bolton served as national security adviser under President Donald J. Trump. He is the author of “The Room Where It Happened: A White House Memoir.” You can follow him on Twitter: @AmbJohnBolton.

In this article:featured, High Alert, John Bolton, NATO, Nuclear Weapons, Putin, Russia, Ukraine

 


コメント

  1. ぼたんのちから2022年3月1日 10:10

    記事の通り、元スパイの暴走老人が「本気である可能性」があり、核兵器の使用は、恐らくロシア軍の敗北が明らかになった時で、ウクライナを攻撃する可能性が高いと思える。
    NATO加盟国を攻撃すれば、止め処のない核の応酬になるから、避けると推測するが、これはある程度常識があり、理性的判断が必要となるが、今のプーチンにそれがあるか疑問である。
    プーチンは、ウクライナをナチ化した危険な国家と妄想しているから、ロシア防衛のためにはウクライナに大きな打撃を与えておく必要があると考えているだろう。
    プーチンの、おかしな「常識」外のウクライナ侵略の判断から見ると、核兵器使用の極めて危険な途を選ぶ可能性を捨てきれない。
    さらに悪いことに、近年、小爆発力の戦術的核兵器の出現により、核兵器使用のハードルが下がってしまったと思える。ロシアは、ウクライナで通常兵器最大の爆発力を持つ燃料気化爆弾を既に使用したとの報道があり、ロシア軍が決定的な敗勢となった場合、次は核兵器なのかもしれない。
    期待はしないが、ロシア国家と国民による「正常化」が望まれる。

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