スキップしてメイン コンテンツに移動

★この装備はなぜ実現しなかったのか、配備されていたらどうなっていたか

The Navy Had a Plan to Build a Mini 'B-2 Bomber' To Fly from An Aircraft Carrier




February 1, 2018


兵器体系が消えるのにはいろいろな理由がある。登場時期が悪いこともあり、予算が厳しい状況とか取り扱い人員に難がある場合もある。あるいはペンタゴンの官僚主義の犠牲になったり、各軍の対立にまきこまれることもある。また発想そのものに難があり日の目を見ないこともある。同様に実は低性能の防衛装備が追及を受けずにそのまま居座ることもあれば、隙間の存在になり生き残ることもある。
この記事では正式採用されなかった装備五種類に脚光を当てるが、生き残っていれば相当に変身していたかもしれない装備もある。変身ぶりで戦争そのものの様相は変わらなかっただろうが(勝敗は技術だけで決まらない)、波及効果が国防産業全般に広がっていた可能性は考えられるし、米軍の戦闘の仕方や調達方法でも変化を生んでいたかもしれない。ただし以下のすべての装備が優れていたわけではなく、取り消しにはそれなりの理由が見つかる。


AH-56シャイアン:
1960年代はじめ、米陸軍はヘリコプター部隊の真価に気づき始めた。第二次大戦末期にヘリコプターは投入されていたが、朝鮮戦争で偵察や傷病兵搬送に広く使われはじめられた。機体技術が次第に発展すると高性能ヘリコプターで広範なミッションをめざした。
その花形になるはずだったのがAH-56シャイアンで画期的な設計で高速飛行と攻撃力の両立をめざした。シャイアンで輸送ヘリコプターの援護にあて、地上攻撃支援や単独攻撃を想定した。とくに推進機構がすぐれ時速275マイルをめざした。
だがそのシャイアンは自らの目標に倒れてしまった。技術が未成熟で初期試作型は問題の山に直面、墜落もした。空軍はシャイアン構想が気に入らず、陸軍が近接航空支援任務を奪うと疑った。空軍は固定翼攻撃機を提案しこれがA-10になったが、シャイアンをつぶすためだった。ヴィエトナム戦争で国防予算が厳しくなり、予算は戦闘継続に流用された。
シャイアンは制式化されなかったが、数年後に陸軍はAH-64アパッチを求めてきた。このためシャイアン取り消しは高性能攻撃ヘリコプター出現を遅らせる効果になっただけだが、アパッチは通常型機構の採用でシャイアンよりはるかに安全度が高い装備となったが、逆に陸軍航空戦力の発展性にブレーキをかける効果になった。


B-70 ヴァルキリー:
B-70ヴァルキリーにはオペラのような展開が似合う。当初B-52ストラトフォートレス、B-58ハスラーの後継機として想定されたB-70は高高度マッハ3でソ連防空網を突破する機体として企画された。先の大戦中の爆撃機攻勢を経験した「爆撃機マフィア」のお気に入りのB-70こそ空軍の将来像の象徴だった。
B-70は美しい機体で、むしろ宇宙船のような姿だ。試作機がデイトンの米空軍博物館に残る。


だがヴァルキリーはとても高価な機体でその値段が命取りとなった。まずアイゼンハワー大統領が、その後マクナマラ国防長官がICBMでソ連本国に核兵器を届ける性能が向上する中でこれだけの出費で重爆撃機を作っていいのかと疑問を呈した。ソ連の迎撃装備の性能向上さらに地対空ミサイルの登場でB-70の任務遂行は当初より危険になっていった。


わずか二機しか製造されず、しかも一機をPR撮影中に喪失し、空軍は生産を終了した。15年後にB-1Bが就役したが同機の特徴を残している。


B-70が空軍にどんな影響を与えていただろうか。極めて悪い影響しか思いつかない。戦略爆撃機を一種類増やして予算を使えば戦術航空機材やミサイル部隊にしわ寄せが行っていただろう。B-70をラインバッカーI、II作戦で北ヴィエトナム空爆させていたかもしれないが、B-52以上の戦果はあげられなかったはずだ。B-52とB-1Bがともに驚くべき柔軟性をミッション実施や改修で示したのは乗員がそれぞれ4名、5名と多いのも理由だが、ヴァルキリーは2名運用前提だった。実施していれば三十年間の深い穴を生んでいたはずの調達を取り消すことでマクナマラは空軍を救ったと言える。


A-12アヴェンジャー:
空母運用のステルス攻撃爆撃機があればどうなっていたか。1980年代中ごろに米海軍は愛されながらも脆弱性が目立ってきたA-6イントルーダー後継機種を模索していた。ステルス技術をもとにマクダネル・ダグラスはA-12アヴェンジャーを作った。亜音速「全翼機」爆撃機はまさにB-2スピリットの縮小版の趣だった。ステルスと空母運用に必要な柔軟性を組み合わせたA-12は他に例のない長距離攻撃能力を実現するはずだった。空軍もA-12に関心を示し、F-111アードヴァークの後継機に検討したほどだった。


