スキップしてメイン コンテンツに移動

西太平洋第一列島線で大型原子力潜水艦の代わりに小型ディーゼル艦を多数建造すべきか。ヴァージニア級の延長戦のフルスペック原子力潜水艦構想に一石を投じる


米海軍はフルスペックの大型艦を次期攻撃型潜水艦として想定しているようだが....

 

 

海軍はヴァージニア級の後継となる攻撃型潜水艦の企画を開始した。

 

SSN(X)の呼称で2030年代初頭の建造開始を想定し、既存艦の延長ではなく画期的な新型艦とすべきとジェイムズ・ホームズ(米海軍大学校教授)が解説している。

 

新型艦は小型になる可能性がある。無人潜航艇と共同作戦を展開する可能性もある。原子力推進にならない可能性もある。米海軍がディーゼル電気推進型艦を導入するとこれまでにない戦略戦術の可能性が開く。

 

ホームズは「超長距離精密攻撃手段、無人航空・水上・水中装備の登場で海軍力に大きな変革が進みつつある。さらに地上部隊が対艦攻撃能力を獲得したことも変化の要因だ。潜水艦戦も革命的な変貌から例外ではない」

 


 

米海軍は現在65隻の潜水艦を保有する。すべて原子力推進だ。うち14隻のオハイオ級弾道ミサイル潜水艦「ブーマーズ」は新鋭コロンビア級12隻に交代する。

 

オハイオ級では最古参4隻が巡航ミサイル潜水艦に改装されており、2030年代以降に「大ペイロード潜水艦」と交代する。

 

その他には1980年代建造のロサンジェルス級下攻撃型潜水艦35隻、1990年代のシーウルフ級攻撃型潜水艦3隻、ヴァージニア級攻撃型潜水艦13隻がある。2017年時点で米海軍はヴァージニア級の設計変更をしたうえで2040年代末まで同級の建造を続けるとしていた。

 

だが2019年版の米海軍30年建艦計画ではこれが修正されており、ヴァージニア級の改良ではなく完全新型艦SSN(X)を建造するとある。新型艦の就役開始を2034年とし、シーウルフ級、初期ヴァージニア級と交代する。その時点でロサンジェルス級は全艦退役している。

 

SSN(X)はヴァージニア級(8,000トン)より大型になると言われ、9,000トンのシーウルフに近い艦容とされる。「海軍は次世代攻撃型潜水艦を高速、ステルスに優れ、ヴァージニア級を上回る魚雷本数を搭載すると説明している」と議会予算局資料(2018年10月)にある。

 

だが、これはまずい考え方だとホームズは指摘する。「今ちゃんと動いているものを改良するほうがよい。ヴァージニア級、シーウルフ級はともに攻撃型潜水艦として性能は実証ずみだ。そのためSSN(X)は現行艦の改良型になる。だが新型艦は米国の海洋戦略に適合すべきであり、特に作戦環境に最適化すべきだ」とし、以下述べている。

 

 SSN(X) は海軍がこれからの戦場と位置付ける「限界海域」marginal seasでの作戦を想定する。つまり、ユーラシア大陸外縁部であり、新型潜水艦はこうした海域での作戦遂行を求められる。

 

米軍事戦略として第一列島線で「チェーンの締め上げ」つまり中国の動きを抑止し、圧力を加える事態を想定しよう。米国・同盟国所属の潜水艦部隊がこの戦略の先鋒となる。中国の水上艦潜水艦の航行を阻止する手段として、魚雷、ミサイルを搭載した潜水艦が列島線を遊弋する潜水艦以上の選択肢はない。

 

そうなると潜水艦の設計では任務で必要となる機能を問い直す必要がある。不必要な性能はこの際無視すべきだ。

 

列島線海域で運用する潜水艦は小型でよい。ヴァージニア級は大きすぎる。シーウルフは論外だ。あるいはディーゼル電気推進式でもよい。または原子力推進でもコストを下げる必要がある。日本あるいはフィリピンに配備する潜水艦は常時潜航する必要はない。短期間で基地に戻れる。

 

新方式の推進力を既存艦に搭載する国もある。発注元の意図があれば米国内建造所もその実現を図るのは間違いないだろう。米潜水艦部隊が全隻原子力推進でいいのかを真剣に問うべき時期に来ている。

