北朝鮮問題は長期化の兆しを見せていますが、忘れてならないのがロシア、中国ももっと大量のミサイルで狙いをつけていることです。ミサイル自体に防御、欺瞞技術が導入されつつあるので迎撃側も対応しなければなりません。迎撃ミサイルも無尽蔵ではないので有効に活用しなければなりません。そのために正確な情報をより早く遠隔地点で入手する必要があります。今回の技術はその意味で有望と思われます。
ロッキードの両面長距離識別レーダーはアラスカに配備され北朝鮮ミサイルの早期探知に投入される。Lockheed Martin
Lockheed Advances North Korea-facing Radar
ロッキード新型レーダーは北朝鮮対応に効果を発揮する
- トランプ政権が北朝鮮の核弾道ミサイル開発で米本土を狙うことを警戒する中、ロッキード・マーティン開発の新型レーダーがミサイル攻撃の阻止手段になるはずで、詳細設計段階に入りつつある。
- 完全新型のソリッドステート両極型超高周波レーダーはミサイル防衛庁が2015年発注し弾道ミサイル迎撃弾を大気圏上層部で迎撃させる際の誘導が目的で、とくに北朝鮮ミサイルを想定している。
- ロッキードは18月のシステム段階設計開発を経て、長距離識別レーダーLong-Range Discrimination Radar (LRDR) の重要部品・製造工程が成熟化し技術即応段階6に入ったと発表。つまり想定される環境下で端末間のモデリング、実証が完了したということだ。
- 重要な初期設計段階を終えLRDRの2020年配備にめどがついた。この年になると平壌はICBM能力を整備し核弾頭小型化でミサイル装着が実現していると予想されている。
- 巨大な両面レーダー構造体はアラスカのクリア空軍基地から西をにらみ、北朝鮮のみならずロシア、中国も警戒する。米軍にはロシア、中国の大量ミサイル攻撃を食い止める迎撃ミサイルが足りないので、MDAは北朝鮮の脅威に対応する。
- LRDRは米グローバル弾道ミサイル防衛ネットワークの一部となり標的データをボーイング製地上配備中間飛翔段階防衛装備に提供する。これはサイロ44個に配備した迎撃ミサイルでアラスカとカリフォーニアに展開している。
- ロッキードでLRDRを担当するチャンドラ・マーシャル部長は4月20日の報道向け説明会で設計審査が3月に終わり、MDAおよび国防長官官房が参加したと述べた。次の山場は9月の重要設計審査で、その2ヶ月後に最終設計審査の予定。
- 審査ではロッキード製レーダーが本格生産に円滑に移行でき、技術問題なく現地配備できるかを見る。マーシャル部長によれば本格生産は2018年春の予定だ。
- 開発テストの支援用にロッキードは縮小型の試作機とソリッドステートレーダーを組み合わせた施設をニュージャージー州ムーアスタウンに建設した。試験項目のほぼ9割がムーアスタウンで完結し、主要部品は2019年にアラスカに移し、実戦配備に入る。
- 「このレーダー性能でかぎとなるのが 弾道ミサイルの長距離探知判別能力です。このレーダーは現時点の各種レーダー両極型により従来より判別能力がまして飛翔軌道の情報も細かく正確に出せます」(マーシャル)
- この高周波Sバンドアンテナはソリッドステートの窒化ガリウム (GaN) 部品を使い長距離でも高出力のまま標的識別が可能。ミサイル、弾頭以外にチャフやおとり装置を区別できるので迎撃ミサイルは確実に真の目標を狙える。これで迎撃ミサイル発射数を減らし迎撃の可能性は高く維持できる。
- ロッキードはLRDR事業を2015年に784百万ドルで受注し、開発、製造、テストの各段階を行う。事業は全て予算内だという。
- 同レーダーにはロッキード製の艦船用のイージス戦闘システムの技術が流用されており、イージスアショアや宇宙フェンス技術も使われている。マーシャル部長はLRDRは小型化し陸上、海上への転用も可能だという。
- トランプ政権が米ミサイル防衛態勢拡張を決めれば、ロッキードはLRDR施設を必要な分生産できる態勢にあるという。「海上陸上両面で必要なソリューションを提供できます」とマーシャル部長は述べた。■
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。