スキップしてメイン コンテンツに移動

★★大規模戦に備える米陸軍の切り札は内部シンクタンクだ



DoD photo
リトアニアで演習する米陸軍とハンガリー軍。

16年も対ゲリラ戦に費やしてきてロシア等の脅威から大規模交戦に対応する体制ができていないのに気付き愕然としているのが米陸軍の現状でしょう。予算が厳しい際に節約ののりしろにされてはたまらないというのが陸軍の立場でしょう。国防とはバランスをとった戦力整備が必要なはずで、その意味で米陸軍が自ら「考える」課程を重視し始めたのは心強いことで数年後に大きな成果が出そうです。変化に適応できる組織になれるかが問われています。考えることがなければ行動は変わりません。では陸上自衛隊は?

Army Chief’s Thinktank Studies Major War 陸軍参謀総長のシンクタンクで次の大規模戦闘に備える米陸軍

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on May 01, 2017 at 2:16 PM
ARMY WAR COLLEGE: 米陸軍参謀総長が何を考えているのかを知りたければ、ペンタゴンに尋ねても無駄だ。ワシントンDCから数時間北へ移動し、ペンシルバニア郊外に入りゲティスバーグ古戦場を経由して陸軍大学校へ行くべきだ。静かなカーライルにある。
  1. ここ数年同大学校の影響は衰退していたが、現在はマーク・A・ミリー大将の個人用シンクタンクになり、陸軍の中で異例の予算増をうけ大国間の本格戦争の研究という緊急課題に取り組んでいる。直近の図上演習では国名を伏せた「ほぼ同格の戦力を持つ国」との戦闘を想定し、別の研究では陸軍予備役、州軍も動員した全面戦を想定している。陸軍大学校では6月にも同様の大国想定の図上演習をミリー参謀総長出席の下で行う。
Army photoMaj. Gen. William Rapp

  1. 「参謀総長の要求は厳しいですね。同等戦力を持つ大国との図上演習は能力面でのギャップ解消の必要があるためでギャップを陸軍上層部に認識してもらいます」とイラク、アフガニスタンで戦歴を残し2014年から大学校校長を務めるウィリアム・ラップ少将が述べる。「対ゲリラ戦は学生全員が熟知しているが90年代当時は大国相手の本格戦を想定して部隊を繰り返しNTC(陸軍演習センター)に送っていた」
  2. 「ミリー将軍は陸軍大学校の検討で面倒な問題の解決を期待している」とラップ少将は記者に語った。「現在のところ、陸軍は検討作業の大部はシンクタンクにを外部委託している。当校は陸軍内部に思考力を参謀総長や陸軍全体に提供する」
  3. ミリー参謀総長は陸軍大学校にプロジェクト8つを命じている。①大国同士の戦闘 ②第三相殺戦略によるハイテク戦闘 ③戦略リスク評価 ④国防総省改革 ⑤戦略立案 ⑥グローバルプレゼンスと危機対応 ⑦アジア太平洋再バランス ⑧アフリカにおける協力国づくり である。このうち第三相殺戦略だけで学生14名を投入し、全員が経験豊かな将校で論文執筆、ブリーフィング、著作により2035年から2050年を展望した陸軍の作戦、組織、指揮統制、倫理規範をまとめる。学生、教官ともに陸軍俸給で動くためRAND研究所の陸軍研究センターの十分の一の費用で済むとラップ少将は説明している。
  4. 陸軍の現実課題に取り組むのは陸軍大学校の学生たる大佐級将校には良い教育機会となる。ほぼ全員が戦術面で経験豊かだが戦略立案の経験が限られるとラップ少将が説明してくれた。「参謀総長には重要で深刻な問題に学生が取り組んでいます」
Center for Strategic & Budgetary Assessmentsロシアのミサイル攻撃に対するバルト海地域・ポーランドの防衛構想 (CSBA graphic)
  1. 陸軍大学校はいつもここまで活発ではない。目まぐるしい軍務とは別の眠ったような場所と言われてきた。将官昇進を控えた大佐連にとって時間つぶしで休みをとる場所ともいう。大学校は参謀総長直属だったが、2003年に教導司令部(TRADOC)の指揮下に入り、10年後に再びミリーの前任者により参謀総長の下に戻された。
  2. 現時点の大学校はTADOCとは別だが、共同作業は密接に行っている。ラップ少将はTRADOC隷下の陸軍大学副総長も兼ねる。大学校がTRADOCの「下請け」もたびたび行っている。契約企業が行っていた作業を大学校学生が行い、指揮官、参謀総長他高官の役をシミュレーションで行っている。今年の演習はやはり国名なしだがロシアを思い起こす互角の相手にした大規模戦を想定する。
  3. 陸軍大学校では「動員演習」も始め、陸軍予備役、州軍の隊員を迅速動員して大規模長期戦闘に備える体制を試した。「第二次大戦終結後、完全動員体制は一度もない」とラップ少将は説明。「1942年と同様に奇跡を起こせるだろうか。率直に言って無理です」演習でわかったのは集結地点、動員手順、鉄道輸送能力などいろいろな問題点で、今後の検討と予算手当が必要だ。しかもこれは「完全動員」であって「総動員体制」であれば徴兵となり「一層困難な課題」だという。

