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あなたの知らない戦史シリーズ③ ラオスの秘密基地リマ85をめぐる米軍と北ベトナム軍の攻防戦


あなたの知らない戦史シリーズ③ ラオスの秘密米軍基地を攻略した北ベトナム軍

 

Revealed: 50 Years Ago, a Top-Secret U.S. Base Was Overrun By Elite Vietnamese Commandos 発掘、50年前にトップシークレット米軍基地がエリートベトナム決死隊に占拠された


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March 20, 2018


1968年3月12日、ラオス山頂の極秘米軍基地がベトナム特殊部隊に占拠される事態が発生した。基地にいたCIA、空軍要員18名のうち脱出できたのは6名のみだったが以後30年にわたりこの事件は秘密のベールに包まれた
ラオスでの米軍の作戦行動は禁じられていたためだ。ラオスは内戦で荒廃し王党派の右側勢力がパテトラオ共産主義勢力と対立し後者を北ベトナムが支援していた。北ベトナムはラオスからホーチミン街道経由で南ベトナムに侵入していた。ただし1962年に米国、北ベトナム、ラオス各派は平和条約を調印しラオス国内から自国軍をそれぞれ撤退させた。
ただし北ベトナムは部隊一部のみ撤退させただけで米国も相当の軍事援助を王党派に供与し秘密のうちに大規模空爆作戦をバレルロール作戦として開始した。機材はベトナム、タイ両国内の基地からラオスに入り、CIA運営の契約業者と「エアライン」のエアアメリカが輸送機、観測機をラオス国内で運用した。
CIAは現地で少数派モン族を雇いパテトラオと戦わせた。このためCIAはプーパティPhou Pha Thiの険しい山頂に基地を設営した。ここはモン族の聖地であり同時に北ベトナム国境近くという戦略上の要所でもあった。
同基地はラオス国内に多数設営された「リマ施設」の一つで米軍等の空輸補給を支援する役割があった。施設は海抜5,600フィートに作られ周囲は切り立った崖だった。700メートルの小滑走路がふもとに作られ補給や人員の交代用に使われた。毎週秘密のうちにCH-3ヘリコプター(米空軍第20ヘリコプター飛行隊)が飛んできた。
1966年夏に米空軍は同基地リマ85に新しい役目を思いつく。レーダー航法TACAN拠点として発電機、トランスポンダーを持ち込んだ。GPSの前はTACAN施設が軍用機の目標捕捉を助けており、とくに低視界時に重宝がられた。1967年にはTSQ-81アンテナ・遠隔爆撃支援装備で米軍爆撃機を運用していた。
ハノイはリマ85秘密基地からわずか135マイル先で米軍機を非常に正確に北ベトナム空襲に誘導できた。空爆にはF-105戦闘爆撃機から巨大なB-52まで機材多数が投入されていたため同基地は空爆効果の増大に重要だった。わずか半年でリマ85は北ベトナムとラオス国内の空爆の25パーセントから55パーセントまでを指示誘導するまでになっていた。
ラオス皇太子スワナが米軍要員のラオス国内入りを拒否したため、リマ85配属の米空軍要員は一次的に除隊手続きをしてからリマに赴いた。これは「消毒」と呼ばれ笑いものだった。技術要員は非武装だったがその後小火器を備えた。代わりにCIA支援を受けたモン族武装兵が大隊規模で基地周辺を固めた。またタイ国境警備隊も同山周囲に展開していた。
リマ85は米国一般国民から存在は隠されていたが、パテトラオや北ベトナム正規軍(NVA)には存在と役割は秘密ではなかった。偵察隊が1967年12月に基地防衛体制を探り、1968年1月12日にはAn-2複葉輸送機が主翼下の57㎜ロケット弾と120㎜迫撃砲弾を機体側部の扉から投下してリマ85を攻撃した。モン族4名が死亡した。米軍UH-1一機が緊急発進し輸送機を阻止しようとし、AK-47で一機撃墜に成功した。これはヘリコプター対航空機での撃墜として珍しい事例だ。別のAn-2も地上火災か退避行動をとるのが遅かったため墜落した。
