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フィリピン上空を通過した謎の機体の正体を推測する。RQ-180か。そもそも同機の姿は今のところ不明なのだが....

 Mystery flying wing over the Philippines RQ-180

FUGNIT 

ィリピンは南シナ海、フィリピン海に囲まれ、ともに中国、米国の軍事活動が活発になっている場所だ。爆撃機から無人機まで各種装備が上空を飛ぶのが普通になっているが、9月2日現地時間午前6時15分ころ風景写真家マイケル・フグニットが異様な姿をレンズに捉えた。全翼機のようでダイヤモンド形の機体で長い主翼、双発のようで排気はひとつにまとめてあり、機体に膨らみがついている。

 

フグニットは日の出を捉えるつもりでサナンマグダレーニャへ出かけたものの、上空を通過する航空機に気づいたので撮影したとThe War Zoneに語った。その写真を見ると通常の民間機や軍用機と異なる機体が空を横切るのがわかる。

 

MICHAEL FUGNIT

マイケルの写真がこれ。本人は"Fujifilmxt2 +50-200mm"で撮影し、早朝の陽光のため画質が粗くなったと説明。

 

現時点では写真が本物である裏付けが取れていないことを明記しておく。フォトショップで点検したが何も不審な点はなかった。本人が写真を偽造したと信じる理由もないが、写真データは操作可能であることは確かだ。今後、別のツールを使い、さらに専門家の意見も聞き、真贋を確かめる。

 

一見すると写真の機体はRQ-180センティネルと通常呼ばれる機体に似ているようだ。高高度長時間飛行可能のステルス無人機で、極めて限定的に供用され、極秘作戦との関連が言われる。同地上空を飛行していたのであれば説明がつく。なんといっても同機の運用想定に符合する場所であるからだが、同時に他地区への移動経路にもあたり、米本土への帰還途中だった可能性もある。

 

また日の出という時間帯で人口稠密地帯上空を横断し太平洋に抜けるフライトも説明がつく。同機はネヴァダのエリア51を本拠地に活動しているといわれ、超長距離ミッションに投入されているが、インド洋のディエゴガルシア島も運用基地になっている。同地の特別施設はB-2スピリットステルス爆撃機の支援も可能で、RQ-180への対応も可能なはずだ。その他極秘機材の運用地としてグアムのアンダーセン空軍基地もあるが、同機運用を展開するのはあまりにも目立つ場所になる。

 

HANGAR B PRODUCTIONS

RQ-180の公開情報から作成した想像図。

 

今回とらえられた機体の姿は我々が理解している米ステルス機HALE(高高度長時間飛行)無人機RQ-180の形状に似ているが可能性は別にもある。中国には無人機開発案件が多数があり、なH-20ステルス爆撃機以外の無人機開発も進展中だ。RQ-180におおむね近い形のCH-7レインボーもある。またスターシャドーの開発も判明しており、機体形状は今回の画像のものと近い。中国の無人機では存在が判明しているものとしていないものがあり、今回の画像に符合するものもある。

 

今回の機体の飛行高度が不明のため、機体が戦略機材で中高度でも長時間飛行可能な性能だったのかも判明しない。とはいえ、中国製無人機の飛行が同地区で日常茶飯事になるのは数年先のことのはずで、今回のフライトが秘密のうちに実施されたテストだった可能性もある。偵察機材に領有権をめぐり対立する諸国の上空を飛行させ、重要情報を中国が入手するのはありうる事態だ。

 

機体がH-20ステルス爆撃機だった可能性は極めて低い。まず、同機が完成済みで飛行テストを開始しているとの情報はない。ではB-2スピリットが移動飛行した可能性はどうか。

 

写真ではB-2の特徴と異なる形状に見える。また撮影時点の無線交信やフライト追跡データにはB-2が同地上空を飛んだ痕跡はない。RQ-170という別の可能性もある。同機が海上監視用に改良されていることが判明しており、アジアに投入されているのも事実だが、主翼形状が異なる。ただし、可能性としては残しておく。

 

ということだと、推論にふたつの問題がある。まず、米英インド日本オーストラリアの各国がフィリピン海で最大規模の海軍演習を展開した。これは中国にとって大きな関心事項のはずだ。演習は8月末に閉幕となったが、同機が飛行した時点で艦艇がまだ残っていた。逆も真であり、中国艦艇も同地区で活動を展開しており、米国が大きな関心を示す対象であるのも確かだ。

 

南シナ海、フィリピン海はともに世界中で最も頻繁に監視を受けており、米中のみならずその他の国の偵察機多数が毎日飛び回っている。

 

次にこの仮説に関連するか関連しないかわからないが次の事実がある。フィリピン現地報道機関には同日に謎の機体に向け戦闘機スクランブルがあったとの記事が出ている。時間も写真撮影時とほぼ合致する。そのひとつInquirer.netの記事は以下の通りだ。

フィリピン空軍(PAF) は「スクランブル出撃」でFA-50軽戦闘機の二機を発進させ、「正体不明の航空機」に向かわせた。この機体はフィリピン領空に9月2日接近したもの。

PAF発表ではフィリピン防空指揮所が未確認機がパンガシナン州ボリナオ北西120カイリのフィリピン防空識別圏へ接近するのを探知した。

「未確認機は高度21千フィート、265ノットで北東に向かっていた」

「FA-50編隊は最大速力で未確認機へ向かうと、4分後に未確認機は北へ方向を変え、400ノットに加速しフィリピン領空から離れた。迎撃は9:45AMで終了した」とPAFは述べている。

空軍報道官メイナード・マリアノ中佐は同機の飛行意図は不明で無線交信への返答もなかったと記者団に語った。

 

ここで最大の相違点は時間だ。空軍の迎撃が終了したのは写真撮影時間から3.5時間後のことだ。ステルス機は写真撮影後に上空に滞空していたのか。ステルス偵察機はそもそもその機能を有する。高度もHALEにしては低すぎるが、戦術機にはあり得る話だ。またこういう種類の機体には高度の電子戦装備が搭載され自機防御を行い、実際の高度の確定は困難になることがある。

 

今回は基本的な背景情報を整理してから記事掲載をした。映像のさらなる解析や事実解明が進めば別途お伝えする。最後になるが、映像そのものが真実でない可能性もあるので、今回の記事はすべて速報であるとお断りしておく。■


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Mystery Flying Wing Aircraft Photographed Over The Philippines

The aircraft resembles the one seen in an image taken in California a year ago that is thought to be of the elusive RQ-180 stealth spy aircraft. 

BY TYLER ROGOWAY SEPTEMBER 4, 2021

コメント

  1. ぼたんのちから2021年9月7日 20:01

    この未確認機は、以下の理由により、RQ-170と推定する。
    写真を見ると、主翼が先端になるほど細くなっていて、胴体の光の反射が一様であることによる。もちろん不鮮明な写真なので確定でない。
    RQ-180ならば、レーダーで捉えられないだろう。PLAのRQ-170のコピーの可能性はあるが、フィリピン近海での飛行は冒険だろう。
    RQ-170ならば、アフガン方面からの帰還と考えられる。それにしても排気煙はいただけない。

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