ただし問題があった。初期ステルス効果への期待は楽観的すぎた。また改修で機体重量が増えた。出費もどんどん増えたが機体は一向に飛ばなかった。だが最大の問題はアヴェンジャーの設計製造サイクルが冷戦終結時になったことだ。国防予算緊縮で国防長官ディック・チェイニーはA-12を中止し低リスク事業を優先させた。


中止の影響は今も残る。高性能ステルス攻撃機のかわりに海軍はスーパーホーネットで手を打ち、改修を加えつつ供用中だ。ステルス機の必要からF-35Cが生まれたが、F-35事業は「大災難」と「歴史的大災難」の中間を漂っている。かりにF-35Cが使い物になっても、スーパーホーネット採用で長距離攻撃能力を断念してしまったことに変わりない。空軍はA-12と類似点の多い次世代爆撃機を開発中だ。A-12を葬って米海軍空母航空隊の能力は変質し、その影響はこれからも続く


将来型戦闘システムズ:
21世紀初頭に軍事革命(RMA)理論から陸軍n「将来型戦闘システムズ」が生まれた。ひとことでいえばRMA理論を近代戦に応用して精密誘導砲弾、高速情報処理、リアルタイム交信、全般的センサー性能を組み合わせて陸軍の戦闘方法そのものを変貌させようとした。将来型戦闘システムズは兵器、車両、センサーを組み合わせてあらゆる戦闘場面で殺傷力を決定的に高めようとした。陸軍はこのシステムでセンサーと砲を組み合わせたり、攻撃力を増進しながら被探知性を減らそうとした。陸軍は軽量ながら足腰の強い旅団が生まれるとFCSに期待した。
だがブッシュ政権が米陸軍をイラク戦に投入した。イラクではFCS開発に深刻な影響が生まれた。知的資源は戦闘にどう勝利するかよりFCSコンセプトを極限まで考えることに費やされた。戦闘から各種システムが生まれたがどれもFCSコンセプトに合う存在にならなかった。おそらく一番重要だったのは戦闘の進展でRMA理論に疑問が生まれたことで、非正規戦闘員が最先端技術を駆使する米軍に多大な損失を与えたことだ。


FCSはゆっくりと死に向かった。システムにシステムで対応する考え方は戦場で必要な装備を一つずつ整備するニーズに勝てなかった。陸軍はイラク、アフガニスタン戦で新旧装備取り混ぜて戦い、そこには将来の展望の入る余地はなかった。FCS構想の個別構成部品はまだ残っているが、構想は予算と軍の現実の前に屈服した格好だ。


制海艦:

超巨大空母数隻の代わりに海軍が小型空母の大量の建造に乗り出していたらどうなっていたか。第二次大戦中に英海軍、米海軍は護衛空母を大量投入し、対潜戦や上陸作戦の支援にあてていた。


1970年代初頭にエルモ・ズムワルト海軍大将が制海艦(SCS)構想を提唱し、小型空母で海上交通路をソ連の長距離攻撃機や潜水艦から守うろとした。超大型空母の建造費高騰と長年活躍してきたエセックス級空母の退役を受けてズムワルトは低コスト解決策として大型空母群の航空運用能力を一部割愛した形を想定した。護衛空母は大西洋の戦いで有益な働きを示し、制海艦も同様にNATO対ワルシャワ同盟の戦いで効果を上げると期待したのだ。


米海軍は構想をヘリコプター空母USSグアムで実証しようとしハリヤー戦闘機まで加えた。最終的に海軍は新型艦建造費と超大型空母建造へのリスクが出ることを勘案して構想を退けた。


ただしタラワ級ワスプ級の大型揚陸艦が制海任務に代わる存在になる。名称こそ強襲揚陸艦だが米海軍は制海艦を取得しており、もっと広い範囲の任務を与えているのだ。また他国に小型空母を建造させてSCSが想定した任務を任せればよい。英国、スペイン、イタリア、日本が本質的にSCS任務を果たすことになる。


制海艦を追い求めると海軍戦力構造の変更につながり、海軍航空兵力でも変化が生まれる。最大の違いは用兵思想で、制海艦で海軍航空部隊が国際安全保障に与える役割が変わっていただろう。小型空母で多様な任務に効果を生む能力でマハン流の大海軍から自由になれるかもしれない。また最新CVNの建造費が膨大になっていることから、SCS構想で海軍兵力投射の在り方も違ってくるかもしれない。


結論:
技術は疑いなく重要だが、個別の技術結果が戦術効果で決定的に有利になることはまれだ。むしろ、技術革新や技術要素の選択で軍事組織や広義の軍産複合体は戦争への対応が決定される。それぞれのシステムで画期的な組織上の役割や優先順の見直しがあってしかるべきだ。また各装備の取り消しで性能に大きな穴が開き、その穴を埋めるべく画期的な手段が必要となることが続いている。


選外:
USSユナイテッドステーツ級空母、USSモンタナ級戦艦、USSレキシントン級巡洋戦艦、B-49、F-23「ブラックウィドウ」、F-20タイガーシャーク。

Robert Farley is a senior lecturer at the Patterson School of Diplomacy and International Commerce. His work includes military doctrine, national security, and maritime affairs. He blogs at Lawyers, Guns and Money and Information Dissemination and The Diplomat. Follow him on Twitter:@drfarls.

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