基地は1月30日に迫撃砲攻撃を受け、2月18日にモン族戦闘員がNVA砲火観測員部隊を待ち伏せ攻撃し殺害しており、基地攻撃案を回収した。米軍指導部は同基地が孤立し優勢な敵軍に包囲され攻撃を受けるのが分かっていたがTACAN支援は重要な機能のためウィリアム・サリヴァン大使は撤収命令に難色を示した。十分な防御対策を提供できないまま、基地内の技術要員の安全のため周囲にひそむ共産軍に空爆多数を仕向けた。
北ベトナム第41特殊軍大隊の選りすぐりの決死隊が登頂不可能と思われていたプーパティ山北側を1月22日にひそかに上り、潜入ルートを調査した。3月初めに33名の小隊がチュオン・ムオTruong Muo中尉指揮下で同山付近に集結し工作隊9名が加わった。決死隊はAK-47、SKSカービン銃、爆薬、高性能手りゅう弾、ロケット推進手りゅう弾発射機3丁で武装した。
3月11日午後6時、砲兵隊が掩護射撃しチュオン隊偵察兵がリマ85への進入路を確保した。数時間後にNVA766連隊正規兵とパテトラオ大隊が攻撃開始しモン族民兵を谷間で包囲した。同日午後9時にチュオン隊が断崖を登り始め5つの「細胞」に分かれ多方面から攻撃開始した。第一細胞・第二細胞は指令所に攻撃を集中し、第三・第四細胞はTACAN施設と滑走路の占拠を目指した。第五細胞は予備として待機した。
基地要員が砲撃を報告したがサリバン大使は攻撃規模が圧倒的と判明するまでは撤退を命じないこととした。翌朝午前8時に大使はヘリコプターと航空支援を送り要員退避を守ろうとした。
これは遅すぎた。チュオン隊は午前3時にモン衛兵詰め所を制圧しTSQ-81レーダー、発電機はロケット推進手りゅう弾で破壊した。基地司令クラレンス・バートン少佐他空軍技術要員が被害状況を確認しようと外に出ると銃撃を受け動けなくなった。午前4時までに三個細胞がそれぞれの任務対象を占拠し、装備の一部はチュオンの命令で崖から落とされた。第四班のみ滑走路周辺を守るモン族二個小隊の抵抗を制圧できず攻撃を断念した。
米側生存者は断崖側部の棚に逃げ、手りゅう弾小火器の銃火をあび動きがとれなくなった。ライフルで反撃しながら崖上部の空爆を待った。
夜明けになりエアアメリカのヘリコプターがA-1スカイレイダーの援護で山頂を銃撃した。モン族部隊はCIA指揮を受けNVAからTACAN奪回のため激烈な戦闘を挑んだ。北ベトナム軍小隊が占拠は変わらず米空軍技術要員5名とCIA要員2名がこの間に脱出した。
崖に残っていた空軍要員のうちリチャード・エッチバーガー上級兵曹長は救難ヘリコプターに乗るのを拒み代わりに負傷した同僚を運ばせた。だが兵曹長は銃火を浴び瀕死のまま搬送されたが、共産軍はプーパティ山を制圧しモン族部隊の反攻も撃退した。
リマ85強襲で米軍の北ベトナム・ラオスでの航空作戦は大きく弱体化した。ベトナム側記録では決死隊の被害は死亡一名のみなのにタイ・モン側の少なくとも42名を殺害した。米国人も十数名死亡している。ただしチュオン中尉は帰国後すると英雄として歓迎のかわりに軍法会議にかけられた。TACANを破壊し、技術要員を捕虜として確保せず殺害したことに上官が激怒したのだ。
皮肉にもワシントンとハノイはラオスでのこの戦闘を秘密にすることで協力し合った。北ベトナムにはホーチミン街道をラオス国内経由で維持する必要があり、米軍はそれを阻止したかった。双方が合意違反をしていた事実を一般に明かすことは避けたかった。
悲しい後日談がある。エッチバーガーの死後名誉勲章申請は空軍が却下。ラオスでの米航空作戦を秘密にしておくためだった。ニクソン政権で作戦はエスカレートしペンタゴン文書のリークで事実は明らかになった。米軍はラオス国民一人当たり一トンの爆弾投下したものの共産勢力の1975年の勝利を遅らせただけで阻止できなかった。
30年が経過して米国は秘密基地での戦闘を公式に認めた。エッチバーガーは2010年に名誉勲章を与えられた。その前の2000年代に参戦したベトナム復員軍人が米軍に協力して戦死した隊員の遺体回収をし、バートン少佐の遺体も後日見つかった。
リマ85で発生したような闇の戦闘の記憶を保存しても過去の傷はいえないが、当時の誤りを正しく理解することには役立つし、将来に同じ誤りを繰り返さないためにも当時を振り返ることが重要だ。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

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