スキップしてメイン コンテンツに移動

ウクライナ「特別軍事作戦」でやはりロシアは砂漠の嵐作戦に影響を受けたミサイル集中攻撃で一次攻撃を行った。投入されたと見られるミサイル装備をまとめた。

 




CSIS.ORG



2022年2月24日ドンバス地方で始まったロシアのウクライナでの「特別軍事作戦」は、全国規模に拡大し、スタンドオフミサイルが多用された。これまでロシアの軍事作戦では、西側諸国のように精密誘導ミサイルが多用されてこなかったが、今回のウクライナ攻撃では、多種多様な最新鋭のミサイルが使用されている兆しがある。少なくとも当初は、初期目標を達成するため最も効果的でリスクの低い選択肢として、スタンドオフミサイル攻撃が好まれているのは明らかだ。「ドアを蹴破る」と呼ばれる、30年以上前の砂漠の嵐作戦で米国が開発した作戦方法にならっている。



現地時間5時に始まった軍事作戦は、陸・海・空から発射のスタンドオフミサイル攻撃を初動とした。指揮統制施設、防空施設、空軍基地12箇所、黒海の港湾都市オデッサの施設などを標的とし、ウクライナの自衛能力を低下させ、司令部の状況把握と通信手段を奪うことを目的とした。


以下、ロシアの陸上攻撃用巡航ミサイル、弾道ミサイル、空中発射型スタンドオフミサイルを検証してみた。


 

3M14 カリブル Kalibr


ウクライナ国防省によれば、第一段階のロシアの攻撃に3M14カリブル対地攻撃巡航ミサイル(LACM)が30発含まれていた。同ミサイルは、シリア内戦に介入したロシア海軍も使用しており、ロシア海軍の最重要兵器の1つだ。


西側でSS-N-30Aサガリスとして知られる亜音速3M14カリブルは、990ポンド高爆発弾頭を搭載し、930~1,550マイルの射程距離と推定される。


ウクライナ西部のイワノフランキフスク空軍基地がカリブルによる攻撃を受けた映像が流れている。


3M14は、対艦巡航ミサイルや対潜水艦ミサイルを含む、カリブル・ファミリーの一角で、3M14は、共通垂直発射システム(VLS)から発射され、各種水上艦や潜水艦に搭載できる汎用性がある。海防艦ほどの大きさの艦船にも搭載でき、強力な打撃を与える。ロシア海軍は、通常弾頭により長距離の地上固定目標の攻撃に注力している。


ウクライナ攻撃に投入された3M14カリブルミサイルは、黒海から艦艇が発射している。黒海艦隊はクリミアのセヴァストポリを母港とし、3隻のプロジェクト11356R/Мアドミラル・グリゴロヴィッチ級フリゲート艦と4隻のプロジェクト21630ブヤンM級海防艦に加えて、コンテナ型カリブル発射装置を運用可能なプロジェクト22160の3~4隻で構成されている。


黒海艦隊はまた、カリブルミサイル(潜水発射式の3M14K型)を発射できるプロジェクト636.3改良型キロ級ディーゼル攻撃型潜水艦も6隻保有している。


カリビルは、陸上攻撃ミサイル「トマホーク」の初期型に匹敵する。

 

空中発射式巡航ミサイル Air-launched cruise missiles


現時点で、ロシアが発射した巡航ミサイルが航空機発射式だったとする絶対的な確証はない。しかし、米国の国防当局者は、攻撃第一波に重・中型爆撃機75が含まれていたと述べている。重爆撃機とは、Tu-160ブラックジャックとTu-95MSベアH爆撃機、おそらくTu-22M3バックファイア-Cを指すと思われる。中型爆撃機とは、Su-24フェンサーやSu-34フルバックのような攻撃機だろう。このうちTu-160とTu-95MSは空中発射巡航ミサイルを搭載可能で、少なくとも前者が投入されたのは確実だ。


ロシア航空宇宙軍は通常型空中発射式巡航ミサイル2種類を保有している。


Kh-101 (AS-23A コディアクKodiak) は最新のステルス亜音速巡航ミサイルで、最大射程1,870~2,480マイルと報告されている。Kh-101は、ロシアのシリア作戦で初めて使用され、Tu-160とTu-95MS爆撃機が発射した。



CSIS.ORG

Kh-101s on a Tu-95 Bear.




