しばらく朝鮮に関心が集まり、忘れ去られそうなアフガニスタンですが状況は相当悲惨なようですね。このままではタリバン駆逐はおろか何十年かけても国土復興のめどがつきません。トランプ大統領には地政学も勉強いただいて出口戦略を考えてもらいところですが、お得意の取引の材料がありません。そうなると米国のコミットメントを終了し、アフガニスタンという国が消滅する可能性もあります。
アフガニスタンで戦死者が急増、同国は崩壊一歩手前
War Casualties in Afghanistan Hit All-Time High as Country Stands on Brink of Collapse
1,170億ドルを投入してきた米国で成果はわずか、それでも派兵規模増強を求める声
U.S. war effort tops $117 billion, but little progress seen amid calls for more U.S. troops
米陸軍兵士の背後にNATOヘリコプターが飛行する。連合軍前方配備基地FOBコネリー(アフガニスタン東部ナンガラールのホヤニ)にて / Getty Images
April 30, 2017 11:59 pm
- アメリカが1,170億ドルを投入してきたアフガニスタン戦は16年目に入り、米史上最長の戦闘となるが、紛争による死亡者が記録更新で増えており、米戦略そのものに疑問が提示られている。テロ集団タリバンが国土の三分の一を実効支配する一方、国内では深刻な汚職が蔓延している。
- ドナルド・トランプ大統領はアフガニスタンの今後で厳しい選択を迫られそうだ。国内再建プロジェクトは失敗続きの上、同国国民と米業者間の汚職で進展が遅れている。米軍首脳部から派遣部隊の増強を求める声が出ており、トランプに投票した国民層の怒りが高まっている。
- 米国納税者は昨年だけでも48百万ドルをアフガン治安部隊向け弾薬類調達で負担し、32.3百万ドルで国内統治経済機能の強化を支援している。米国はこれまで110億ドル以上でアフガン軍用に兵装類、通信装置、航空機、車両等を調達してきた。米納税者の負担が今後も減りそうもないのはタリバンが国内主要地区を相変わらず支配しているためだ。
- 治安情勢による国内死傷者は2016年は11,418名と、統計をとりはじめた2009年以来最高になったとアフガニスタン再建特別監査長官SIGARがまとめた最新の四半期報告が指摘している。米国は公表直前に同国に最大規模の爆弾を投下している。
- アフガン国民軍は訓練・給与支払いの大部分を米国頼みでタリバン戦闘で相変わらず大量の死傷者を出している。戦死率が高いため軍は弱体化し国土の奪還を実現する作戦能力はないとSIGARは評価。
- 2016年年間と2017年早々の治安事件は国連が統計を発表開始して最高水準になったとSIGARは指摘する。
- 「危険で屈強な反乱勢力が支配あるいは影響力を行使する地域にアフガン国民のおよそ三分の一が暮らしている」とSIGARは述べる。「死傷率が高く能力不足のためアフガン軍と警察部隊の戦力は低下中だ。アヘン生産は記録的水準に近づいている」
- 「反乱勢力と戦いアフガン治安部隊の指導支援を2002年から実施してきた米軍隊員にも死亡2,400名、負傷者20千名が発生している」とSIGARは述べている。「数千名規模の連合軍・契約業者も紛争で命を落としている。だがなんといってもアフガニスタン国民の犠牲が突出している。米軍の2001年以来の戦死者合計の二倍程度の戦死者が2016年だけで発生している」
- トランプ政権がアフガニスタン政策を見直す中でSIGARは新政権に援助提供方法の見直しを求めており、とくに蔓延する汚職を意識している。
- SIGARは米契約企業および軍関係者を数か月にわたり調査し刑事訴追三件、二件の懲役刑、刑宣告一件、民事損害賠償請求40百万ドルにつながったと報告書にあり、汚職調査は今後拡大するという。
- 去る二月には米陸軍ジョン・W・ニコルソンJr.大将が情勢は「行き詰まり状態」とし、米訓練を受けた要員の中に多数の死傷者が今後生まれると注意喚起している。
- 「保安関係の事件や軍事衝突が増えた」のはここ数か月のことで「民間人被害は高水準に達した」とSIGAR報告にある。アフガン軍は「引き続き高い損耗を受け、反乱勢力が一部農村部を再掌握している」
- 「国連調べでは治安事件は2016年11月18日以来2017年2月14日までに5,160件と前年同時期から10%増、2014年-15年比較でも3%増えている」と報告書にある。「うち2017年1月の実績は1,877件とこれまでの国連記録で最多だ」
- 米軍指導部は苦境に立つアフガン軍補強のため米軍の増派、装備品供与の増加を求めている。
- ニコルソン大将は米製UH-60ブラックホーク調達予算の認可を求め老朽化が目立つロシア製Mi-17ヘリコプターと交代させたいとする。
- アフガニスタンは大量のアヘン生産を続けており、高収益作物としてタリバンの戦費調達を助けている。
- 麻薬取引でテロリストが武器、資金を得て活動を継続している。アフガニスタンは2016年だけでも4,800トンのアヘン生産をしたとSIGARは指摘している。■
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