スキップしてメイン コンテンツに移動

★F-15.F/A-18の発展改修型を売りこむボーイングの勝算



ボーイングは商魂たくましい企業ですから既存機種を改良して性能威力を向上させて勝算ありと見ているわけです。F-35があることでF-15やF/A-18が逆に注目されるのは面白い現象ですね。もし日本がF-15Jを改修するとしたら三菱重工業で対応可能なのでしょうか。米空軍がF-XあらためPCAに向かう中、日本も大型ステルス機F-3開発に乗り出していますが、途中でF-15の大幅改修は避けて通れないのではないでしょうか。

攻撃任務では高性能版F-15は小口径爆弾16発、AIM-120AMRAAM4発、AGM-88HARM2発、JDAM-ER(2千ポンド)一発、600ガロン燃料タンク二個を搭載するCredit: Boeing

 

Boeing Touts Advanced Fighter Versions As ‘Different Animals’ ボーイングが売り込む高性能版戦闘機各型は「別の生き物」になる

Aviation Week & Space TechnologyMay 25, 2017 James Drew | Aviation Week & Space Technology


  1. ロッキード・マーティンのX-35がボーイングX-32を破り総額1兆ドルの共用打撃戦闘機に採用され、ボーイングはこれで戦闘機事業は先が見えたと考えたはずだ。だが16年たってボーイングのF-15とF/A-18は20年ほどのステルス熱狂時代を生き延び、旧式化する予測を跳ね返し、しっかり生き残っている。
  2. 一方でロッキードではF-35ライトニングIIと生産終了したF-22ラプターがともに費用超過と開発の遅れに苦しんでいるが、ボーイングはイーグル、スーパーホーネット、グラウラーの各機により高性能装備、センサーや兵装を組み込み、第五世代戦闘機に十分対抗できる機体になったとする。
  3. ボーイングはCH-47チヌークやAH-64アパッチの供用を2060年まで可能にする技術の順次応用「反復革新」により、同社の戦闘機生産ラインも2020年代初頭までの生産予定が確保され、さらにその先でも稼働させるとする。機体自体は2040年を越しても運用可能だ。
イーグル:ステルスはなくても火力はもっと強力になる
  1. 米海軍は当初構想どおりスーパーホーネットを全機導入したが、脅威の変化で120機程度の追加調達に向かいそうでブロック3機材を2019年以降に導入する。米空軍は120億ドルでC型イーグル、E型ストライクイーグルの改修を2025年にかけ行う。ここにはボーイング自社資金投入や海外運用国の改修分50億ドルはふくまれていない。
  2. ボーイングに言わせるとF-35やF-22に対してステルス性除けば十分対抗できる性能が実現しているという。高性能センサーや兵装がF/A-18やF-15に投入されているが、F-35では2020年代のブロック4まで待つことになるという。
  3. 低視認性や全方位ステルス性能はないが、「ドアを破れば航続距離、攻撃力、接続性を当社機材が提供します」とボーイングは説明。ボーイングのファントムワークスが開発中の新装備をF/A-18やF-15に搭載し統合防空体制下でもF-22やF-35同様に十分対抗できるようにする。戦闘シナリオの大部分では空対空、空対地、対艦攻撃のいずれでも「高性能版F-15」や「高性能版F/A-18」が理想的な機材になるという。
  4. 「生産中の航空優勢戦闘機でF-15に優る機材はありません」とボーイング・ミリタリーエアクラフト副社長F-15事業担当のスティーブ・パーカーは述べる。「同機の速力、高高度上昇性能、兵装搭載量以上の機材はありません」
Boeing fighter
ボーイングは電子戦能力、赤外線被探知性能の向上でF/A-18スーパーホーネットの残存性は大幅に向上すると説明。 Credit: Boeing

