今年3月、NATOが国防支出に関する年次報告書を発表した。北大西洋条約機構では加盟29か国に最低でも国内総生産GDP2パーセント相当の国防支出を求めている。
大したことがない数字に見えるが、実現できている加盟国ではわずかで、NATO内部で論議を呼んでいる。
2020年のNATO全体の支出規模は1.028兆ドルで、うち米国が7,170億ドルと最大だった。2019年は1.001兆ドルでやはり米国が7,020億ドルと最大規模だった。
2019年から2020年にかけNATO加盟国はコロナウィルス流行にもかかわらず国防支出を実質3.9パーセント増加させている。
NATO事務局は加盟各国が提出する国防支出の現況と見通しの報告に加え、経済協力開発機構(OECD)、ヨーロッパ委員会の経済財政局による経済国勢情報からの報告を取りまとめている。
各国の国防支出は人件費、作戦維持費、組織維持費、主要装備費の四分類で成り立つ。
まず、次の5か国がGDP比で国防支出水準が多い上位国だ。
米国 (3.73%)
ギリシア (2.68%)
エストニア (2.33%)
英国 (2.32%)
ボーランド (2.31%)
それに対し、次の5か国が底辺に位置する。
北マケドニア (1.27%)
スペイン (1.17%)
スロヴェニア (1.10%)
ベルギー (1.07%)
ルクセンブルグ (0.57%)
なお、フランスは第9位の2.04パーセント、ドイツは第11位の1.56パーセント、イタリアは1.39パーセントで21位だった。
ただしNATOではこうした数字では各国ごとに国防支出の定義が統一されていないため解釈に注意が必要としている。例として装備費があり、NATOでは新型装備の研究開発費も含めている。同様に人件費には年金費も含めている。
ブリンケン国務長官も同席した記者会見でNATO事務局長イェンス・ストルテンベルグからNATOはテロ、サイバー攻撃、中国の台頭、ロシアの不穏な動き等に常時対応を迫られている他、核兵器の拡散、気候変動もここに含まれると発言した。
「この数年、機構内部の議論でで加盟国に若干の相違があることがわかったが、あらためて機構を強力に維持する重要性が浮き彫りになった。
「状況に合わせていく必要性を訴えてきたが、軍事力の養成のみらずすべての問題へ対応が必要だ。そのため加盟国が団結し、中国の台頭ならびに強気で強硬なロシアに対応していく。これこそNATOの存在意義だ」
ストルテンベルグ事務局長は世論調査結果を引用し、各国国民のNATO観を説明した。NATO加盟を続けるべきかとの問いに加盟国全体の62パーセントが賛成しており、79パーセントは北米欧州間のつながりの強化に賛成である。
識者や政治家がNATOの意義、必要性へ疑問を呈することが多い。機構自体が時代遅れになっており、本来ソ連崩壊とともに解散すべきだったとの意見さえある。
1949年のNATO創設の理由に米国欧州をソ連侵攻から防衛することがあった。条約機構自体は当時のままではないものの、今も健在だ。脅威がなくなったわけではない。ロシアの再興、中国の台頭、テロ活動に終息の兆候がない。こうした脅威に対応すべく、機構は今後も変化し続け、加盟国は共通の目的の下に動く必要がある。29か国にとってこれは容易な命題ではない。■
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How much does each NATO nation spend on defense?
HOW MUCH DOES EACH NATO NATION SPEND ON DEFENSE?
Stavros Atlamazoglou | April 16, 2021
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