 

小型通常型推進方式の潜水艦を導入すれば副次効果が期待できる。大型原子力推進艦より建造費が低くなることだ。

 

ヴァージニア級建造は年二隻のペースで進められ、攻撃型潜水艦の減少を食い止めようとしている。2016年12月に海軍は攻撃型潜水艦66隻が必要と試算していた。だが攻撃型潜水艦部隊はこのままでは2028年に42隻に減少する。

 

「減少分を補う新型艦の建造が間に合わない」と米海軍作戦副部長だったビル・メッツ中将は上院でこう発言していた。

 

米海軍が小型艦による戦術構想を完成させ、利点を活用できれば、戦力が縮小しても水中戦で優位性を維持する道が開ける。ディーゼル電気推進方式艦の建造費は原子力艦よりはるかに安価ながら短期間で多数の建造が可能となる。

 

新型小型艦部隊が水中ロボット装備とともに展開すれば中国の西太平洋での野望を食い止める有望な手段となろう。

 

ホームズは「SSN(X)をそのまま今後も活用する見込みは暗い。では水中戦の主力を現行の潜水艦のままとするのか、新しい状況に合わせた新規の水中部隊を編成するのかが問われる。SSNsが無人装備と連携運用されれば、単独で行動する現在の運用効果と全く違う結果が期待されよう」と述べている。■

 

 

Smaller Submarines Might be the Answer the the Navy's Problems

by David Axe 

September 14, 2021  Topic: Submarines  Blog Brand: The Reboot  Tags: U.S. NavyMilitaryTechnologyNavySubmarines

 

コメント

  1. 改行がうまく行っていないようです。修正お願いします。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

主張:台湾の軍事力、防衛体制、情報収集能力にはこれだけの欠陥がある。近代化が遅れている台湾軍が共同運営能力を獲得するまで危険な状態が続く。

iStock illustration 台 湾の防衛力強化は、米国にとり急務だ。台湾軍の訓練教官として台湾に配備した人員を、現状の 30 人から 4 倍の 100 人から 200 人にする計画が伝えられている。 議会は 12 月に 2023 年国防権限法を可決し、台湾の兵器調達のために、 5 年間で 100 億ドルの融資と助成を予算化した。 さらに、下院中国特別委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出)は最近、中国の侵略を抑止するため「台湾を徹底的に武装させる」と宣言している。マクマスター前国家安全保障顧問は、台湾への武器供与の加速を推進している。ワシントンでは、台湾の自衛を支援することが急務であることが明らかである。 台湾軍の近代化は大幅に遅れている こうした約束にもかかわらず、台湾は近代的な戦闘力への転換を図るため必要な軍事改革に難色を示したままである。外部からの支援が効果的であるためには、プロ意識、敗北主義、中国のナショナリズムという 3 つの無形でどこにでもある問題に取り組まなければならない。 サミュエル・ P ・ハンチントンは著書『兵士と国家』で、軍のプロフェッショナリズムの定義として、専門性、責任、企業性という 3 つを挙げている。責任感は、 " 暴力の管理はするが、暴力行為そのものはしない " という「特異な技能」と関連する。 台湾の軍事的プロフェッショナリズムを専門知識と技能で低評価になる。例えば、国防部は武器調達の前にシステム分析と運用要件を要求しているが、そのプロセスは決定後の場当たり的なチェックマークにすぎない。その結果、参謀本部は実務の本質を理解し、技術を習得することができない。 国防部には、政策と訓練カリキュラムの更新が切実に必要だ。蔡英文総統の国防大臣数名が、時代遅れの銃剣突撃訓練の復活を提唱した。この技術は 200 年前のフランスで生まれたもので、スタンドオフ精密弾の時代には、効果はごくわずかでしかないだろう。一方、台湾が新たに入手した武器の多くは武器庫や倉庫に保管されたままで、兵士の訓練用具がほとんどない。 かろうじて徴兵期間を 4 カ月から 1 年に延長することは、適切と思われるが、同省は、兵士に直立歩行訓練を義務付けるというわけのわからない計画を立てている。直立歩行は 18 世紀にプロ