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ご自分の敷地に突然ヘリコプターが着陸してきたら、しかも機種がロシア機だったら....米陸軍の極秘飛行隊の存在が改めて明らかになったノースカロライナの事件。

アメリカらしいスケールの大きな話ですね。同時におおらかでもある。ノースカロライナという場所ゆえでしょうか。小学校に故障ヘリが緊急着陸して大騒ぎになり、挙句の果ては飛行停止を申し入れるような日本の地方公共団体とは大違いです。にしても米軍の闇の部隊が今回は絡んでいるようです。


A screen capture from a YouTube video showing an Mi-17-type helicopter at a farm in North Carolina in 2021.

YOUTUBE SCREEN CAPTURES

 

 

年はじめのこと、ノースカロライナで農園を経営するダン・ムーアは尋常でない訪問者を迎えた。しかも二回も。まずロシア製Mi-17ヒップヘリコプターが緊急着陸すると、暗灰色塗装のベル407が到着し、交換部品を届けた。このベル407は今年初めにロサンジェルス上空で目撃されている。両機種は米軍の秘密航空部隊の所属のようだ。

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ムーアは民間航空パトロール隊員でもあり、長年パイロットを務めているが、その際の出来事を航空専門誌Air Factsに寄稿した。

 

「隣家からお宅の前庭にヘリコプターがいるぞ、との連絡が入った」とムーアは回想している。「なに、ヘリコプターだって、うちの敷地に」と混乱したが、すぐに緊急着陸だなとわかったという。

 

「ノースカロライナに住んでいると上空で軍の活動が多い。隣人に機種がわかるか、と聞くと特殊部隊の駐屯地フォートブラッグに関係する本人も機種がわからない。見たことのない機種だ。大型機だと答えた」

 

問題のヘリコプターはMi-17でカモフラージュ塗装を施し、機体排気口後部が黒く塗装されていた。ムーアは写真とビデオを撮影したが、運用者の素性を現す表示ははっきり示されていない。

 

ただし、軍用仕様の特徴がみられた。センサーボールが機首機銃タレットの下につき、側面には装甲版がついていた。双発エンジンの空気取り入れ口の前に分離版がついており、砂漠や非整地の運用に有効だ。尾部にはアンテナがあり、皿状アンテナは高周波衛星通信(SATCOM)でよく使われる。

 

ムーアは隣人に電話でヘリコプター乗員に連絡させると、機付長から状況の説明があったという。Mi-17は修理が必要でそれまでムーアの敷地内に残るという。

 

「農園にトラックがあり、キーがついたままだ。それを運転して町で必要なものを調達していいよと答えた。また農園の作業所に工具類がそろっている。ここも使ってもらってよい。二時間でそちらへ移動するので工具でも何でも使ってくれ、と伝えた」

 

機付長は予想外の好意に驚いた風だったという。ただし、ムーアが農園に到着すると、乗員が機体の油圧油冷却器を取り出そうとしていた。トラブルの原因はこの部分だった。

 

「パイロットを見つけ、話を聞いた。着陸地点の下に以前送電線が走っていたと伝えるとパイロットは驚いていた。前年に滑走路を造るべく移動させていた。飛行経路のその他の場所は沼、樹木、住宅だった。話を聞いてパイロットは顔面真っ青になった。唯一の安全地帯に着陸していたことがわかったからだ」

 

ムーアは息子(陸軍でヘリコプター操縦を希望)と一緒にヘリコプター乗員としばらく話した。その場を離れようとするとスペアパーツがこちらにむかっているとわかった。

「どこから運転してくるんだい」

「いや、空を移動中なんだ」

 

ベル407がその後到着し、部品を運んできた。尾部に機体番号がついていたがビデオでははっきり見えなかったという。

 

暗灰色のヘリコプターは同じ機体3機がロサンジェルス近辺で1月に目撃されていた。「エッグビーター」あるいは「Oリング」形状の超高周波(UHF)SATCOMアンテナが尾部につき、機体前方の左右にブレイド状のアンテナがあり、これが高周波無線交信他の通信用だとみられる。また着陸用スキッドは法執行機関の機体と通じる形状だったという。

