スキップしてメイン コンテンツに移動

747を巡航ミサイル母機にする冷戦時の構想を現在実現したら。爆撃機の運行経費と比較すれば、重武装機として活躍の余地があるのでは。

 

ーイングは冷戦時に747に空中発射式巡航ミサイル72発を搭載し、長距離重武装機に改装し、スタンドオフ攻撃に投入する企画書を作成した。同機は747巡航ミサイル搭載機(CMCA)と称し、既存重爆撃機で各型ミサイルを運用するよりずっと費用対効果が高い機体になるはずだった。

747CMCAは結局構想段階の域を出ず、レーガン政権はB-1を復活させ、B-2も直後に供用開始した。だが民間機を貨物人員輸送以外の任務に投入する構想を再考していいのではないか。

747 に巡航ミサイルを多数搭載する?

1977年6月30日、ジミー・カーター大統領から発表があり、B-1開発を打ち切り、同事業の予算超過とともにミサイル技術の進展を理由にあげた。レーガン政権が同機事業を復活させ、現在も供用中のB-1Bランサーとなった。ノースロップ・グラマンのB-2スピリットも80年代に戦力化され、米国の戦略爆撃戦力は世界最上位となった。

だが米国では大ペイロード機材で長距離性能を発揮し、敵標的を攻撃する構想があった。既存民間機を改装し、当時開発されたばかりのAGM-86空中発射式巡航ミサイルを搭載すれば経済合理性からみて順当とされ、ボーイング747が候補機に上がった。

ボーイング7471969年初飛行し、もともとは空軍向け輸送機競合でロッキードC-5に敗退したものを民間航空用に作り直したものだ。それが「ジャンボ」ジェットの誕生の背景で、ジャンボとはよく言ったものだ。747は当時として圧倒的な存在感のある大きさで、全長225フィート、垂直尾翼は六階建てビルの高さに相当した。

同機開発は16カ月と比較的短期で進んでが、その作業規模は莫大なものだった。約5万名が747事業に携わった。技術図面75千点で部品点数6百万をカバーし、配線は全長171マイルに至った。風洞実験は合計15千時間にわたり、フライトテストも1,500時間に及んだ。

大規模事業だが同時に賭けでもあった。ボーイングは開発費用の捻出に苦しみ、20億ドル(現在の価値で149億ドル)を借り入れて完成させた。だが失敗すれば、同社は大変な事態になるところだった。

それを念頭に747CMCA構想が生まれた。ボーイングは空軍が同機の航続距離6千マイル、ペイロード77千ポンド性能に注目しているとわかっており、1980年にCMCAを提案した。

 

747 CMCA構想とは

ボーイングは747-200C一機を選び、機内内装を取り外し大型ペイロードを搭載するとした。同型は機首が開閉し貨物を出し入れする構造だった。

747CMCAAGM-86巡航ミサイルを搭載する構想だったが、同ミサイルはB-52への搭載が先に決まっており、有効射程1,500マイルの性能を生かし、ソ連の地対空ミサイルの射程外から発射し、爆撃機の安全を高める想定だった。

だがB-52では巡航ミサイル20発から21発を搭載するのに対し、747CMCCAなら72発も搭載できるはずだった。

Patent drawing of the 747 CMCA

 

ミサイルは747胴体内の回転式発射機9基に搭載する構想だった。各発射機に8発を装填する。機体後部の側面に発射孔を作り、そこからミサイルを発射する構想で、回転発射機を後部へ移動させるとした。一回で発射できるミサイルは一発に限られるが、ボーイングは短時間で連続発射させる構想だった。

 

ミサイルには衛星データリンクで標的情報を与える。一方、747は空中待機し、機内の指揮統制要員が標的情報を中継する。

これにより、747CMCAB-52三機分の巡航ミサイルを運用し、747でのミサイル運用は大幅な費用節約につながるはずだった。

爆撃機より安価になる

Artist’s rendering of a 747 CMCA firing cruise missiles

B-1Bランサーが747CMCAの実現を不要とする同規模のペイロードを実現し、ジェネラルエレクトリックF101-GE-102アフターバーナー付きエンジンにより同爆撃機は高速飛行とに高い操縦性に加え、強力な攻撃能力を実現した。ただし飛行時間当たり経費は61,000ドルと非常に高価な運用となった。ただしB-52のほうが高く、70千ドルになり、B-2では何と130,159ドルが必要だ。これに対し、747改装案の時間当たり経費は25千ドル程度だった。

