スキップしてメイン コンテンツに移動

★冷戦時、ソ連製装備品はこうして米国の手に入っていた


This Is How the CIA Got Its Hands on Some of Russia's Most Powerful Weapons CIAはロシア最強兵器をこうして入手した



 




February 9, 2018


戦時に思わぬ宝が手に入ったことがあるようだ。一方の陣営が新兵器を登場させると相手陣営はなんとしても入手して分析の後、リバースエンジニアリングするか敵陣営と戦う戦闘員に供与しようとした。
米国はこの動きを海外軍事探求(FME)と名付け、国家安全保障アーカイブでロシア製装備の入手が広く行われていたことがわかる。
 一例をあげると1951年の米空軍情報部報告がソ連のMiG-15を入手した経緯を述べている。1951年7月9日、平壌北西でのドッグファイトでMiG-15パイロットが機外脱出した機体は朝鮮半島西海岸の浅瀬に墜落したのが目撃された。英軍機が墜落地点を確認したが、米空軍は機体回収できなかった。
 直後に英米合同の任務部隊が機体回収を再度試みた。やはり回収しようと共産軍の発砲はあったが英米チームはほぼ機体全体を回収でき、米国に送付し分析した。その他のソ連製機体も回収されており、Yak-28ファイヤーバー迎撃戦闘機は西ベルリンで1966年4月に墜落した機体だ。
 中でも一番有名な事案が1960年代初頭にあり、CIAがメキシコで展示中のソ連ルナ衛星を「拝借し」写真撮影したことだ。1965年にはCIAが新型Mi-8輸送ヘリコプター一機を手に入れ、別件ではミンスク-2デジタルコンピューターを100千ドルで入手しようとした。(もちろん成功している)
 冷戦期には敵味方が常に入れ替わっており、第三世界に供与した兵器が同盟関係の変更で反対陣営の超大国の手に渡ることはよくあった。1966年にCIAはソ連製対空兵器をガーナで入手している。同様にソ連もF-14他米製兵器をイラン革命後に入手したはずだ。
 情報活動では成果が努力に見合うものになっているか時として問題になることがある。だが機密解除文書を見るとソ連製装備やマニュアルの入手が成果を十分に上げていることがわかる。特に米空軍に当てはまる。
 空軍が1966年7月の日付でCIA宛に送ったソ連のSA-2対空ミサイルに関するメモが例だ。「海軍、空軍のパイロットがSA-2ミサイルを北ヴィエトナムでうまく回避しているのはご承知と思う」と空軍中将ジョセフ・キャロルが書いている。「成功の背景には同装備のマニュアル他情報を貴局が入手してくれたことが大きい」
 ただし空軍の別メモではSA-2現物を米国が入手していないことを指摘している。だが1967年の六日間戦争で待望の機会が現実になった。イスラエルがエジプトから捕獲したのだ。
 イスラエルがソ連製装備の最大の供給元だったのは確かで、1967年、1973年、1982年の武力衝突のたびに大量の兵器をアラブ軍から捕獲している。1967年6月のメモでは六日間戦争中に手に入れた装備は「国防総省が情報探求の点で大変必要としていたもの」と認めている。ただし1967年9月の空軍メモではイスラエルが米国に装備大部分の検分を許しているが、一部高価値装備でイスラエルが「極端な躊躇」を示していると指摘している。特にSA-2ミサイルが対象でイスラエルは同装備を公開する代わりに米国からの見返りを期待していると空軍は考えていた。
 にもかかわらず米国は最終的にSA-2含むソ連装備すべてを調査できた。SA-2では付属品のFan Songレーダーの現物を調べてジャミング対策を講じる事が急務だった。その他対空砲、無線機、戦車等があった。「全体としての調査で今まで不明だった情報内容がわかり研究開発でのギャップが埋まり、一部は直接東南アジアでの紛争に応用できた」と空軍はまとめている。そうした知見からソ連の「設計内容、製品の品質管理、研究開発の方向性がわかった」とある。
 ソ連製装備には情報面以上の価値もあった。捕獲した武器をソ連と戦う勢力に供与し、とくにソ連占領下のアフガニスタン反乱勢力がこの恩恵を受けた。ここでもイスラエルが大きな供給源となり、1982年のレバノン戦争がその機会だった。同紛争では米国とイスラエルで緊張も発生したが同時にペンタゴンに計り知れない価値の情報がMiG-23やT-72のような高性能ソ連装備で手に入った。
 皮肉にも米国はイスラエルからの装備提供は対価を伴わない贈与と考えていた。米国の援助から当然と考えていたのだ。「イスラエルへの我が国の交渉上の立場は非常に弱い」とCIA長官ウィリアム・ケイシーは国防長官キャスパー・ワインバーガーに伝えている。「それでも貴省の手助けをいただいて欲しい兵器を低価格あるいは無償で米政府が入手できるようにしたい」
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.

Image: Wikimedia Commons.

冷戦終結でこうした動きが消えたわけではなく、今日でも虚々実々のの駆け引きでハードウェアの入手がつづいているはずです。現に米空軍にはスホイなどロシア製機材で飛行隊があるという話です。しかし、現在は最ばースパイの脅威の方が深刻ですね。

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...