French President Emmanuel Macron at the Elysee Palace in Paris, Sept. 20, 2021. AP / GONZALO FUENTES
フランスの強引な営業手法にいら立地を隠せない欧州諸国は多い。
フランスがAUKUSに怒りを隠せない。だがEU加盟国から同情の念はほとんど表明されていない。その理由としてフランスが武器輸出で荒っぽい手法を展開してきたのを他国が不快に感じていることがある。フランスは武器輸出は国家主権上で不可欠な要素と考えており、フェアプレイも重要だ。
サウジのジャーナリスト、ハマル・カショギがイスタンブールのサウジ領事館で2018年10月に殺害されると、エマニュエル。マクロン大統領の手元に極秘情報が届き、サウジアラビアがイエメンでフランス製武器をどう活用しているかの説明があった。半年後にドイツなどヨーロッパ諸国がサウジ向け武器販売を停止したが、マクロンはフランスに同じ措置を求めるのは「人気取り政治」と一蹴した。
「武器販売とカショギ殺害に何の関係があるのか。イエメンの事態とのつながりは理解できるとしてもカショギ氏殺害とは何ら関係がない」「『武器輸出停止』を叫ぶのは典型的な扇動政治で、カショギ事件は無関係だ」(マクロン)
イエメン内戦では130千名が死亡しており、16百万名以上が十分な食料を得られない状況だ。イエメンでサウジ主導の連合軍とフーシ戦闘員の戦いで国民が苦しむ中でフランスのサウジアラビア向け武器輸出は続いている。2018年のフランス武器輸出は50%増加した。
昨年にフランスの武器輸出は大幅減となった中でサウジアラビア向けが国内防衛産業の維持に大きく貢献した。サウジは704百万ユーロ相当のフランス製武器を購入し、最上位国となった。また、不振とは言うもののフランスの武器輸出は2016年比で44%増となり、武器輸出上位5か国の中で目立つ存在だった。
防衛産業を擁する国は輸出で維持しているのが大部分だ。その中でフランスは防衛産業幹部のみならず大統領含む政治家が積極的に輸出案件制約に駆け回っている。フランス防衛産業では国営、民間資本の関係なく、フランス政治家がセールスマンとなり他国の競合相手を蹴落とそうとなりふりかまわぬ動きを示している。米国等でも公職につくものが自国の武器輸出を売り込むことはあるが、フランスほどの熱の入れようは見られない。
フランスは自国をグローバル大国とみなし、だからこそ同盟他国を差し置いてまで強硬な売り込み交渉をしても許されると考えているのはあきらかだ。フローレンス・パルリ国防相は「武器輸出は国家主権によるビジネスモデルだ」とまで2018年に発言していたほどだ。
スイスの戦闘機選定の事例を見てみよう。2012年に同国はサーブ・グリペンの老朽化から次期戦闘機調達に動いた。スウェーデン製の同機は機体価格に見合った性能があり、ダッソー・ラファール揶揄路ファイター・タイフーンを破った経緯がある。だが土壇場で機密文書が表に出てグリペンの性能に疑義を思わせる内容のためメディアが大騒ぎとなった。不思議なのは文書は英語で書かれていたことでスイスの公用語ではない。今年スイスは新たにF-35の導入に傾いた。
当時のフランソワ・オランド大統領はその他政治家より堂々とフランス武器産業を支援していた。2013年のパリ航空ショーでオランドはダッソーアビアシオンのCEOセルジ・ダッソーが演台に上るのを助け、「国家がダッソーをこうやって助けるんだ」と漏らしていた。
このため自国政治家が強引な手段を用いない国は競合で不利な立場になった。フランスは周囲のEU加盟国から恨まれた。防衛装備品に関する限り、フランスの好意度はEUで低く、それには別の理由もあった。EU条約の抜け道を利用してフランス企業の成約を実現していたのだ。これは346条のことでEU加盟国政府は自国内企業からの調達を優先できるとあり、ただし、純然たる安全保障上の利害の絡む場合との限定がついている。各国は自国にとって都合の良い解釈をしている。
フランスもかなり自由な解釈をしている。欧州議会の調査部門は昨年10月に報告書を出し、「欧州委員会及びCJEU17で第346条TFEUで具体的な理由が必要であり、事例ごとに検討するとあるにもかかわらず、実際には加盟国多数が同条項をEU法規から武器類は自動的に適用外としてよいと解釈している」としていた。言い換えると加盟国は同条を利用して他の欧州企業の負担で自国防衛産業製品を採用していることになる。2019年に欧州議会から出た報告書では「加盟国は例外規定を厳密に適用すべきであり、とくに346条の濫用は避けるべきである」とあった。だが濫用は続いており、取り扱いを厳密にして対応する国は商戦に負けているのが現状だ。
こうしてみるとフランスがAUKUSに火が出る勢いで反発したのにもかかわらず、各国からの同情が皆無に近い理由がわかる。友人が傷つくのを見るのは誰でも忍びないが、その友人が自国利益を優先し、他者を足蹴にしても構わないのであれば、同情は生まれない。英米豪へ抗議でフランスが他国に支援してもらいたいのなら、自らの友人の取り扱いの仕方を再考するべきだ。防衛装備品輸出がその際に中心となる。■
きれいごとばかり表面に出てくる裏でドロドロした利害がうずめく、欧州とはなんと理解しにくい相手なんでしょうか。ヨーロッパに深入りするなとベンジャミン・フランクリンが遺訓を残したのもうなづけますね。
Why France Is Getting No Sympathy for Its Lost Sub Deal
Its European neighbors have long bristled at Paris’ self-dealing and aggressive sales tactics.
SENIOR FELLOW, AEI
SEPTEMBER 21, 2021
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