Army photo
PACMAN-I 実験(ハワイ)でパニッシャー無人車について歩く兵士。
  1. 陸軍大学校は仮定問題だけ検討しているわけではない。世界各地の実戦部隊の司令部に補佐官を派遣しており、太平洋軍の例では作戦案起草を助け、ナイジェリアでは国軍の幕僚学校立ち上げを支援している。「教官陣には現実の戦闘司令部の感触を維持させ、司令部には代償なしで優秀な思考力を提供している」(ラップ少将)
  2. 生徒となる有望な大佐連に加えて、昨年から大学校は将官向けに継続学習の長期課程を提供している。「とても良い発想で高い価値があるものの時間がかかるのが欠点」とラップ少将は述べ、将官にどうしても不足しがちな部分だと指摘。
  3. 「重複部分をそぎ落としました。将官向けに必要な教育内容を再構成して単なる教養課程ではありません。教室にこもって一日中議論することを一週間続けるわけではありません」とラップ少将は述べ、将官も事例研究に格闘し、論文を書き、記者も招かれたように報道陣の面前で持論を守り通す課程もある。(記者は手ぐすねしなかった)
  4. 「狭い枠組みから抜け出さないといけない」とラップ少将は述べ、15年にもわたり内乱鎮圧作戦に忙殺されてきた米陸軍を言及している。将官、大佐級は「これまでより厳しく創造的に自らの使命を考え直す必要があります」「知的好奇心をなくしたまま自分の考えが絶対と信じれば現実世界に落胆させられるだけです」■

コメント

このブログの人気の投稿

★★★F-35とF-105の意外な類似性、戦闘爆撃機でドッグファイトは不得手

THE BUZZ America's F-105 Thunderchief Fighter-Bomber: The F-35 of the Vietnam War?
David Axe July 3, 2016 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/americas-f-105-thunderchief-fighter-the-f-35-the-vietnam-war-16839
War Is BoringによればF-35はF-16との模擬空戦で旋回速度が遅すぎて勝てなかったとテストパイロットが語っている。
これからの米空軍で最多の戦闘機材になるF-35が数で優勢なロシアや中国の機体と戦って残存できるのだろうか。 答えは歴史の中にある。50年前にも米空軍は同じ予測をしている。攻撃の主力F-105サンダーチーフは重量級ハイテク地上攻撃機で敵戦闘機も同時に撃退できるはず、とF-35と同様だった。 だが事実はF-105も旋回速度が遅くロシア製MiG-21に太刀打ちできず、空軍はF-105の損失を防ぐ特別な戦法を編み出した。同様の措置はF-35でも必要だろう。 F-35とF-105は驚くほど似ている。「F-105とJSFは大型、単座機、単発の戦闘攻撃機で、その時点で最強力なエンジンを搭載、空虚重量は27千ポンド級で翼幅もほぼ同じ35フィートだ」とオーストラリア航空宇宙専門家カーロ・コップが2004年に指摘していた。 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html © 2005, 2007 Carlo Kopp

「両機種とも機内兵装庫があり機外パイロンで燃料と兵装を運べる」とコップは指摘し、「ともに戦闘半径400カイリクラスを目指し推力重量比、高機動操縦性能で制空戦闘機や迎撃機より劣っていた」 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html