  1. 同社は以前提唱していた「サイレントイーグル」構想は取り下げた。兵装類を機内搭載しレーダー探知性を下げる構想だった。ボーイングによれば敵側もステルス性能に対して周波数変更で対抗しているという。またより強力なアクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーの導入や長距離広範囲探査用の赤外線探知追尾ポッドが導入されつつある。
  2. サイレントイーグル構想で提唱された性能内容はサウジアラビア向けに引き渡しが進むF-15SAやカタールに提案中のF-15QAさらにイスラエルが検討中の高性能版機材に搭載される。
  3. 米空軍の改修策ではボーイングが世界最速の処理速度と説明するミッションコンピュータ(高性能ディプレイ・コアプロセッサーII)やきわめて強力な電子戦装備(BAEシステムズ製イーグル・パッシブ/アクティブ警告残存装備)を搭載する。
  1. ボーイングはレイセオン製APG-63(V)3 AESAレーダーを制空用F-15Cイーグル200機中125機に搭載し、さらにレイセオンのAPG-82(V)1をF-15Eストライクイーグル戦闘爆撃機200機近くに搭載する準備中だ。米国仕様のF-15技術ロードマップでは2025年までに120億ドルを投入することにしている
  2. 最新型イーグルではフライバイワイヤ飛行制御を導入し兵装装着ポイントNo. 1からNo. 9を利用可能とし、ソーティーあたりの兵装搭載量、センサー運用を増やしている。さらにミサイル22発を運用できる。
  3. 前席後席にデジタル共用ヘルメット装着目標標的システムが搭載し、将来は広範囲ディプレイを採用したコックピットや低照度ヘッドアップディスプレイを搭載すべくボーイングは各社と共同開発中。最新のF-15ではジェネラルエレクトリック製F110-129ターボファン双発をサウジアラビアが選定した。またGEのさらに強力なF110-132の搭載も可能でこれはアラブ首長国連邦がロッキードF-16E/Fに搭載中だ。
  4. 一番目立つ変更点は機体構造の寿命延長だ。米空軍が飛ばすイーグルは9千飛行時間まで供用できる設計だが、改修型F-15は主翼と胴体部分を改修し2万飛行時間まで延長する。
  5. 「全く別の生き物といってよいでしょう」とパーカーは言う。「見かけは同じですが、大きく異なる機体になっています。ロードマップではF-15を2040年まで供用する想定です」
  6. ほんの一二年前までボーイングはF-15とF/A-18双方で生産継続の見込みは少ないと見ていたが大きく様相が変わってきた。
  7. 現在の発注規模でF-15生産は2019年まで続けられると同社は見ている。追加発注で2022年後半まで伸びそうだという。「2020年代中頃までは確実ですね」とパーカーも述べる。ボーイングは「最大72機までの」カタール向けF-15QAの受注を固めており、中東では別の国も相当数の発注を検討中だという。おそらくイスラエルのことだろう。
  1. 米軍向けストライクイーグルの納入は2000年代中頃で終わったが、パーカーは新規受注に積極的だ。今のところ米空軍は新規製造のF-15に関心を示しておらずF-15Cの後継は第六世代機の侵攻型制空戦闘機(PCA)としている。PCA開発が完了し納入開始までF-15Cへの予算投入は続くとパーカーは見ており、1970年代製の各機を2030年代まで飛ばすべく構造面での改修が必要だとする。
スーパーホーネットの最新動向
  1. F/A-18では海軍はスーパーホーネット調達はF-35Cと並行し今後も進め攻撃戦闘機の機数を確保する。海軍は563機を導入済みだが、ボーイングとしては追加発注を期待したいところだ。2019会計年度以降に納入される国内外向け機材はブロック3仕様になる。
  2. クウェートは「上限40機」のF/A-18E/F調達を承認され、カナダも「つなぎ機材」で18機を新規調達し、旧式化したCF-18ホーネットに追加する。ただしカナダ向け商談はボーイングが提起しているボンバルディア商用機向けカナダ政府補助金を巡る論争の行方に左右されそうだ。そのほかインド、フィンランドでもスーパーホーネット売り込みが展開中で、カナダもさらに発注数を増やす可能性がある。ただし、デンマークではロッキードF-35に敗れ受注できなかった。
  3. グローバル戦闘攻撃機事業のグローバル営業部長ラリー・バートによれば含めF/A-18生産は2020年代中頃まで継続できるという。生産ラインの維持には年間24機のスーパーホーネット生産が必要だ。
  1. ブロック3も以前の機材から相当進化しているが、ボーイングはブロック4の性能検討も開始している。
  2. 「F-35はめざさない。すべてのミッションで第五世代機が必要ではないですからね」とバートは言うが、低視認性機体の新規開発よりF/A-18やF-15の性能を進化させていく方がはるかに容易だと指摘する。「ミッションシステムズ、センサー類は進化し続け、スーパーホーネットの性能は向上していきます」
グラウラーはどうなるか
  1. グラウラーはボーイング流の「反復革新」の例そのもので、米海軍は当初の88機導入を160機近くまで増やす。
  2. 海軍は同機の供用期間を2040年代まで延長する企画にとりくんでいる。「高性能グラウラー」で中心となるのがノースロップ・グラマンの次世代ジャマーで4月に重要な設計審査を通過したばかりだ。またグラウラー搭載のALQ-218レーダー警戒電子支援電子情報処理システムもノースロップが製造する。
  3. ボーイングによれば米海軍とグラウラー改修事業で交渉が継続中で、機体構造寿命を現行の6千時間を9千時間に引き上げる。GEのF414高性能エンジンをグラウラー、スーパーホーネット双方に搭載する案もボーイングが売り込んでおり、実現すれば推力が18%増える。
  4. グラウラーを運用するのは米国以外ではオーストラリアのみだがすでに次世代ジャマーの導入を決めている。カナダ、クウェート向けのスーパーホーネット商談ではグラウラー導入は入っていないとボーイングは確認している。■




コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...