スキップしてメイン コンテンツに移動

2040年目標で新ISR機開発を始めた米空軍(2040年目標でいいのでしょうか)はJSTARSの更新も狙う

将来の戦闘統制監視機はどうあるべきか。これまではA2ADなど無防備な支援機材はことごとく無力なので戦闘最前線には投入できないと見られてきましたが、米空軍は考え方を少し変えてきたようです。ただしそれでも中国ロシアが米国と同様の実力を有する国相手では不安が残るので無人機との組み合わせが安全なようですが。技術の進歩のペースが速く、JSTARSやAWACSと言えば大型機なのですが次期機材は小型化も可能になりそうです。任務ごとに機種を整備するのではなく、共用化コンポーネント化も進むでしょうね。派手な戦闘機だけではなくこうしたISR機材にも注目したいものです。


Air Force Launches New ISR Program for 20402040年目標で新型ISR機能開発を打ち出した米空軍



By Kris Osborn - Managing Editor - Warrior Maven

空軍が新規ISR機整備計画の検討に入った。
地上、空中、宇宙を次世代の監視偵察および指揮統制技術で単一シームレスネットワーク化の実現をめざしている。
この技術は高度戦闘統制監視技術Advanced Battle Management and Surveillance (ABMS)と呼ばれ2040年代の実現を目指す。その概要が空軍の2019年度予算書で紹介されている。
「予算案は戦場指揮統制のマルチドメイン環境下での実施方法を一変させる提案だ」と空軍関係者がWarrior Mavenに語っている。
提案では各種技術革新を短期長期で取り入れる構想で空軍内部で相当議論されているJSTARS共用監視目標攻撃レーダーシステム機の後継機の実現に向かう。大型かつ「ステルス性劣る」有人JSTARSが今後の高度脅威空域でも有効性を維持できるのかがポイントとなる。
ABMSが目指すのは最新ISR技術で既存並びに今後登場する装備に大きな能力向上を実現することで、衛星、無人機、地上センサー、有人監視機材をシームレスかつリアルタイムで結び、変化しつつ範囲が広がる作戦を対象にする。空軍はABMSは機材ベースというより「システム」だという。将来の脅威想定では電子攻撃、サイバー侵入やGPSの「妨害」を行う兵器が広く投入されるため、この技術に大きな意味が生まれる。
長期的に見ればABMS装備とISR技術の高度化で機材を集約できる期待が生れると空軍関係者がWarrior Mavenに語った。
JSTARSのメーカー、ノースロップ・グラマンはこの技術に以前から重点的投資を行っている。
「ノースロップ・グラマンは30年前から高度戦闘統制監視技術分野に研究資金を相当投入しています。USAFの要求内容にかかわらず、当社は各種技術で現在・将来の戦場での意思決定の優越性維持をはかります」とブライアン・リマ(同社有人C2/ISR IPT事業部長)がWarrior Mavenに語っている。
長期的取り組みと別に空軍は短期の「つなぎ」または「暫定的」解決方法としてE-3空中早期警戒指揮統制機の近代化や現行JSTARSの改修を2020年代にかけ行う。
「E-3の7機および現行のE-8CJSTARSを2020年代中頃まで供用させる提案をしており、並行して高性能戦闘状況管理システム装備への移行を目指す」と空軍関係者が述べている。

空軍開発部門は高性能通信ネットワーク機能とセンサー性能を統合してE-3Gに搭載し「2040年代初頭のABMS投入前での作戦遂行上のリスクを緩和する」とWarrior Mavenに紹介があった。
JSTARSのミッション
空軍の有人共用監視標的攻撃レーダーシステム機では高性能技術を導入し戦闘関連情報の収集、共有を実現し、ISR情報を戦闘司令部に提供する。
1990年代初頭の湾岸戦争で初めて戦闘任務に投入されたJSTARSは以後の戦闘作戦で不可欠な存在となり、地理条件を広くカバーし対応が必要な情報収集対象や敵の活動を監視してきた。
JSTARSはデジタルマップ画像を作成・共有でき、敵勢力を追尾し敵活動を把握することに一番大きな意義がある。得られた情報を各種データリンクを介して地上指令所に送信し、付近を飛行中の無人機の作戦に接続し統合する機能がある。
現行のノースロップE-8Cは対象地区で無人機と連携し「ソーダストロー」型センサーで地上の様子を把握する。敵の車列や地上部隊の動きを探知し兵力の集積状態を把握して、詳細なISR活動対象を個別詳細に選択できる。
JSTARSは戦域航空管制システムを空に拡大する重要な機能で地上移動標的指示器のデータをISR機材に提供するのが大きな役目だ。
その地上移動標的指示器GMTIがJSTARS搭載の技術でもう一つの重要要素でその目的は地上の敵の動きを把握することにある。
空軍関係者はJSTARS後継機をめぐる各社の競合と並行してABMSが中心になっていくと見ている。そこでこの構想からまだくすぶっている疑問への道しるべがわかる。すなわち空軍は今後実現すると思われる高度技術を駆使した脅威環境でも十分機能できる機材に置き換えるのか、それとも現行機材を使いまわすのか。
空軍開発部門はJSTARS後継機は民生機材を母体に急速な技術進歩に対応できライフサイクルコストも低減できると強調している。
JSTARSでは合成開口レーダーを使い電磁「ピン」音を地上に向け発射し帰ってくる信号を分析して下界の様子を画像化する。電子信号は光速発信されるため移動時間を考慮したアルゴリズムで移動物の距離、大きさ、形状、移動状態を探知し特に敵兵力の把握に役だつ。
JSTARSは9/11事件以降130千時間にわたり戦闘ミッションに投入され、アフガニスタン等で作戦支援にあたっている。
冷戦時はソ連戦車部隊の移動状況をヨーロッパ東部で行う目的で構想されたJSTARSだが北朝鮮近辺、イラク、アフガニスタンで効果を実証している。また海上交通の監視にも太平洋他で効果を実証しておりを高性能陸上海上モード切替レーダーで海上交通の監視ISRの実情にも答えた。