米爆撃機各型の運航経費がここまで高いのは、機体数と関係がある。空軍はB-1B62機、B-5276機、B-220機運用する。各型の機数がここまで少ないため、部品単価が非常に高くなり、上昇し続けている。これに対し7471,500機製造され、部品製造体制や保守点検インフラは既存のものを世界各地で利用できる。つまり、747原型なら機体価格のみならず運航経費でも大きな経済効果が期待できる。

2014年にタイラー・ロゴウェイが指摘していたが、747で巡航ミサイル72発を運用していれば、20年続いたアフガニスタン戦で重宝されていただろう。運航経費が低く長時間滞空でき、巨大なペイロードを活用できたはずだ。制空権が確立済みの空域で747CMCAは航空支援の大きな効果を実現していたはずで、その他イラク、シリアでも活躍していただろう。さらにJDAM各種の運用にも改装されていれば、同機で対応可能となる標的数は72どころか数百か所に増えていたはずだ。しかも専用爆撃機の数分の一の費用で実現していたはずだ。

CMCA構想が復活する?

B-1BB-2ともに期待の新型ステルス爆撃機B-21レイダーの導入を持って退役する。B-21ではさらに高度のステルス性能でありながら、B-2同様のグローバル攻撃能力を実現する。ただし、一点大きな落とし穴がある。B-21B-2より小型な機体で、ペイロードは30千ポンドに限定される。B-240千ポンド、B-1B75千ポンドだ。

B-21では新技術の採用と機体が一新されることもありB-2より運航経費は下がる見込みだが、ステルス機の運用経費は高くなりがちだ。空軍が非ステルス機のF-15EX導入に走ったのは、F-35より供用期間が三倍でありながら時間当たり運航経費は半分になるためだ。ノースロップ、空軍ともにB-21は予定より早く進展している、大きな障害はない、と主張しているが、同機の飛行時間当たり運用経費がいくらになるのか興味を呼ぶ点である。

米国はもはやアフガニスタンやイラクで航空戦闘は展開しておらず、大国間戦への対応に移ろうとしている。前回の冷戦と同様に米中両国の対立が直ちに武力衝突に展開する可能性は低い。今回の冷戦で戦争への移行を防ぐのは相互破壊が保証された状態ではなく、経済崩壊が確実に発生することだ。

米中両国の経済は複雑にからみあっており、世界第一位第二位の経済大国が開戦となり核爆弾を使えば、世界の商取引は苦境に陥る。両国が戦闘状態になれば、両国は外交力、資源を有しているので、世界各地が戦場になる可能性がある。戦争回避が可能かは定かではないが、冷戦モデルを投入すれば、核の冬の到来を防止できるのは明らかだ。

米特殊作戦部隊が従来より広く世界各地に拡散しているため、同盟国協力国部隊による対テロ作戦の支援では従来に増して経済性の高い航空支援がとくに開発途上国で必要となる。特殊作戦司令部には武装上空監視事業があり、このニーズに対応すべく、民間機を改装した重武装機を投入しようとしている。

アフリカのように広大な対象地において各地で航空支援を行おうとすると「距離の暴力」に直面する。747改装で長距離順応ミサイルや短距離弾を搭載すれば大陸規模の航続距離を前提とするミッションを実現できるし、空中給油で距離はさらに延長できる。言い換えれば21世紀版の747武装機構想は戦場を制覇する可能性が十分あることになる。

747の生産は来年にも終了する予定となっているが、中古機を改装すればはるかに安価に構想を実現できる。同様にその他民間機も改装し、経済的に同じ機能を実現できるはずだ。

 

America's plan to build 747 arsenal ships packed with cruise missiles

Alex Hollings | September 19, 2021

 


 

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