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アフガニスタンと南朝鮮は同じではない。北朝鮮は注目を集めようとミサイル、核実験を行うだろうが、メディア等は過剰反応すべきではない。地政学的視点が今だから必要だ。

  

 

 

Afghanistan North Korea

Image Credit: KCNA/DPRK State Media.

 

イデン政権はアフガニスタン撤収を正当化しているが、各地の米同盟国に懸念を生じさせた。南朝鮮も例外でない。ただし、アフガニスタンのように現地国民が支援しない戦闘に米国は今後一切関わらないと主張すれば米国は完全に孤立してしまう。

 

アフガニスタンが朝鮮半島に与える影響は少ないと言ってい良いが、カブールの悲惨なイメージからヒステリーに近い反応が出ているのは確かだ。だが朝鮮民主主義人民共和国がタリバン勝利から得る恩恵は無に等しいようだ。

 

ピョンヤンは米国の屈辱を宣伝戦に利用しようとした。その一環で北朝鮮は避難民を発生させたのは米国で、しかも劣悪な扱いをしていると非難した。世界が目のあたりにした混乱状況について北朝鮮は「社会混乱と流血の対立の産物」と評し、「『人権』『民主主義』の隠れ蓑で侵攻介入した行為」の結果とした。今回の避難民は米国が戦闘を集結させたことで発生したのであり、あらたに戦闘を展開したわけではない。ピョンヤンも米国撤収を批判できなかった。

 

さらに北朝鮮はタリバン他急進イスラム勢力を一回も支援していない。無神論に立つ北朝鮮は各集団が反米の立場でも取り扱いに苦慮するはずだ。北朝鮮はハマス、ヒズボラと接触があるが、こうした勢力はむしろイランやシリアの庇護の下にある。

 

タリバン勢力の増進で米国には困った事態になっても、北朝鮮にはモデルとなりえない。北朝鮮の公式見解は朝鮮半島全体を代表するのは同国であり、再統一を同国主体で進めるというものである。北は南内部の反政府勢力を支援しておらず、朝鮮戦争勃発前でも同様だった。タリバンを連想させる勢力が南朝鮮にあったが、金日成が最高指導者の座に上る過程でこれを排除した。

 

近い将来をにらむと米国がROKから兵力を撤退する可能性はない。米軍のプレゼンスはピョンヤンにとって常に標的であり、特に金正恩の妹金与日の発言が激しい。カブール陥落の前から同女史は「半島の平和的解決には米国が侵略部隊、装備品を南朝鮮から撤収させることが必須条件だ」と発言していた。

 

たしかに米軍撤収議論は長くあり、国力の点で南が大きく北をリードする状況となっており、米国の財務状況の悪化が背景にある。とはいえアフガニスタン情勢で急にこの話題が浮上したわけではない。ROKとアフガニスタンの違いは大きい。断続的に事件があるものの、半島情勢は平穏である。米韓両国は相互防衛条約でつながっており、南朝鮮政府を当初発足させたのは米国だが、ワシントンの政策道具の座はとっくの昔に卒業している。両国政府、国民のきずなは堅固であり、朝鮮半島の持つ戦略価値は中央アジアよりはるかに高い。

 

さらにアフガンの混乱はピョンヤンの外交地位を強めるものではない。同国との交渉は漂流し、バイデン政権はアフガニスタンの後処理に気を取られる中、その他同盟国の懸念の火消しに追われ、当面北朝鮮との交渉を行う余裕はない。「今は北朝鮮より高い優先度の課題がある」とCNAのケン・ゴースも述べている。

 

2022年は米国で選挙の年であり、事態が急進展する余地は少ない。共和党が再び多数派となれば、政権の動きは鈍る。皮肉にもアフガニスタン後遺症は時間がたてば消えそうで、より深刻な問題の前に中央アジアは影を細めるだろう。

 

これまでも北朝鮮はミサイルや核実験でワシントンへ圧力をかけようとしていた。だが金正恩はドナルド・トランプとの三年前の会見以降は自制し、その後に対米会談が決裂しても同じ姿勢だった。