強力な脅威に空軍はどう対応するつもりなのか
空軍関係者は今後想定される脅威の内容を詳しく述べなかったが、今よりも厳しい空域に監視偵察機を投入する必要を認識しているのは確かだ。そのような環境では現行JSTARSのような大型機は容易に探知され敵の高性能装備の前に無力になる。
このためJSTARSは米国が航空優勢を維持できたアフガニスタンのような低脅威環境で最大限の機能を発揮するが、機体外寸、仕様、レーダー特性が敵防空網の前に弱体化する。​
同時にこの機体は戦闘シナリオでは他に比類のない貢献で知られている。また機体防御技術、対抗措置、電子戦やセンサー技術の進歩がありJSTARSも敵の高度防空体制でも運用可能になる見込みが出てきた。同機は戦場上空を無防備で飛ぶ想定ではないが、同機のミッション範囲を広げつつ厳しい空域で運用させるには何が必要か。
高度の電磁戦環境の脅威に対応する能力がJSTARSのような大型センサー機材の決定で大きな要素になりそうだ。こうした技術の詳細は当然ながら不明のままだがJSTARSにEW対抗手段あるいは電子的な「指紋」を最小限にする装備を搭載することが互角の戦力を有する国相手の交戦シナリオで前提となる。
高性能対抗措置や機体防御策が出現する可能性もあり、近辺を飛ぶ無人機を防御にあてる等の手段でJSTARTが高度戦力を有する敵を前に実力を発揮しそうだ。
今後投入する現行JSTARSの改修機材では高度戦力を有する敵の前でも任務を成功裏に行うために配慮も必要だ。攻撃機やステルス爆撃機で敵防空網を撃破してからJSTARSを高度脅威空域に投入させ最大限の効力を発揮させる。電子ジャミング機のEA-18グラウラーはハイテク次世代ジャマーを搭載し、敵レーダー位置を割り出し妨害を与えることが可能だ。また半自律運用型の無人機をJSTARSから運用して敵防空網の実効性を試させ接近させながら母機は安全な距離を保つことも考えられる。
今後登場する機材では当の実力を有する敵国相手にもっと効率よくこうした任務を実施する可能性がある。新しいEW技術・センサー技術の進展には目を見張るものがあり、小型機材で防御力を高くした機体がより長距離で広い範囲でレーダー探知されにくく活躍する事態が想定される。コンピューター処理の高速化で新型小型機でも戦闘関連情報をリアルタイムで収集、分類、分析、共有できるようになりそうだ。
E-8C JSTARS機内で搭乗員が戦闘機、爆撃機に情報を配信する演習を朝鮮半島で昨年7月29日に行った。(U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Rey Ramon)

指揮統制技術の変化は早く米空軍は現在は旧型機材のJSARSで行っている監視機能、指揮統制機能を今後登場する新技術で継続実施し強化させるとする。
今後登場する無人機での偵察機能で戦闘区域を広く状況把握できるようになるのか。ステルス機に高性能センサー技術を組み合わせれば広域で指揮統制ミッションを現行のJSTARS同様に行えるようになるだろう。新型JSTARSが他装備と同時に高リスク環境でのミッションを支援するようになるだろう。こうした分野横断型の接続がABMSのめざす方向性の核心部分のようだ。
現行JSTARSは四発のボーイング707が原型で、米空軍にはJSTARSが16機在籍しているが、うち11機が投入可能に維持されている。JSTARは指揮統制とISRを同時に行える唯一の機体だ。

現行JSTARSには最大21名が搭乗しており、航法士、戦闘システム操作員、情報士官、技術員、戦闘管理員と役割分担している。ただし、技術進歩でもっと少ない搭乗員で現在以上の効果を上げることが可能となり、ハードウェアも縮小化できるはずだ。高性能コンピュータの処理速度や部品の小型化で以前の技術と比べてより多くのミッションをより少ないハードウェアで実行可能になっている。■

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