硬軟取り混ぜて対応なのか。トランプ大統領の思考が周囲より先行しすぎて大変だという例ですね。取引が好きな大統領なので意外に結果を引き出してしまうかもしれません。軍事対決を期待していた向きには肩透かしになるかもしれません。金正恩がトランプと波長があえば目的を共通理解できるかもしれません。一層事情が複雑になってきました。
North Korean leader Kim Jong Un. Wong Maye-E/AP
Here's what a Trump-Kim Jong Un meeting could actually look like トランプ-金会談が実現すればこうなる
BANGKOK —一方のコーナーは予測不可能な独裁者、常軌を外れ怒りやすく三代続けて一族で70年間にわたる常に世界一の強国だと言い続けてきた国を支配している。もう一方のコーナーには毒舌の米大統領、就任後100日が過ぎたばかりの自由世界の盟主で何でも口にしかねない人物が予想もつかない場面でいきなり和解の言葉を発した。
- 5月1日にドナルド・トランプの口から出たのは北朝鮮指導者金正恩に和解を求める言葉であった。金正恩は長らく米国の軽蔑と警戒の対象である。トランプは「明らかに実に頭の切れる奴だ」と述べている。
- さらにこんな発言もあった。「本人に会いたい。絶対実現したい。光栄に思うだろう」
- 世界がこれに驚いた。どういうことなのか。外交史上でもこのように内緒話が急発展する事例はない。
- 実現しなかった例もある。ローズヴェルトは第二次大戦中にヒトラーと会談していない。ジョージ・ブッシュ(父子ともに)がサダム・フセインをホワイトハウスに招いたことはない。一方実現した例もある。ケネディはフルシチョフとウィーンで会った。中の雪解けの象徴としてニクソンは北京を訪ね、米毛沢東にそのまま向かった。
- 今となれば過去事例は当たり前に見えるが、当時は現在のようなインターネット社会でなく即座に拡散するソーシャルメディアの効力をトランプは熟知しているからこそ多用しているのだろう。
- にらみ合い中の指導者二人が顔を合わせれば大きな可能性が生まれるが、本当に実現すれば裏方には悪夢となる。
- 今回の観測気球の意味が正しく受け止められればどのように実現されるだろうか。現時点で考えられる想定は以下の通りだ。
会見場所はどこか
- 可能性があるのが軍事境界線地帯でドラマ性が高い場所となる。交渉テーブルをはさみ、片方が北、反対が南だ。
- ここで会談する利点は保安体制がすでにあることだ。地球上で一番厳しい保安状況と言ってよい。中国国内の可能性も低いが存在する。
- だがそれ以外の可能性はどうだろうか。中立で有名なスイスはどうか。今は国内を出ることのない金正恩だが以前スイスで学んでいる。ホワイトハウスの可能性もある。トランプはエジプト、トルコの大統領をすでに招いており、両名ともアメリカの価値観とかけ離れた人物だ。もちろんこれはまず起こりえないし、実施になれば物議をかもすだろうが、奇妙なことはよく起こる。
- あるいは予想外の場所、だれも知らない場所かもしれない。1989年のこと、ジョージ・H・W・ブッシュはソ連指導者ミハイル・ゴルバチェフとマルタ沖合の軍艦で会談している。その結果、ソ連と東ヨーロッパに変化が生まれた。マルタ島は急に関心の的となり、ヤルタと同義語になった。ローズヴェルト、チャーチル、スターリンが1945年に会談したクリミヤ半島の地名でヨーロッパの戦後像が検討された。
- 米本国も微妙な会談の場所になっている。キャンプデイヴィッドはカーター政権時代にイスラエルのメナヘム・ベギンとエジプトのアンワール・サダトの首脳会談会場になった。そんな例は枚挙にいとまない。1905年にはセオドア・ロウズヴェルトが日露両国の和平の仲介をしたのはニューイングランドの寒村という考えにくい場所だった。最近でもオハイオ州デイトンというあり得ない場所がボスニア戦争終結の平和条約締結地となっている。ただしいずれの場合も交戦中の他国を招いた米国自体は戦争に加担していない。
