スキップしてメイン コンテンツに移動

★米陸軍M2ブラッドレイ戦闘車両の改修作業の方向性について

このブログでは地上戦装備を扱うことはまれなのですが、どうしても気になるのでブラッドレイ歩兵戦闘車両(IFV)を取り上げます。War Is Boringの記事です。

The U.S. Army’s Bradley Fighting Vehicle Might Get Even Bigger米陸軍ブラッドレイ戦闘車両は大型化More firepower and other upgrades火力増強他のアップグレード



The U.S. Army’s Bradley Fighting Vehicle Might Get Even Bigger


WIB LAND February 5, 2018 Sebastien Roblin


M2ブラッドレイ歩兵戦闘車両の役目は歩兵部隊を戦闘現場に搬送だが戦車と報道で誤解されることが多い。確かに軌道走行式で33トンの威容をほこり、25ミリブッシュマスター自動砲とTOW対戦車ミサイル発射機まで搭載するのでやむを得ない。
 ただしブラッドレイ批判派は火力が貧弱と攻撃する。理論上は車内の機械化歩兵隊は敵の位置を偵察したり、待ち伏せ攻撃をかける、防御陣地を固める、敵を建物からあぶりだす、などブラッドレイから降車しての作戦が前提だ。
 M2が兵員輸送車として7名しか運べない制約があるが、これでも初期型の6名より増えているのだが、機械化歩兵分隊は9名体制なのだ。このため機械化歩兵分隊は三つに分けて四両のブラッドレイに搭乗する。つまり全員が同じ車両に乗れない。
 ブラッドレイM2とM3は1,800両供用中で米陸軍は二段構えで改修を進め、動力出力を引き上げシャシーに乗せ搭載コンピュータを更新し将来に対応させる。M2A5改修は2020年代中ごろの予定で、車体を拡張し搭載能力を増やし、強力な30ミリ砲塔を搭載する。
 陸軍最大の装甲兵員輸送車はより大きくなり、威力を増すのだ。

Above, at top and below — M2 Bradleys. U.S. Army photos


M2A4の動力系改良内容
 実はブラッドレイはM1エイブラムズ主力戦車より頻繁に戦闘に投入されきた。1990年から91年の湾岸戦争ではイラク砂漠でブラッドレイはエイブラムズより多くの装甲車両を狩ったといわれる。
 湾岸戦争で破壊されたブラッドレイはわずか三両で、友軍の誤射での喪失の方が多い。ただしイラクではブラッドレイ数十両が戦闘員との戦闘で喪失している。車両は爆発性反応装甲や追加装甲板で強化していたのだが。ブラッドレイは地雷や即席爆発物(IED)の防御は考慮していないが装甲が薄いストライカー車輪走行式APCより攻撃に耐えている。
 装甲強化やセンサー性能引き上げで効果が出たが重量増はエンジンに負担となり電装系でも影響が出て機動性が低下した。2012年からブラッドレイはM2A4仕様に改修が始まり、二回にわたる「技術変更提案Engineering Change Proposals(ECP)」を実行中だ。
 その一回目ECP1はほぼ完了し、ブラッドレイは当初の自走性能を回復した。トーションバーと足回りを強化しサスペンションにも手を入れショックアブソーバーを更新した。これで車体摩耗を減らし信頼性を上げながら地上高を増やしたのでIED対策にもなる。
 二回目のECPで電装系とエンジン回りを強化し新装備搭載での出力増に対応するほか出力制御ソフトウェアもインストールする。2018年開始予定だったが信頼性の確認とソフトウェアのバグで延期される。改修後のブラッドレイは平均281時間でシステム故障を発生させており、想定400時間未満にとどまっている。これは駆動系故障や変速機の潤滑油冷却不良が原因だ。にもかかわらずEP2開始は急ぐ必要があり、2月の新ソフトウェア完成が待たれる。
 ブラッドレイ改修は装甲偵察部隊が使用するM3騎兵戦闘車両やM7 FIST火砲方位支援車両とも関係する。M2A4型は改修後に性能が向上し、さらにその後予定されるM2A5型改修の多様な内容による重量増に対応する。


車体大型化と砲塔更新を同時に狙う?

 2017年にブラッドレイ改修を率いるクリス・コンレイがM2A5は第三世代前方赤外線センサー、レーザー照準器、カラー外部カメラで長距離から敵を捕捉可能となると述べていた。これは同時進行中の改修型エイブラムズとの互換性もねらう。

 昨年1月にシェパードメディア記者のグラント・ターンブルがツイッターでブラッドレイ砲塔や車体の大幅改修図を掲載し開発は4-5年かかると予想していた。
 米陸軍は600百万ドルで新型開発と部品調達を始めているが金額は今後増える見込みで、ペンタゴンが改修を一回で済ますのか二回に分けるかは不明だ。
 車体延長で装甲強化、新トランスミッション、8名目の隊員運搬を実現するので9名体制の分隊で乗れないのは一名だけになる。車重は40トン未満と20%増となる。車両改良で歩兵隊は「二倍から5倍の防御力で守られる」ことになる。
 防御装備の改良ではアクティブ防御システム(APS)でミサイルやロケット推進手りゅう弾を打ち落とす。エイブラムズ戦車ではショットガン形状のトロフィーAPSの搭載が始またが、ブラッドレイはイスラエル開発のアイアンフィストを搭載する。
 砲塔改修では25ミリチェーンガンを30ミリXM813ブッシュマスターII自動砲に交換し火力増強する。ストライカー車輪式歩兵運搬車にも導入されているのと同じ装備だ。大きな変化に聞こえないかもしれないが炸薬量が異なり装甲貫通力が増す。
 砲の有効射程が二マイル伸び装甲貫徹力は30パーセント増える分析がある。これでブラッドレイは敵のIFVを効果的に狩れる。シリア、イラクからウクライナまでIFVは頻繁に登場しており、装甲や兵装が向上している。
新型砲はプログラム可能な空中破裂弾が使用可能で掩蔽物の背後で隠れる敵や無人機やヘリコプターを狙うことが可能となる。
 大型弾薬には携行弾数が300発だったのがわずか180発になる欠点もある。だがブッシュマスターIIも毎分200発の性能は変わらず正確な射撃が可能となる。各弾の威力が増していることで標的を狙うのに発射弾数が減るといえる。
 その他の改良点に車長、砲手の視野を広げ、イーサネットで僚車とネットワークを組み、レーザー測距機や航法システムを改良する。ツイッターでは「5.56ミリ制圧兵器」も出ており、遠隔操作機関銃で敵歩兵隊からの防御手段だろう。
 砲塔と砲の改良で車重増で遠隔地展開が困難になる欠点も生まれる。
陸軍はブラッドレイの生存性を高めようとし、ロケット推進手りゅう弾やIEDを念頭に誘導対戦車ミサイルや敵IFVとの高密度戦も想定する。軽量車輪走行式ストライカーAPCも新型砲やミサイルを搭載する中、ブラッドレイは一番過酷な環境で生存しつつ威力を発揮させたいとする。もちろんそのような戦場での兵員輸送は難易度が高い課題だ。■

改修加しながら長期間稼働に耐えるのは設計に十分の余裕が想定されているからでしょうね。取得時に高価格でも長期間使えればよい買い物になるでしょう。陸上自衛隊でブラッドレイに匹敵するのは89式装甲戦闘車でしょうが、やや小型ながら歩兵7名を運搬できるとありますが、ブラッドレイ並みに長期間耐用できる設計なのでしょうか。車両関係に強い読者からのコメントをお待ちします。

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