NGAD試作機が初飛行したとの驚きのローパー発言から1年。高度の保安体制なのか、同機の情報はちっとも聞こえてきません。それとも従来の戦闘機開発と全く違う形態なのか。あるいは実はNGADはまだ存在しないのか。軍民の航空事情に詳しいアブラフィア氏に現時点でわかっていること、わからないことを整理してもらいましょう。Aviation Weekの記事からです。
Credit: Kenneth McNulty/U.S. Air Force
米空軍が進める次世代制空(NGAD)が大規模な事業になるのはまちがいない。だが二つ不明な点が残る。実機はすでに飛行しているのか、またどの会社が主契約企業なのか。その他にも疑問点が5つある。
まず、昨年9月のこと、当時の空軍調達トップ、ウィル・ローパーが実寸大試作機の存在を明らかにし、飛行テスト中で「記録を数々破っている」とした。NGADをさしているようだったが、もともと同構想は進化系の機体で、試作機の完成度に疑問があったし、同機がNGADの最終目標とどこまで関連するのかは今も不明だ。だがNGADが事業として進展しているのは明らかで、R&D予算だけで2022年度予算要求に15億ドルが計上されている。ちなみに2021年度は9億ドルだった。
次に、試作機はどこが製造したのか。今年第二四半期にロッキード・マーティンが一株当たり0.61ドルを極秘事業収益とし、第一四半期実績で135百万ドルを極秘事業で売り上げたと公表している。同社はスカンクワークスに大型新工場を立ち上げた。同社は極秘偵察機を小規模製造しており、大規模かつ新規工場は不要なはずだ。となると新工場は新型戦闘機関連なのか。だが、ボーイングやノースロップ・グラマンも競合企業のはずだ。
こうした点が見えない上に、さらにNGADをめぐり疑問が五点残ったままだ。
1. どんなタイミングになるのか。機体開発しミッションシステムを統合し、その他重要部品も搭載するのはテスト機組立よりはるかに大規模の業務だ。試作機が飛んでも作戦機材の製造は別の次元だ。ロッキード・マーティンYF-22の初飛行からF-22の引き渡しまで12年が経過している。X-35からF-35までも10年近くかかっている。デジタル化が工程を短縮したというが、実際に効果が出ている証拠はない。デジタル時代前のF-15とF-16では初飛行から引き渡し開始までそれぞれ2年、5年しかかかっていない。
2. 何機調達するのか。ローパーはデジタルセンチュリーシリーズとして、比較的小規模の調達で各種機材を連続開発すると言っていた。だが調達規模は時間と関係する。調達に10年もかかるような戦闘機なら少数機調達は著しく非効率となる。また敵も関係する。超大国が相手なら中短期的には現行モデルの生産継続のほうが次の戦闘機の完成を待つよりも賢い選択だ。
3. 各軍共用性をどこまで持たせるのか。海軍のF/A-XX事業はNGADより進展も予算確保も遅れているようだ。歴史を見れば、NGADを海軍仕様にしても要求水準を満足させる可能性は低い。共用打撃戦闘機は空軍、海兵隊が中心の戦闘機だ。海軍はF-35C調達は小規模にとどめる。F-14、F-15、F-16、F/A-18、F-22の各機で「共用運用性」はすべて失敗している。米軍で真の共用機材だったマクダネルF-4はもはや過去の存在で、米空軍は共用機材の実現に乗り気ではない。
4. どこまでグローバルになるのか。F-35には海外発注があり、F-22は政治的かつ経済的な理由で海外発注は皆無だった。F-15はハイエンド戦闘機輸出の成功例となった。NGAD生産が長期にわたり国際的な関心を集めれば、イーグル導入国への売り込みが期待される。その一つが日本で、NGAD共同生産は国産F-3ステルス戦闘機開発に代わる有力な選択肢となりうる。
(これはあり得るのでしょうか。F-3開発が急にNGAD共同開発になれば一大事です)
5. 調達が本格化すればどんな影響が出るか。NGAD調達が拡大すれば予算面でF-35A、F-15EXの調達にしわ寄せが出る。後者は古い機材が原型で、調達ペースもゆっくりしているが、NGADの登場でF-15EXは終了になっておかしくない。また空軍参謀早朝チャールズ・Q・ブラウン大将はここにきてF-22を退役させ、F-35A、F-15、F-16、NGADで戦闘機部隊を構成すると発言している。
これに加え、新型機の性能が見えてこない。同機を配備した場合、中国との力の均衡にどんな影響が出るのか。NGADは無人機とチームを組んで西太平洋における軍事力不足を補えるか。この答えが出るのは数年先だろうが、米国の戦略地図を左右しかねない。■
The views expressed are not necessarily those of Aviation Week.
Opinion: Key Questions About USAF's NGAD Sixth-Gen Aircraft Program
Richard Aboulafia August 19, 2021
Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.
NGADは五里霧中ですね。
返信削除個人的推測では、初飛行したのは核となる有人ユニット(コアファイターみたいな)なのかな?と思いましたが・・・どうなんだろう。
どこかで見た記事だと、コア以外を選択交換可能とすることで任務の多様性と性能更新速度を発揮するみたいなことが書かれてましたが、それだと、小規模の導入では旨味が少ない機体にも思える。