 

北朝鮮はCOVID-19のためほぼ鎖国状態にあるが、中国の食料エナジー支援でかろうじて経済を維持している。その中国も対米関係が悪化しているため、半島内の緊張を高めるのは得策ではないと考え、金正恩に分別ある行動を求めているようだ。

 

アフガン情勢を受けバイデン政権は短距離ミサイル発射など小規模な出来事に目をつむることになりかねない。だが米国到達も可能な兵器の開発テストとなればメディアは異常な関心を示し、米国の信用度が落ちたと騒ぎ立てかねない。このためバイデン政権は「怒りと火炎」の姿勢に転じ、予防戦争に進みかねない。そうなれば誰にとっても得にならない。

 

それでも南朝鮮の一部は気が休まらない。与党内には防衛体制強化を求める声がある。その一人Song Young-gil 議員は「アフガニスタンの危機を利用して自主防衛体制の実力、気概を強化すべきだ。そのため戦時統制権を回復すべきだ」とし、南朝鮮軍の指揮権に触れた。「韓米同盟は重要だが、自国は自分で守るという姿勢も重要だ」と述べた。

 

この姿勢は米韓両国にとって良い進展だ。こうした議論ができる良い進展だ。こうした議論ができること自体南朝鮮はアフガニスタンと違うことを示している。米国は二十年にわたり人的犠牲とともに数兆ドル相当をつぎこんだが、アフガン政府、軍ともに士気が低く米軍が正面に立たないとどこかへ行ってしまうのだった。ROKはまったくちがう。

 

アフガニスタン崩壊のショックの中、今回の事件を地政学のツナミのようにすべて飲み込むと取り扱う評論がある。だが、アフガニスタンはアフガニスタンの問題であり、それ以上二は広がらないことは明らかになってきた。確かに人道面で悲劇は続くが、ワシントンが世界各国で展開する軍事コミットメントに変化は皆無といってよい。南朝鮮もその一部だ。■

 

 

The Afghanistan Collapse: How Does North Korea See It?

ByDoug BandowPublished7 days ago

 

Doug Bandow, now a new 1945 Contributing Editor, is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is the author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World and co-author of The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea.


コメント

  1. ぼたんのちから2021年9月3日 1:06

    記事の筆者は、20年も続いたアフガン戦争が無意味になり、なおかつバイデン政権の不手際で撤退も不首尾であった衝撃から目を背けたいように見える。
    記事は朝鮮半島の両国についてであるが、アフガン撤退の影響は小さいと見ているが、本当にそうであろうか。
    米韓の間に隙間風が吹き、駐韓米軍が縮小の過程にある韓国では、少なくても右派が米国に見放され、有事の際に切り捨てられると騒いでいる。記事の左派与党議員の発言は、軍備を強化し、米軍を追い出そうとする伏線となる。現左派政権は、米軍を引揚させ、米韓同盟を反故にし、親北宥和政策を続けたいと考えている。軍備の強化と言っても、そもそも韓国が、北朝鮮の奇襲侵攻に対し、独力で防衛できるか極めて疑わしいのだが。
    また、北朝鮮は、武漢肺炎流行と食糧事情悪化により疲弊しているため、今のところ対外的に大人しくしているだけであろう。それよりも韓国内に浸透し、親北、及びスパイ勢力を着実に拡充し、韓国世論を左右するまでになっていると思われる。記事はあまりに表面しか見ていない。
    さらに記事で北朝鮮は急進イスラム勢力を一回も支援していないと言うが、ハマス、ヒズボラはイラン革命防衛隊の尖兵であり、そのイランに核兵器開発や運搬手段のミサイル技術を北朝鮮が援助していることを筆者は知らないのであろうか。
    以上のように見てみると、この記事の主張は、甘い評価と誤認に満ちており、この点で対テロ戦争開始の判断と今回の悲惨な撤退に通じるものがある。筆者は元政府高官で、シンクタンクのシニアフェローでありながらこのような記事を書くとは、驚きであり、米国の病は深そうだ。

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