スキップしてメイン コンテンツに移動

あなたの知らない戦史シリーズ②米軍機撃墜で米朝あわや開戦寸前へ(1969年)

あなたの知らない戦史シリーズが意外に公表なのでさっそく第二弾です。厳密には相互に撃ち合っていないのですが、北朝鮮の横暴な攻撃に力で対決したという事例ですね。この事案はリアルタイムで見ていた方もいるのでは。この当時の北朝鮮にはミサイルも核兵器もなかったのですが、今日同じ状況になればどんな対応が可能でしょうか。在韓米軍にも核兵器は今ありませんね。National Interest記事の紹介です。しかしスーパーコンステレーションは格好いいですね。

 

In 1969, North Korea Almost Started a War with America 1969年、北朝鮮は米国と戦闘一歩手前まで踏み込んだ

 


March 11, 2018



1969年4月15日は米国にとって戦後アジアで最も危険な日になった。米軍偵察機が北朝鮮沖合で撃墜され搭乗員31名全員が死亡したた。議会から毅然たる行動を求められたリチャード・M・ニクソン大統領は報復しない決定を下し、第二次朝鮮戦争を回避した。実際には行使しなかったが、ニクソンには軍事オプションが各種あり、選択の幅は広かった。

4月15日午前のこと、E-3セントリーAWACSの前身というべき米海軍WV-2(EC-121M「ウォーニングスター」の海軍版)が厚木基地を離陸し北朝鮮沿岸を目指した。同機のコールサインは「ディープシー129」で日本海上空を楕円状に飛び北朝鮮の通信情報を後日の分析用に収集した。北朝鮮軍は韓国や米軍に越境攻撃をしばしば仕掛けており、米軍は北朝鮮が奇襲攻撃を仕掛ける兆候を先に把握しておく必要があった。

任務について5時間半後に在韓米軍レーダーが北朝鮮人民空軍MiG-17「フレスコ」戦闘機二機が基地を離陸するのをとらえ、レーダーはディープシー129を迎撃する進路にとると判明した。同機には31名の海軍・海兵隊要員が搭乗し、間もなくレーダーから消失した。ソ連と米艦船が向かい捜索救難活動を展開し遺体二名分と機体の破片を発見した。

米議会の反応は激烈だった。「アメリカの答えはひとえに報復、報復、報復だ」と下院軍事委員会のL・メンデル・リヴァース委員長は述べ、「必要な核兵器も使わせろ。あいつらに答えを教えるべき時がきた」と述べた。強硬な軍事対応策は被害規模で多岐にわたりペンタゴンから大統領と国家安全保障会議に提出された。

その一つが北朝鮮国内の航空基地攻撃で目標は「平壌の軍事姿勢」を崩し「北朝鮮指導部に米軍機撃墜の罰を与える」ことだった。空母四隻(エンタープライズ、キティホーク、レインジャー、ホーネット)が待機し、48時間から72時間で攻撃に入り、加えて沖縄から戦術機を発進させ、日本本土、韓国、グアムからも出撃させる。空爆案がいずれも元山航空基地を標的にしたのはディープシー129を撃墜した戦闘機が同基地発進だったからだ。

別の報復措置は暗号名フラクチャードパインで米海軍巡洋艦からタロス対空ミサイルを発射する案だった。巡洋艦二隻を北朝鮮元山およびソドンニの各空軍基地付近まで前進させ両基地を離陸する機体をすべて撃墜する。タロスは北ベトナムでも投入され6発発射して二機撃墜していた。巡洋艦に駆逐艦掩護をつけ夜間のうちに接近し早暁から離陸機を打ち落とす構想だった。この案は低リスクながら北朝鮮が予想外の報復措置に踏み切ると作戦立案部門はみていた。

驚愕させられる案がB-52で北朝鮮軍事施設を報復爆撃するものだった。12機から24機のB-52をグアムから飛ばし低度夜間ミッションで北朝鮮を爆撃させる。各機が爆弾108発を搭載し、おそらく500ポンドのMk 82通常大爆発力爆弾だっただろう。沖縄から飛ぶ給油機が燃料補給する。作戦案ではB-52がソ連国境付近まで進出すると「逆効果」が生まれると指摘していた。

またEC-121危機で米軍の核兵器が警戒態勢に入っていた証拠がある。USSプエブロ事件で米軍は核緊急対応構想をフリーダムドロップの暗号名でまとめ戦術核兵器を北朝鮮相手に使おうとした。標準統合作戦手続き(SIOP)としてF-4DファントムIIにB61を搭載し群山米空軍基地から発進させる。さらにF-4D四機が24時間警戒で北朝鮮その他標的への核攻撃拡大に備えていた。

最終的にニクソン政権は報復案を却下したが同政権がハト派だったわけではない。その時の苦悩を国家安全保障会議がまとめている。「米国行動が大きくなればそれだけ北朝鮮が取る対応とエスカレーションのリスクが増える」とある。時あたかも冷戦真っただ中でヴィエトナム戦争も続いており、米国にアジアで別の戦争を始める余裕はなかった。

かわりにニクソンは米軍の偵察飛行を掩護付きで続行させ撃墜されないようにした。米国の決意のほどを示しながら情報収集活動を継続した。危機状態のエスカレーションを防ぐ効果も生れた。31名の米国人の生命が不当に奪われた事例に対するニクソンの反応は危機対応とエスカレーション防止のモデルとなったのである。■

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.

Image: Wikipedia Commons.

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