★★★米空軍次期戦闘機はもう戦闘機の形状となることはない---第六戦闘機の用語は駆逐

米空軍は次期戦闘機材の姿を未来から考えていますね。目的は航空優勢の確立であり、ドッグファイトは目的ではないと分析し、宇宙やサイバーも含めた多様なシステム構造の一貫として次期機材を捉えております。また、アジア太平洋での作戦をにらみ足の長い機体となると現在の戦闘機と相当形状が異なってくるとし、現状の姿の延長線上に次期機材を想定する勢力の生み出す結果と全く異なる結果を生み出そうとしています。改めて空軍の構成、運用がシステムで成り立っていることを痛感させられる内容です。 Air Force Prepares to Hash Out Future Fighter RequirementsBy: Valerie Insinna, August 28, 2016 (Photo Credit: Northrop Grumman)http://www.defensenews.com/articles/air-force-future-fighter-jet-penetrating-counter-air-next-generation-air-dominance
WASHINGTON — 一年をかけて将来の制空任務に必要な戦術や技術を検討した米空軍が次期戦闘機を実現する第一歩を踏もうとしている。2017年予定の代替策検討(AOA)に先立ち、空軍は予備作業を開始している。AOAはF-35に続く機体の要求条件、調達戦略に焦点をあてる。空軍は次期戦闘機をNGAD次世代航空優勢とかPCA侵攻制空用機材と呼んでいる。
だがアレクサス・グリンケウィッチ准将はAir Superiority 2030による戦力連携チーム(ECCT)を率い、NGADは従来の戦闘ジェット機と大きな違いが2つあると強調する。ひとつめが調達期間を比較的短くすることだ。
「2020年代末までに何らかの形が必要です」と准将はDefense News取材で発言している。「現実的な日程として2028年頃に中心的な技術分野で大幅な投資があれば侵攻制空性能で初期作戦能力が実現します
第二の相違点に関係するのがこのたびまとめられたAir Superiority 2030研究で将来の米空軍の航空優勢で決め手になるのは単一機種としての第六世代戦闘機のような機体ではなく、統合ネットワーク化された一連のシステムの集合だとする。この組み合わせの中に侵攻能…

★★★F-3事業に参画意欲を見せるボーイング、ロッキード・マーティン

Boeing, Lockheed Martin emerge as early rivals for Japan's fighter contest
Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Weekly 19 July 2016 http://www.janes.com/article/62368/boeing-lockheed-martin-emerge-as-early-rivals-for-japan-s-fighter-contest Japan's Mitsubishi F-2 multirole fighter aircraft. Source: Japanese Air Self-Defense Force
航空自衛隊JASDFがめざすF-2多用途戦闘機の後継機種をめぐり、ボーイングとロッキード・マーティンがともに参画の意向を表明した。 IHS Jane’sが両社へ7月19日照会したところ、ともに日本での実績をもとに同事業参入を目指していることがわかった。事業規模は200億ドルといわれる。 防衛省は情報提供要求RfIを発出済みで、2018年4月までに「次期戦闘機」の決断を下すとみられる。 F-2は2000年代に三菱重工業MHIとロッキード・マーティンの共同事業で製造され、2027年ごろまでに全機退役する。 ボーイング広報によれば同社はF-2後継機の要求内容を検討中だという。「日本で当社の存在意義を大きくする方策は常に考えており、日本での安全保障ニーズに応えたい」 ロッキード・マーティン広報は「日本から各社に情報の要求が出ているが、当社もこれまでの日本との関係をさらに強化する今回の機会を活用したい」とし、「F-35事業とF-2でMHIと実績が成果を生んでいることは誇り」とする。 RfIは6月に出ており、各国の戦闘航空機メーカー宛に送付されている。RfIは7月はじめに締め切られており、米二社に加えユーロファイターとSaabもプレゼンを8月末に行う見込みだ。 RfIは既存機種での検討の一助にするほか、各社の事業参加への意欲をさぐることのがねらいだ。MoDはF-2後継機を純国産あるいは共同開発ですすめるかの決断を下すが、後者の場合は既存機種を原型にするとみられる。■