 

SCOTT LOWE

今年1月にロサンジェルス近郊で目撃されたベル407の三機のひとつ。

 

ベル機は部品を下ろすと早々に立ち去った。翌朝にMi-17も修理を完了し離陸していった。

 

各機の運用者の正体がわかる話は一切なかったとムーアは述べている。「全員かつて軍にいたようで、何らかの秘密任務を秘密機関でおこなっているようだった。すべて秘密だった」とし、「州外から飛んできた」と聞いたという。

 

Air Facts 記事の誤植か、Mi-17乗員が意図的に誤った情報を与えたのかが不明だが、ムーアは「乗員からMi-24でソ連で一般的に使われた機体の輸出型」と説明を聞いたとある。ただし、明らかに今回の機体はMi-24ハインドではない。同機は外見も異なるガンシップだ。

 

ロサンジェルス近郊で今年初めに目撃された暗灰色塗装のベル407について運用者を推理していた。米陸軍の極秘部隊航空技術室(ATO)がヴァージニア州のフォートユースティスのフェルカー陸軍飛行場に駐留しており、これが運用者である可能性が高い。

 

ATOはかつて飛行コンセプト部門(FCD)と以前呼ばれており、中央情報局(CIA)とつながりが強く、Mi-17含む外国製機種を運用していることが知られている。

 

フェルカーの衛星写真を見るとベル407数機がMi-17とATO/FCD格納庫近くに駐機しているのがわかる。またBing Mapsの高解像度写真でMi-17とわかる機体が見られるが、ムーア農園に着陸した機体と同一かは不明だ。

 

PHOTO © 2021 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

フェルカー陸軍飛行場の衛星写真。2020年12月2日撮影。ベル407が三機ランプ右に見え、Mi-17と思しき機体も5機わかる。

 

BING MAPS

フェルカー陸軍飛行場に駐機するMi-17の高解像度写真

 

 

ここ数年オンライン上で別のヒップ、Mi-171E型で機体番号15-5207がつく機の写真がでまわっていた。同機は米軍の運用という説と米政府のほかの機関としてたとえばCIAが運用しているとの観測があった。CIAがMi-17を運用し、特にアフガニスタンでここ20年利用していることがで知られている。ヒップと同局のつながりはカブール近郊での飛行状況でもあきらかで、今年8月にはハミド・カルザイ国際空港へ米国人や米国のため従事したアフガン人を移動させていた。

 

SPRINGERVILLE MUNICIPAL AIRPORT

別の謎のMi-171E(機体番号15-5207)が2016年にアリゾナのスプリンガーヴィル市営空港で目撃された。ダン・ムーア農園に着陸したヒップ同様に手尾部に各種アンテナをつけており、大型桐生分離器をエンジン空気取り入れ口前につけていた。同機のその他写真が最近でまわっているが、ダン・むーた農園でみられたのと同様のセンサータレットや追加装甲版が視認されている。

 

 

ATO/FDCは米軍航空部隊中で機密度が最も高く、War Zoneでも以前お伝えしている。公式にわかっている内容から同部隊は極度に専門化されており、他部隊と全く違う形で特殊作戦部隊を支援し、秘密工作に従事していることがわかる。同時に高リスク技術開発任務もあり、陸軍航空部隊の次期技術にもかかわる。UH-60ブラックホークのステルス改装型が2011年のパキスタン・アボタバードでのオサマ・ビン・ラディン襲撃に投入されたが、同部隊が開発に関与していたようだ。

 

総合すると短時間ながらヘリポートの様相を呈したムーア農園の事例から基本的な事項が見えてくる。ムーア親子が遭遇した出来事が極めて異例で、秘密を旨とするヘリコプター各機と乗員にじかに接する貴重な体験だったといえる。■


Russian-Made Mi-17 Helicopter Flown By Secretive US Unit Lands In Farmer's Field

 

A Bell 407 helicopter from the same organization swooped in after the Mi-17 was forced to make an emergency landing.

BY JOSEPH TREVITHICK SEPTEMBER 17, 2021



 

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