中国が試作品レイルガンを艦上搭載していることで米側に危機感が生まれているようです。技術競争となれば米国も黙っていられません。War Zoneからご紹介します。これだけの小規模の開発費用で実現するなら安いものなのですが。
Despite What You've Heard, The Navy Isn't Ditching Its Railgun And Budget Docs Prove It
米海軍がレイルガン開発を放棄するとの話があるが予算を見れば真実でないとわかる
The service is still moving ahead with the electromagnetic weapon, which takes on new significance given recent Chinese developments.
海軍は中国の技術進展も横目に電磁技術兵器の推進を進める。
BY JOSEPH TREVITHICKFEBRUARY 14, 2018
米海軍が開発を断念するとの報道があるが、最新予算書を見るとレイルガンに数百万ドルが計上されているとわかる。予算額は毎年変動しているが、中国が試作型兵器を艦艇に搭載したと判明し電磁レイルガン開発が加速化しそうだ。
2018年2月12日、海軍は2019年度予算要求を発表し、45.8百万ドルが電磁レイルガンと指向性エネルギー兵器の開発に計上され、開発の最新状況を反映している。予算勘定では共通項目でレイルガンが使える予算となるが、半導体レーザー技術も成熟化を進める必要があり、高出力無線周波数兵器の米空軍との共同研究で航空機搭載の高出力共用電磁非運動性攻撃手段 High-power Joint Electromagnetic Non-Kinetic Strike (HIJENKS) と呼んでいる。
新年度予算要求では昨年度より10百万ドル少ないが、海軍が電磁兵器を断念していないことがわかる。予算は「開発期間中に製造、組立て、運用で生まれる独特の技術課題を解決し、高出力運動エネルギー兵器試作品で長距離精密誘導砲弾の繰り返し発射を化学推進剤を使わずに実現すること」と文書にある。
海軍研究部門(ONR)はレイルガン開発に2005年から取り組んでおり、試作品二基をBAEシステムズとジェネラルアトミックスから調達している。2012年に海軍は技術実証段階から正式事業に移行し実戦用電磁レイルガン調達が可能となった。
「実証を飛ばして実力を見たい」と米海軍ピート・ファンタ大将Admiral Pete Fantaが2016年にDefense Newsに語っていた。「実証のための実証ではなく運用部隊を作りたい」ファンタ大将は当時水上戦部長、現在は戦力統合部長だ。
当誌はその時点でこの発言にうなづけない点があった。米海軍がハイテク装備を「同時並行で」開発と製造を進めた事例で多くが芳しくない結果に終わっているからだ。現に2018年度予算は研究開発段階にあるとし、海上公試を2019年以降に先送りしていた。レイルガン他の技術は「革新的海軍試作技術」と表現されている。
「こうした分野への資金投入は今後の戦闘の様相を一変する技術になり作戦概念そのものを革命的に変える可能性がある」と海軍は同項目の技術内容を表現している。
レイルガンに話を戻すと、実用化されて機能し費用対効果で優れた効果が生まれれば極めて素晴らしいと思う。レイルガンは電磁エネルギーだけで発射体を極超音速に加速し、速度だけで敵を撃破し、爆発剤を使わない。
海軍によれば今ある試作品で時速4,500マイル、音速の六倍が出せるという。最終型は射程100マイルをめざす。これだけの性能があれば各種目標へ対応が可能で防御攻撃双方に有効で、陸上水上目標以外に航空機や巡航ミサイルや場合によっては弾道ミサイルも狙えるだろう。
多用途に対応し、現有の5インチ主砲の域を超える。タイコンデロガ級巡洋艦やアーレイ・バーク級駆逐艦が搭載するこの主砲ではレイルガン試作品の半分の速度も出せない。
レイルガンは化学剤が不要でなので作戦艦艇はその分多くの砲弾を搭載でき、一方で補給兵站経費を節約できる。
レイルガン事業全体への予算が減額傾向にあるのは事実だ。2015年度の要求では47百万ドルがレイルガンだけに投入されていた。今年は20百万ドルを割るが海軍はまだこの事業を完全に断念したわけではない。
だが予算額の上下の背後にある事実を知らなければ海軍がこの革新技術にどう取り組んでいるかがわからない。海上試験を先送りしたことで予算に大きな影響が出ており、研究開発上の工程も変わっている。レイルガン研究開発は比較的小規模で予算も順調に推移することはまれだ。
また海軍は発射弾技術を分離することで事業への期待を高めてきた。超高速発射弾(HVP)はレイルガン、既存砲双方で運用可能だ。海軍によれば外観を整えたHVPは化学剤を使えばマッハ3に達し、従来型砲弾より高速となる。化学剤なしの不活性状態運用がレイルガン、海軍砲、陸軍海兵隊のりゅう弾砲で運用可能で共通仕様となれば費用面のみならず開発でも費用節減効果が生まれる。
だが電磁兵器の現実から米海軍のみならず他軍も優先順位をまだ高くつけられない。2018年1月に試験艦に搭載された中国の試作品と思しき装備の画像が流出した。どこまで機能がある装備か不明だが、試験で中国が米国の先を行っているのは明らかだ。
中国は極超音速兵器分野でも開発を進めており、今度は電磁砲、さらに極超音速滑空飛行体やミサイルの開発を進めている。中国が兵器開発や運用で米国より先行する事態が現実になっている。すべては中国が目指す地域大国から国際超大国への道の一環なのだろう。
「こちらも技術開発を続け、もっと大胆に進める必要がある」米太平洋軍知れ艦ハリー・ハリス大将が下院軍事員会で2017年2月14日に発言してた。「米国は極超音速攻撃兵器の開発が必要だ」
海軍が要求をまとめたのは中国が独自のレイルガン試作品を発表する前だったが、関係者や議会メンバー多くがハリスの視点を共有している。海軍予算ではレイルガン関係で増額されそうでその他極超音速兵器や防御手段関連も各軍で増えそうだ。
中国の動向で海軍の目指してきた試作品でもいいから一刻も早く艦上搭載を実現する姿勢が遅れることにはなりそうもない。海軍や議会内支持勢力が熱意がどれだけか、技術の成熟度がどこまでなのかによってレイルガン開発予算の増加ペースが決まるはずで、予算増が意外に早く実現するかもしれない。
以上明らかなように海軍はレイルガンを早期廃棄するつもりはない。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。