旧世代装備としては、Kh-555(AS-22 クルーグKluge)がある。これは、Kh-55SM(AS-15 ケントKent)亜音速巡航ミサイルの核弾頭を通常弾頭に置き換えた。同ミサイルは、期待一体型燃料タンクを装着すれば、航続距離を約1,860マイルまで伸ばす。

 

イスカンデル-M Iskander-M


巡航ミサイルと同様に、作戦開始後数時間にウクライナを標的に弾道ミサイルの発射が確認されたとの報道がある。一方、米国防総省は、本日の戦闘の最初の数時間にロシアから100発もの弾道ミサイルが発射されたと評価している。


9K720イスカンデルM短距離弾道ミサイルは、西側ではSS-26ストーンとして知られ、ロシアがこウクライナ周辺に配備した多くの兵器システムの一つだ。


ウクライナ国防省は、イスカンデル-Mは 「重要標的の破壊」に投入される可能性が高い重要装備と指摘していた。


イスカンデルMシステムは9M723弾道ミサイルを発射し、公式発表の射程距離は310マイルだが、それ以上とする証拠もある。弾頭は最大1,500ポンドで、高性能爆発弾または子弾頭が通常だ。別のオプションに燃料空気爆発物やバンカーバスターがあると伝えられる。核弾頭は、特別部隊が保有するが、イスカンデル-Mも核弾頭が使用可能だ。


9M723ミサイルは準弾道軌道を使用し、飛翔中の機動も可能との報告があり、強力なミサイル防衛能力を持つ相手にも対応が課題となる。防御力が最高で強化された目標に同ミサイルが使用された可能性が高い。


イスカンデル-K Iskander-K


イスカンデルシステムは、輸送機・発射台と支援車両を共通とし、9M728巡航ミサイルも発射でき、イスカンデル-K(SSC-7サウスポー)とも呼ばれる。ロシアの公式発表によると、同ミサイルの射程は、1987年の中距離核戦力(INF)条約で定めた500km(310マイル)の制限内に収まっている。


同ミサイルは、初期段階において重要標的の攻撃に理想的であるため、今回の作戦で使用されたという未確認の報告がある。


トーチカ Tochka


冷戦中に開発されたトーチカ(SS-21スカラベ)は、FROG(Free Rocket Over Ground)シリーズに代わる戦場配備用の移動式短距離弾道ミサイル(SRBM)だ。トーチカ-Uの最新型は、射程距離が最大75マイルで、約1,000ポンドまでの各種弾頭を搭載する。


今回の戦闘では、ロシアが9N123K子弾頭を搭載したトーチカが投入されたことが確認されている。


Kh-31P


超音速の対レーダーミサイルで、スタンドオフ射程を持つKh-31P(AS-17Aクリプトン)は、実戦使用が明確に知られていないが、今回のウクライナ作戦の初期段階で使われレーダー装備をノックアウトしたと思われる。



Kh-31Pはもともとパトリオットなど西側防空システムを打ち負かすために作られたが、各種パッシブ・レーダー・シーカー・ヘッドに対応でき、ウクライナが運用するソ連時代のレーダー・システムに照準を合わせたと思われる。


同ミサイルは主にSu-24とSu-34攻撃機、およびSu-30SMとSu-35S含むフランカー・ファミリーが採用している。クリプトンミサイルは、対艦ミサイルとしても使用可能である。


BOEVAYA MASHINA/WIKIMEDIA COMMONS

An exhibition model of the Kh-31 missile.


原型のKh-31Pは、最大射程距離70マイル弱で、ラムジェット推進で最大マッハ3.5の速度で飛翔する。2012年から運用が始まった最新型Kh-31PMは、高高度・高速で発射された場合の最大射程が約150マイルに伸びている。


今回の報道には、ロシアが大規模なウクライナ侵攻に以前も使用したされるスタンドオフミサイルが含まれているが、国防総省は、クレムリンの軍事能力の全容はまだ解明できていないと考えている。初日の夜間に攻撃された標的の被害が確認され、2日目も作戦が続くと、多数のミサイル型式が使用される可能性が強くなる。■


These Are The Standoff Missiles Russia Used To Open Its War Against Ukraine

Russia used its growing arsenal of precision standoff missiles to hit key targets at the start of its invasion of Ukraine.

BY THOMAS NEWDICK FEBRUARY 24, 2022




コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