- 平壌はどうか。前例はある。マデリン・オルブライト国務長官や小泉純一郎首相、さらに有名バスケットボール選手デニス・ロッドマンまでが同地を訪れている。金の家系に海外旅行を嫌う傾向があるのは自分の手で状況を掌握できなくなるのを忌避しているのだろう。
- どの場合でもDMZ以外の場所でトランプ-金会談が高度警戒態勢の下で実現すればその開催場所は永遠とはいかないが長くその性質を変えるだろう。
何を話すのか
- 普通は北朝鮮の核廃棄が最初の議題と考えるはずだ。だが予測困難な指導者二人なので確実とは言えない。
- トランプのこれまでのスタイルを見れば、実際の交渉が始まる前に相互理解に時間が必要だろう。だが主要議題がすぐに中心になる。
- その例に北朝鮮援助があり、同国は何度も瀬戸際工作をしてまで窮状を訴え援助への関心を喚起してきた経緯がある。韓国との関係もある。武器テストの問題ではミサイルや核が中心で米国中国も韓国同様に不快感を表明している。
どんな反応が出るか
- 不確定要素は韓国、ロシアそしてもちろん中国だ。長年にわたり北の守護者だった中国がここにきて警戒心といら立ちを隠せなくなっている。
- 韓国の場合は首脳会談は存続を問われる機会となる。北の軍事能力が精度と火力双方で南を大規模破壊できることで異論は少ないが、韓国を軍事的に保護する米国が北と直接会談すれば中身がない会談であっても韓国にはきびしい安全保障上の意味が出てくる。
- 中国は自国影響圏内に米国の介入を嫌い、南シナ海領有権を巡ってはすでに米国と意見が対立しているが、台湾問題が絶えず背景にある。中国はここにきて韓国に甘言を示し、習近平主席が2014年にソウル訪問をしたのは北に対するメッセージであった。だが中国はTHAADが韓国国内に配備されるのを恐れ、現在は再び両国間に緊張が戻っている。
- こうした背景の中で開くトランプ-金会談では中国の巻き込みが必須であり、中国の北への圧力へ期待せざるを得ない。トランプ政権がこのことを一貫して主張している。だが通常の思考が必ずしも成立しない。トランプの予測破りの就任式前の台湾総統への電話が一例だ。
- そしてロシアの指導者ウラジミール・プーチンが会談の行方を遠巻きながら慎重かつ神経質に見守るはずだ。首脳会談が実現すればロシアの対中国、米国、そして北朝鮮との関係は変わってしまうだろう。
- メディアの反応も忘れてならない。明らかに会談は今年一番の目立つ出来事になるだろう。絶好の報道機会となり数百の報道機関が殺到するはずだ。サミットやオリンピックなみのインフラが必要となる。
会談の意義は
- 政治面の意義はともかくドナルド・トランプと金正恩の直接会談は21世紀最大のドラマの場面となる。開催場所がどこであろうと。
- 三つの意味が同時進行する。ドナルド・トランプが率いる米国と政権の目指す方向。金一族が北朝鮮を支配してきた気まぐれかつ他に例のない統治手法、そして東アジア内の安全保障と防衛体制だ。
- 大きな意義があり、騒々しい事態になる。どこか非現実的で予測不可能で重要な機会になる。金正恩とドナルド・トランプという世界を変える力を持つ指導者二名にはすべて全く違和感のないことだが。
- そうなると期待したくなくなるかもしれない。火曜日午後に北朝鮮国営通信社が以下を配信してている。なんといっても同国の正式名称は朝鮮民主主義人民共和国なのだ。「トランプ政権は米国で発足したばかりでDPRKを二つの点で挑発しているが競合相手のことは何も知らないのだ」■
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Ted Anthony, director of Asia-Pacific News for The Associated Press, is based in Bangkok, Thailand. He has covered Asia for nearly a decade over his career and traveled to North Korea six times since 2014. Follow him on Twitter at @anthonyted
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